審神者になった日。15













「じゃあ、とりあえずご飯炊きましょうか。」


そう言うとは炊飯器の元へと向かい、蓋を開け、中の釜を取る。

「あ、わしが米といじゃる。」

すると陸奥守吉行がそう言ってが持っている釜を握った。

「あ・・・お米とげますか?」

大丈夫なのかな?と、思いながらが問うと、

「多分できるじゃろ、一応知識は持っちょるきに。」

そう言ってにっこりと笑う陸奥守吉行。

「・・・・・・・・」

少し不安だがは米とぎを陸奥守吉行に任せることにした。

「・・・じゃあ、お願いします。あ、炊飯器新品みたいなんで、
一度洗剤でお釜洗ってくださいね。」

がそう言うと、まかせとき。と、陸奥守吉行は言い、流しへと向かった。

(じゃあ、次は何しようかな・・・・お米炊けるまで時間あるけど・・・・材料切っておくか。)

そう思い、必要なのは・・・・と、思いながら、冷蔵庫の隣にある玉ねぎと、
冷蔵庫の中にある物を物色する

ー、米は何合炊くんじゃ?」

背後から陸奥守吉行に声をかけられ、冷蔵庫の取っ手を握ったままは振り向く。

「んー・・・・何合でしょうね・・・一人半合でいいですかねー。」

「そうじゃなぁ、ちっこいのもおるし、半合でいいかのう。」

「じゃあ、一人半合だから・・・二合半・・・・一応三合炊いておきましょうか。」

「わかったぜよ。」

陸奥守吉行とそんな会話をしていると、
の目に、台所の入り口で立ち尽くしている山姥切国広が目に止まった。

(あはは・・・・)

自分からは話しかけられないタイプなんだね・・・・と、思いながら、
は山姥切国広に声をかける。

「国広さん、こっちで材料切るの手伝ってもらえますか?」

がそう言うと・・・・

「・・・・ああ・・・・・」

と、どこかほっとしたような表情で、山姥切国広はの近くへとやってきた。

そうこうしている間に、手際よく陸奥守吉行は米をとぎ、炊飯器へセットする。

「早炊きコースでいいんじゃろ?」

へ振り向きながら陸奥守吉行がそう聞くと、

「はい、大丈夫です。」

は答える。

(具は玉ねぎとー・・・・鶏肉・・・・かな?それをケチャップで炒めて・・・・・)

と、考えながら冷蔵庫の中に鶏肉を探すと、鶏肉はあった。
が、

(あれ・・・?さっき鶏肉あったっけ・・・?)

なかったような気がするのだが・・・・と、思いながら、
は冷蔵庫の二段目にある、スーパーで売っているような、
白いトレイにラップで包まれた鶏肉を手に取る。

「・・・・・・・・・」

しかし、家であまり料理をしていなかったは、
その鶏肉のかたまりを見て、どうやって切ればいいんだろう・・・と、思い、
しばし見つめる。

(まー・・・適当に切るか。)

そう思うと、鶏肉を取り出し、冷蔵庫を閉めた。

「具は玉ねぎと鶏肉だけでいいですかね?」

中央の作業台に鶏肉と玉ねぎを置きながら、
は何の気なしに山姥切国広に話しかける。

「・・・・いいんじゃないのか・・・・・」

山姥切国広から帰ってきたのはそんな一言だった。

「・・・・・・・・」

微妙な微笑みを浮かべながらは黙る。

「米とぎ終わったきに、わしも手伝うぜよ。」

すると手の空いた陸奥守吉行が二人の元へとやってきた。

「あ、ありがとうございます・・・・と言っても、ご飯炊けるまでに具材切るだけなんですけど・・・・」

あんまりやることないです。と、言いながらは苦く笑った。

「じゃあ、ゆっくり具材切りながら米炊けるの待つぜよ。」

そう言って陸奥守吉行はニカッと笑う。

「・・・・・・・」

明るく社交的な陸奥守吉行に、接しやすくていいなぁ・・・とが思っていると、

「・・・・まな板・・・と、包丁・・・・持ってきた・・・・・」

「!」

横に立っていたはずの山姥切国広が、
いつの間にかまな板と包丁を三つ持ってそばに立っていてはびっくりする。

「あ・・・ありがとうございます・・・・」

そういえば、国広さんは気が利いて、さりげなく気を使ってくれる人だったっけ・・・・と、
は思い出す。

(国広さんは国広さんで、いいところがあるんだよなぁ・・・・)

