誕生日のおにぎり。













「準備はこれでいいかな……」

は鷹村の部屋のテーブルに並べられた料理を見つめつぶやく。

(そろそろ帰ってくるはずだけど……)

時計を見ると、そろそろ鷹村がジムから帰宅する時間だった。


(喜んでくれるといいなぁ……)


はそう思いながらほほえんだ。

そう、今日は鷹村の誕生日である。

7月7日。

七夕が誕生日なのがミスマッチで、毎年笑いが込み上げてくるが、
もう何回目の一緒に過ごす誕生日だろう……。と考えると、
少し感慨深いものがある。


「オレ〜のパンチは〜♪」

「帰ってきた……」


すると、大声で歌いながら階段を上ってくる
鷹村の声と足音がして、
は苦笑しながら玄関へと向かった。


「おう!帰ったぞー!」

「鷹村さん!お誕生日おめでとうございます!!」


扉を開けてすぐに笑顔のに祝いの言葉を述べられ、
鷹村は少し後退りしたあと…………


「あー……そういやそうだな……」


と、照れ隠しなのか本心なのか、
どうでもいい風に鷹村は視線を斜め上に向け答えた。

「毎年それですね!」

張り合いがないなぁ!と、は言いながらも、
毎年同じなことが嬉しい気もする。


「今日はごちそうですよー!」


がそう言いながら部屋の中へと入ると、


「お!」


嬉しそうに鷹村は部屋の中へと入る。
ジム帰りでお腹は減っている。


「って……なんでぇ……にぎりめしメインじゃねぇか……」


テーブルの上の料理……おにぎりと副菜二つを見て、
鷹村は機嫌を損ねる。


「ふふふ……これはただのおにぎりとおかずじゃありません……」


そんな鷹村に、は予想通り……と愉快そうな笑みを浮かべる。


「これは一歩くんのお母さんが作ってくれたおにぎりとおかずなんです!!!」


「っ!!」


その言葉に鷹村は表情を変える。

「母ちゃんの飯か!」

鷹村はすぐにおにぎりを掴もうとする。

「あー!ダメですよ!手洗ってきてください!!」

「うるせぇ!オレ様はバイ菌などに負けん!」

鷹村はおにぎりの前に座ると、大きな手でつかんで口に頬張った。

「母ちゃんの飯はうめぇな!」

すると大きな声でそう叫んだ。

「……よかったです」

は嬉しそうにほほえみ、反対側の席に座った。

「私もいただきますー」

そして、別のお皿に3つ置かれたおにぎりを口に頬張ろうとする。
が、鷹村はあることに気づいた。

「お前のにぎりめし……形ちげぇな……」
「…………」

どうして、こういう鋭さはあるのか……と、は思う。

「形が違うだけですよ」

ほほえみながらは返して口に頬張る。

「…………」

鷹村は一瞬黙ったあと……。


「あ!」


素早くのおにぎりを一つ取ると口に頬張った。
そして……


「これ……母ちゃんのにぎりめしじゃねぇだろ……」


そう言った。

「あ〜……」

はバレたか……と、横を向く。

「……私のおにぎりは自分で作りました……。
 一歩くんのお母さんに二人分頼むのは悪いので……」

そしてそう返す。

「…………」

鷹村は真顔で黙っていた。
しかし、

「え!」

ひょいっと素早く自分のおにぎりが一個だけ残ったお皿と、
のおにぎりがのったお皿を入れ替えた。

「お前も母ちゃんのうまいにぎりめし食え……」

小さな声でそう言うと、
鷹村はの作ったおにぎりを頬張った。

「え……でも……」

は鷹村の真意がわからず、戸惑って鷹村を見つめる。

「…………」

しかし鷹村は何も言わず、副菜に手をつけていた。
そんな鷹村にも、もそもそとおにぎりや副菜を食べる。


「来年は……お前の飯でいいからな……」


すると、鷹村がぽつりとそう言った。

「…………」

が顔を上げると、鷹村は黙々と食事を食べていた。


いつもの素直に言わない鷹村の言葉を脳内で変換する……。


(もしかして……誕生日は私の料理が食べたいってこと……?)


そう変換したは、鷹村の心の内はわからないが、
すごく嬉しくなって、静かにほほえみながら
一歩の母のおにぎりを頬張った。


「一歩くんのお母さんのおにぎりおいしいですね!」

そして、そう鷹村に話かける。

「母ちゃんの飯はうめぇよな!」

すると鷹村はいつものように笑って答えてくれた。


そんな七夕の夜……二人でにこにこしながらご飯を食べたのだった……。





終。



2026/07/07...

鷹村さんがおにぎりをにぎりめしと呼ぶかどうかはうろ覚えなので、
間違っていたらすみません……。

そして確か、おにぎり好きだったはず……という
またもやうろ覚えで間違っていたらすみません……。