唯一無二。
審神者として本丸での生活にも慣れたころ、
演練の付き添いを終え、自分の本丸に戻ってきたは、
ある疑問を胸に抱えていた。
しかし、そう簡単に聞いていいようなことじゃない、
繊細な問題だと思うので、しばらくの間、心にとどめていた。
「俺が今日の近侍だよ。チッ、戦場にいきてーのに・・・。」
そんなある日、同田貫が近侍当番で不機嫌そうにやってきた。
「あ、よろしくお願いします。」
はそう答え、いつもの仕事に取り掛かる。
「・・・・・。」
仕事をこなしていてはいつも抱えていた疑問を、
なんとなく、同田貫さんなら・・・と思い、
思い切って、声をかけてみた。
「あの、同田貫さん・・・。」
「ああ?」
寝転がっていた同田貫は目だけでを見る。
「あの・・・答えたくなかったら答えなくていいんですけど・・・
ちょっと、質問してもいいですか?」
神妙な面持ちのに、同田貫は、どっこいせ。と言いながら起き上がった。
「なんだ?質問って。」
に向き直り、あぐらをかいて、同田貫は問う。
「あの・・・演練とかで、自分と同じ姿で・・・
名前の・・・方に会うことあるじゃないですか。」
「ああ。」
同田貫はの目をまっすぐ見て、一言答える。
「なんていうか・・・自分と同じ姿形で、名前の・・・存在が、
たくさんいるって・・・本人たち的にはどんな気持ちなんでしょうか・・・
あ!答えたくなかったら、答えなくていいですからね!」
最後に慌てて付け足しながらはずっと抱えていた疑問を吐露した。
「・・・別になんとも思わねーよ。」
同田貫は、そんなことかよ。と答える。
「え・・・でも・・・なんか・・・・。」
あっけらかんとした同田貫には焦る。
自分だったら、同じ姿で名前の存在がたくさんいたら・・・・。
何だか発狂しそうになる。
「同じ姿だろうが、名前だろうが、あっちはあっちの同田貫正国で、俺は俺だ。」
なんとも同田貫らしいスッキリした答えには関心してしまう。
「あっちにはあっちの記憶、性格があんだろうし、
こっちにはこっちの記憶があるし、
同じ姿でも、名前でも、別もんだろ。」
同田貫はそういうと、もう寝ていいか。と、
再度、畳に寝っ転がる。
「・・・・・・。」
同じ姿でも、名前でも、違う記憶・・・性格。
うちの同田貫は、うちの同田貫だけの記憶を持ち、それによって、性格も違う。
うちの本丸の刀剣男士たちは、みんな・・・唯一無二の存在。
はなんだかほっとして、仕事に戻ろうとした。
「あ、けど、そのことぐだぐだ気にしてるやつもいるから、
他の奴にきかねーほうがいいぞ。」
「!」
しかし、同田貫のその言葉に、
はバッと同田貫を見た。
「え!誰が気にしてるんですか!?
なんか!相談とかのった方がいいですかね!?」
そして同田貫にバタバタと四つん這いで近寄りながら問うと、
「しらねーよ!ほっときゃいーんだよ!あんたはあんたの仕事しろ!」
不機嫌そうに少し体を起こし、同田貫は答える。
「え!でも!心のケアはしないと!」
「いーんだよ!俺たちは刀剣男士なんだから!」
「よくないですよ!!!」
「チッ、めんどくせーな・・・。」
「今、めんどくせーとか言いました!?大事なことでしょ!」
「あーあー。」
「あーじゃなくて!」
そう言い合いしながらも、同田貫が口を割ることはなく、
はその後、一振、一振と、話す時間を設けたという・・・・。
2023/08/16...