そう思いながらは山姥切国広から包丁とまな板を受け取った。
また板は木製だった。プラスチック製の物ばかり見てきたので、
何だか珍しい・・・・それに新品でとても綺麗だ。

「あ、これ洗いました?」

しかし、まな板と包丁が濡れてないことに気づくと、
は山姥切国広にそう問う。

「え、あ・・・・・すまない・・・洗ってない・・・・」

少し動揺しながら、申し訳なさそうに顔を少し伏せて、山姥切国広はそう言った。

「あ、大丈夫ですよ、じゃあ洗いましょうか。」

顔を伏せて下を向いている山姥切国広には明るくそう声をかけた。


流しで洗剤をスポンジにつけ、まな板と包丁を洗うと山姥切国広。
流しは大きめの流しが二つあった。
二つなので二人で洗い、陸奥守吉行には後ろで待っていてもらっている。

ここにある物は大抵の物が新品だった。
炊飯器も、ポットも、包丁もまな板も。
一度洗わなくてはいけないことをは少し面倒だな・・・と、思っていた。

「・・・・・・・」

流しでまな板と包丁を洗っていると、包丁がかなりいい物だとは気づいた。
しっかりした木製の持ち手と、綺麗な刃が輝いている。

(切れ味よさそう・・・手切らないようにしないと・・・・)

少し恐怖を感じ、刃をスポンジでそっと洗う。

まな板と包丁を洗っていると、ふと隣の山姥切国広に目が行った。
袖は腕まくりしているようだが、頭からかぶった白い布が、少し邪魔そうだった・・・。

「・・・・国広さん、その・・・白い布・・・脱がなくて平気ですか?」

邪魔じゃありませんか?とが聞くと、

「・・・・いや・・・・大丈夫だ・・・・・」

と、また少し下を向きながら、小声で山姥切国広はそう言った。

「・・・・・そうですか・・・・」

見るからに邪魔そうなのだが・・・・何か脱げない理由でもあるのだろうか・・・・と、
思いながらは洗い終わり、蛇口を閉めた。



「じゃあ、切りましょうか。国広さんとむっちゃんさんは玉ねぎお願いします。」

そう言って、二人に皮がついたままの玉ねぎを一つずつ渡す。
は少し不安だが、鶏肉を切ることにした。

山姥切国広と陸奥守吉行は、流しに向かい、玉ねぎの皮を剥く。
は鶏肉にかかっているラップを取り、鶏肉をまな板にのせた。

(・・・・オムライスだから小さく切るし・・・・そんなに量いらないよね・・・・)

そう思い、鶏肉を半分に切る。

(う・・・・・・)

皮がついていて、とても切りにくかった。
鶏肉の切り方などわからない。
適当に細かく切ろうとは思っていた。

半分に切った鶏肉の片方を白いトレイにのせて、
ラップをかけると、玉ねぎの皮を剥き終わった二人が戻ってきた。

「みじん切りにすればいいんじゃろ?」

「はい、お願いします。」

陸奥守吉行の問いには答える。

そして鶏肉を冷蔵庫にしまってが振り返ると、

「・・・・・・・」

サクサクと上手に玉ねぎをみじん切りにしている二人の姿が目に入った。

「わー、お二人共上手ですねー。」

多分、私より上手だな・・・と、思いながらはそう言う。

「ハッハッハッ!刃物の扱いならまかせとき!」

陸奥守吉行はそう言いながら包丁をくるんと回す。
ちょ、危ない・・・と、思いながら山姥切国広を見ると、

「・・・・・・・」

山姥切国広は静かに、しかし丁寧に綺麗にサクサクと玉ねぎを切っていた。
しかし・・・・・

「・・・・っ・・・・・」

ボロっと、山姥切国広の目から涙がこぼれた。

「! だ、大丈夫ですか!?国広さん!」

玉ねぎは目にしみますからね・・・・とが声をかけると、

「・・・・っ・・・大丈夫だ・・・・」

と、山姥切国広は涙を拭いながらそう答えた。

「っ〜〜〜!これはあかんきに!目にかなりくるぜよ!」

と話したあと、玉ねぎを刻んでいた陸奥守吉行も、涙目になっている。

「か、変わりましょうか?」

あせりながらはそう言うが、

「いや・・・・これはわしらの仕事じゃき、大丈夫じゃ・・・は鶏肉を切っとれ・・・・」


「・・・・・・・・はい・・・・」


二人はボロボロと涙をこぼしながら身悶えて玉ねぎを刻んでいる・・・・。
大の男二人が泣いている姿は異様だが、
滅多に見られないだろうな・・・と、思ったので、
は鶏肉を切りながら、チラチラと少し二人を見ていた。

(かっこいい男の人は、泣いてもかっこいいんだな・・・・)

そんなことを思いはにやつく頬を必死に抑えていた。





「お疲れ様でした・・・・」

そんなこんなで具材の用意は終わり、ボールに入った玉ねぎのみじんぎりと、
お皿にのった細かく切った鶏肉を並べながら、
はまだ痛そうに目をおさえたり涙を拭っている二人に声をかけた。

「玉ねぎはいかんのお〜・・・」

わし目洗うきに・・・・と、言いながら、陸奥守吉行は流しへ向かう。

「っ・・・・・・」

目を押さえて、少し震えながら耐えている山姥切国広・・・・。

「あの・・・・国広さんも目洗ったほうがいいんじゃないですか?」

そんな国広には声をかける。

「・・・・あ、ああ・・・・・」

山姥切国広は目から手を離し、ちらっと涙目でを見ると、
そう言って流しへと向かった。

「・・・・・・・・・」

涙目の山姥切国広には少しドキッとした。

(国広さん、金髪に綺麗な目の色してるからな〜・・・)

美少年なんだよね・・・・と、思いながらはまたにやけそうになる頬を手で押さえた。


「っかー!まだ痛いぜよ!」

袖で濡れた目元を拭いながら、陸奥守吉行は戻ってきた。

「あはは、目にしみる玉ねぎだったみたいですね。」

しみにくいのもあるんですけどね・・・・と、言いながらは苦笑して答えた。

「あ、タオル持ってきましょうか?」

がたずねると、

「ああ、いいきにいいきに。平気っちゃ。」

陸奥守吉行らしく目元は袖で拭き、手は流しの下にかけてあるタオルで拭いた。

「・・・・・・・・」

山姥切国広も、黙って袖で拭いている。

男らしいというかなんというか・・・とは思いながら苦笑する。



「で?次は何するんじゃ?」

少し落ち着いたようだが、陸奥守吉行はそれでもまだ瞬きをしながらにたずねる。

「そうですね・・・・ご飯はあとどのくらいかな・・・・」

はそう言って炊飯器へと向かう。

「あー、あと15分ですね・・・・」

何してよう・・・と、思いながらは二人に言った。


「・・・・・・他に洗うものはないのか・・・・・」

すると、こちらもまだ顔を歪めて目を細めている山姥切国広がにそう問う。

「あ、そうですね、まだ洗うものあるはずなんで、洗いましょうか。」

さすが気の利く国広さん。と思いながらはこのあとのことを考えた。

フライパン・・・・木ベラ・・・・フライ返し・・・・ボール・・・・お皿・・・・スプーン・・・・

このあと必要な物を考えながらは二人に言う。

「お皿とか洗ってあるんですかね?
食器以外で必要なのはフライパンと木べらとフライ返しとボールなんですけど。」

が言うと、山姥切国広は歩き出し、食器棚へと向かう。

「・・・・皿は・・・綺麗だが・・・・・」

一応洗うのか?と、山姥切国広は皿を持ちながらに聞いた。
どれどれ・・・とは山姥切国広に近づき、持っているお皿を見る。
お皿は綺麗で、そのまま使えそうだった。

「お皿は大丈夫そうですね、ありがとうございます。」

がそう言いながらほほえむと、山姥切国広は視線を左右へ動かし、
少し動揺しながらうつむいてしまった。

「?」

そんな山姥切国広には疑問符を浮かべる。

「・・・・・スプーンも見る・・・・・」

そう言うと、皿を戻し食器棚の引き出しを開ける山姥切国広。

「フライパンはこれでいいがかー?」

するとコンロの下にある、鍋など調理器具が置かれた場所に
しゃがみこんでいる陸奥守吉行が、フライパンを頭上に上げながらに聞いてきた。

「あ、フライパンは少し洗いましょうか。洗ってあっても・・・・」

は陸奥守吉行の元へ行く。

「・・・・・・・・・・」

が去ったあと、山姥切国広はスプーンを触り、チェックしながら、ふっと息を吐く。

残りの木べらとフライ返しとボール2つも見つけ、その三つも洗うことにしたは、
それらを洗い、フライパンはコンロへ、
木べらとフライ返しとボールは作業台へ置き、ご飯が炊けるのを待った。

「ご飯炊けたあとしばらく蒸したほうがいいんですけど、今日はいいですよね?」

「そうじゃなー、いいんじゃないがか?」

「・・・・・・・・・」

三人はあと8分という表示の炊飯器の前に立ちながら、
会話をしたり、黙って表示を見つめたりしていた。
8分は短いようで長い。

「「「・・・・・・・・」」」

沈黙が続くが、みな表示をじっと見て、今か今かと思っているため、
沈黙が苦にはならなかった。

そしてたまに話したり、黙ったりしながら8分を過ごすと、
炊飯器はピーッピーッという音を立て、ご飯が炊き上がった。

「やっと炊けましたねー。」

と、言いながらはしゃもじを手に持つ。
パカッと炊飯器の蓋を開けると、もわっとした熱い空気がの顔を直撃した。

「あつっ!」

がサッと顔をそらすと、

「大丈夫か?」

と、陸奥守吉行が心配して声をかける。

「あ、平気です、平気です。」

そう言いながらは釜の中のご飯をほぐす。
そして釜から少し大きめのボールの中へとご飯を移した。

「さー、じゃあ作りましょうか。」

そう言いながらボールを持ってはコンロへと向かった。


まずフライパンを熱し、油を入れる。
鶏肉を炒めてから玉ねぎを入れ、よく炒める。
そこにご飯を投入。
塩コショウをし、冷蔵庫から取り出したケチャップを入れ、
しばらく炒めて、オムライスの中のチキンライスが完成した。

それをご飯を入れていたボールに入れると、一旦、フライパンを洗う。


「あ、すみません、卵二つといておいてもらえますか?」

フライパンを洗いながらは二人にお願いをする。

「卵二つじゃなー。」

陸奥守吉行が冷蔵庫から卵を二つ取り出すが、
それを見て、

「あ、一人二つなので十個使いますので。」

はそう付け足した。

「ほんじゃ十個出しておこうかのう。」

ほれ。と言って取り出した卵を山姥切国広に渡す陸奥守吉行。
山姥切国広は少し戸惑うが、そばにあった作業台の上のふきんの上に、
転がり落ちないよう卵を置いていった。



(あ、そうだ・・・)

フライパンを洗い終え、コンロに置くとは冷蔵庫を開く。

(あ、あったあった。)

冷蔵庫から取り出したのは、バターだった。
黄色い四角の箱に入った、見慣れたバター。

(これ使いづらいんだよなー・・・)

そう思いながら箱から出し、銀色の紙をめくり、
バターナイフを探して食器棚の引き出しから取り出すと、
コンロへと戻ってきた。

「「・・・・・・・」」

そんなを陸奥守吉行と山姥切国広は少し下がったところで見ている。


フライパンに火をかけ、水滴を飛ばした後、
バターをバターナイフで適量取り、フライパンへと入れる。

(わー、いい匂い。)

バターのいい香りがふわっと立ち上った。

バターを溶かすと、陸奥守吉行がといておいてくれた卵を投入する。
じゅわっといい音を立てながら、卵をフライパン全体へと広げた。

(さー、ここからだ・・・・破れないようにできるかなー・・・・)

家で料理の手伝いをしなかったことを、悔やんだ。
こんな状況になるのなら、色々手伝っておけばよかった・・・・。
だが、よもやこんなことになるとは思わない・・・・。
しかたないよな・・・・と、思いながら、オムライスの卵が破けないことをは祈った。

卵がいい具合に固まったところで、ボールに移したチキンライスを入れる。
あまり量が多いと破れたりはみ出たりするので、
申し訳ないが少し少なめにした。

(さて・・・できるかな・・・・・)

そして、卵で包むとき。
フライ返しで上手く卵の下へと差し込みながら、
卵でチキンライスを包む・・・・。
下からチキンライスの上へ被せて、
上からもチキンライスへ被せる。
そしてうまくずらしながら、全体をひっくり返した。

(できたー!!)

一個目は卵が破れることなく、上手く綺麗に完成した。

「一個目できました!お皿ください!」

嬉しそうに背後の二人に振り返るとはそう言った。

「おお、出来よったか。」

作業台の上に置いてあった皿を陸奥守吉行が渡す。
受け取って、崩れないようにうまく皿の上にのせる・・・・。

「一個目できましたー!よかったー!」

皿の上に綺麗にのったオムライスを二人に見せながら、
は嬉しそうにほほえむ。

「おお、綺麗にできたのう!これがオムライスか、いい匂いがするのおー。」

「バターを使いましたから。」

スンスンと鼻を動かす陸奥守吉行には言う。

「『ばたー』か・・・『ばたー』を使うと、こんなにいい匂いがするんか?」

「はい、バターの匂いはいい匂いですよね。」

オムライスが上手くでき、上機嫌なと、いい香りに上機嫌な陸奥守吉行。
しかしそこではハッとする。

「一個目が冷めないうちにあと四個作りますね!」

そう言うとは再度フライパンに火をつけ、バターを落とした。


そうして、残り四個のオムライスをなるべく急いで作った
結果は二つほど卵に切れ目が入ってしまったが、
普段料理をしないにすれば上出来だろう・・・・。
は仕方ないかな・・・と思いながら、
とりあえず完成したオムライス五つを見て、ほっと息をついた。

「できましたー、最初のやつ冷めちゃってますかね?」

大丈夫ですかね?と、陸奥守吉行や山姥切国広に言うと、

「大丈夫じゃろ。冷めてたら電子レンジで温めればええんじゃ。」

あんまり気にすることないきに。と言いながら、
おつかれさん。と、陸奥守吉行はぽんぽんとの頭に手をのせた。

(・・・・・また、このお兄さんは・・・・)

そう思いながらも、少し嬉しいは、にやけないように気をつける。

「じゃあ、運びましょうか。」

そしてそう言うと、三人でオムライスを広間へと運んだ。




「今剣くん、五虎退くん、できたよー。」

そう言いながら広間へと入ると、二人は五虎退の子虎をかまいながら遊んでいた。
そんな二人をかわいいなぁ・・・と、思いつつ、
オムライスをテーブルに置いていく。

「わー!おむらいすですー!いいにおいがするのですー!」

「・・・・そうですねぇ・・・・」

今剣と五虎退は、すぐさまテーブルのオムライスの前に座ると、
匂いをかいで、ウキウキとしていた。

「今、スプーンとケチャップ持ってくるからね。待ってて。」

そう言うとは台所へ向かい、スプーンとケチャップを持ち、戻ってくる。

「はい、スプーン。」

と言いながら、スプーンを二本ずつ左右に渡し、回していく。

「じゃあ、食べようか。・・・・あ!ケチャップで何か描く?」

テーブルの短い面に座るとは左斜め前にいる今剣に聞いてみた。

「? おむらいすになにかかくのですか?」

今剣は何も知らないようで、きょとんとしている。

「そうだよー、オムライスにケチャップで絵描いたりするんだよ。」

そう言うとはケチャップの蓋を開け、自分のオムライスに器用に絵を描いていく。

「ほら!うさぎさん!」

そして、今剣に見せる。

「わあー!すごいです!すごいです!ぼくのにもかいてくださいー!」

子供が喜ぶオムライスのお絵描きは、案の定、今剣にうけた。

「何がいい?」

そうが聞くと、

ちゃんとおなじうさぎさんがいいです!」

今剣はそう答えた。

「はーい。」

うまく描けるかなー?と、言いながらは慎重に絵を描いていく・・・・

「はい!できたー!」

「わー!ありがとうございますー!」

今剣は嬉しそうに、うさぎが描かれたオムライスを受け取った。

「五虎退くんは何描く?」

「え・・・・あ・・・僕も・・・いいんですか・・・?」

に聞かれ、五虎退は戸惑いながらも少し嬉しそうにする。

「うん、いいよ。あ、じゃあ虎さんにしようか。」

上手く描けるかわかんないけど。と、言いながらは五虎退のオムライスを受け取る。

「はい・・・・お願いします・・・・」

五虎退にそう言われは虎ってどうだっけ・・・・と、思いながら、
五虎退の周りにまとわりついている子虎を見て、描く。

「はい、できた!ごめん・・・猫みたいだけど・・・・」

と言いながら確かに猫の額に線を入れたような虎の絵を描いたオムライスを、五虎退に渡す。

「わぁ・・・・ありがとうございます・・・・」

されど、五虎退は嬉しそうに、ふんわりと柔らかく微笑んだ。

(かわいいなぁ・・・・)

そう思いながら、いえいえ。とは言う。

「おー!器用じゃのう!そんじゃわしも何か描いてもらうかのお!」

するとそれを見ていた陸奥守吉行がそう言い出した。

「え!な、何描けばいいですか!?」

陸奥守吉行にも描いてくれと言われはあせる。

「んー?なんでもいいきに。」

そう言いながら、陸奥守吉行は自分の皿をの前へ寄せる。

「えーっと・・・・」

どうしよう・・・何にしよう・・・・とは考える。
自分と同じうさぎでもいいが・・・・・はそう思いながらも、
あ。とひらめいた。
だが、それでいいのか・・・怒られないかな・・・と、
思いつつもはケチャップを動かした。

「はい・・・・できました・・・・」

おそるおそるは陸奥守吉行の前へと、オムライスを寄せる。
そこに書いてあったのは・・・・

「むっちゃん・・・・・」

ポツリと陸奥守吉行はつぶやく。
そう、オムライスに書かれたのは、『むっちゃん』という大きな文字だった。

「す、すみません!なんとなく・・・・思いついて・・・・」

が言うと・・・・

「ハッハッハ!わしのオムライスじゃなからのう!こりゃあいい!
ほれ、国広も書いてもらえ!」

そう言うと陸奥守吉行は、山姥切国広のオムライスを取りの前へと持ってきた。

「・・・なっ!お、俺は・・・・!」

山姥切国広は慌てる。
そんな山姥切国広を見ては書いてもいいのかと戸惑うが、

「ほれ、冷めないうちに早く書くぜよ。」

陸奥守吉行はうまい具合に言い、進めようとする。

「い、いいんですか・・・?」

と、少し離れた所にいる山姥切国広を見てが聞くと、

「・・・・・・・・・好きにしろ・・・・」

少し言葉に詰まりながらも、どこか照れた様子で山姥切国広はそう言い、顔を背けた。

「じゃ、じゃあ・・・すみません・・・・」

そう言いながらは何を書くかな・・・と、考える。
まぁ、むっちゃんさんにむっちゃんと書いたしな・・・と思い、書いたのは・・・・


「ハッハッハ!今度は『国広』か!ええのう!」


そう、山姥切国広の名前、『国広』だった。
オムライスにでかでかと書かれた赤い『国広』の文字・・・・・

「一応・・・・『さん』はつけたんですけど・・・・・」

はおずおずとそう言う・・・・そう、一応、小さいが『さん』は端についている。

「ほれ、国広。」

そう言って山姥切国広の前に、陸奥守吉行はオムライスを置いた。

「・・・・・・・・・」

山姥切国広はそれをじっと見て黙っていた。

(お、怒ってるかな・・・・)

そう思いは少しあせり、ドキドキとする。

「よっし!そんじゃあ、食べるかのう!」

「はい!たべましょー!」

陸奥守吉行の言葉に、今剣もスプーンを持った手を上へと伸ばした。

「じゃあ、食べましょうか・・・いただきまーす。」

「「「「いただきまーす!」」」」

のいただきますの後に響く、いただきますの合唱。
しかし、陸奥守吉行と今剣の声が大きく響き、山姥切国広と五虎退の声はほぼかき消されていた・・・。

そして皆、オムライスを口にする。

ちゃんおいしいですー!」

今剣はケチャップを口の端につけながら、嬉しそうにほほえむ。

「そう?よかったー。」

そう言われ、ほっとしながらも一口ほおばる。

(あ・・・うん、ちゃんと普通のオムライスだ・・・少し冷めてるけど・・・よかった・・・・)

自分も食べ、味の確認をしてはほっとした。

「おー!うまいのう!オムライスはこんな味なんじゃな!」

嬉しそうに陸奥守吉行も、パクパクと口へほおばっている。

「ちゃんと出来ててよかったです・・・」

陸奥守吉行の言葉にはほほえんだ。


(ちゃんと作れて、ほんとよかったー・・・・)


ほっとしたらお腹が空いてきても食べるペースを早める。




こうして、刀剣男士たちと食べる初めての食事は、無事に完成したのだった・・・・・。












続。


2015/11/02....