審神者になった日。13













(誰も死なせないよう・・・頑張ろう・・・・)


はそう思いながら、今までの考えを一新させ、
真面目な態度でこんのすけの説明を受ける。

「結成の書は以上です。では次は・・・・」

と、こんのすけが言った所では疑問に思っていたことをこんのすけに尋ねる。

「あ、あの!この桜の花びらってなんなんですか?」

は部隊一の陸奥守吉行の欄を指さしながら言う。
他の刀剣男士にも、桜の花びらが一つや二つついている。

「あ、それは刀剣男士の貴重度を表しています。
げーむ風に言いますと、『れあ度』ですね。」

こんのすけはそう言う。

「・・・刀剣男士にも手に入れやすいとかにくいとかあるんですか?」

の言葉にこんのすけは頷く。

「はい、ございます。鍛刀や戦場で拾ったりしても中々手に入らない刀があります。
そして強くもあります。」

「そうなんですか・・・・あ、あと、部隊二から灰色のページなんですが・・・これは・・・・」

が問うと、

「それはまだ使用できないということです。
部隊二からは任務をこなしていくと使えるようになります。
部隊をいくつか持っていると、出陣させている間にもう一つの部隊を遠征へ行かせたり、
何かと便利ですので、がんばって使えるようにしてください。」

「・・・わかりました。がんばります。」

えんせいってなんだろう・・・とは思いつつも、そう返事をした。

「他に質問はございますか?」

と、こんのすけはに問う。

「あ、いえ、もう大丈夫かと・・・・」

えんせいのことを聞きたかったが、何個も聞くのは申し訳ないので、
は聞かないことにした。

「じゃあ、次へまいりましょうか。」

こんのすけの言葉に、はい。と答えは『結成の書』を閉じると、
左の本に重ね、次の本を取る。

(あ、『えんせい』ってこれか。)

次の本は『遠征の書』だった。
聞かないでよかった・・・と、心の中で思う。

(・・・・・あれ?)

は、『遠征の書』を手に取り、中を開こうとするだが、
何かでくっついているように、『遠征の書』は開かない。

「あの・・・開かないんですけど・・・・」

がそう言うと、

「あ!もうしわけありません、あるじさま!遠征はまだできないのでした!
任務をある程度達成されますと、『遠征の書』は開きます。
また遠征が出来るようになりましたら、説明いたしますので。」

「あ・・・はい。」

あせるこんのすけには遠征ってなんだろうなー・・・と、
ぼやぼやと思いながら、開かない『遠征の書』を見つめた。

「では、遠征はまだできませんので、次の『出陣の書』にまいりましょうか。」

「はい。」

はそう言いながら遠征の書を左へ重ね、最後の本、『出陣の書』を取る。

中を開くと、一ページ目には他と同じく、達筆な筆文字で『出陣の書』と書かれており、
次のページをめくった。

すると中には、左ページの一番上に、『合戦場・出陣する地域』と書かれており、
その下に、『維新の記憶』と書かれてあった。
更にその下には、四角で囲まれた、地名と簡単な地図が描かれた絵が、
縦横二つずつ、四つ並んでいた。

(函館、会津、宇都宮に鳥羽・・・・・)

函館だけ、なぜか四角の枠が緑色で囲まれており、
中もうっすら色がついていた。
他の三つはうっすらと黒くなっている。

「このページで出陣する場所を選びます。黒くなっている箇所はまだ行けません。
一つの地域の敵大将を倒しますと、次の場所へ行けます。
ここではげーむ風に場所や部隊を選んで出陣させますが、
実際には、ここで場所と部隊を選んで、皆に場所と部隊を伝え、出陣してもらいます。
出陣中は本の中身が変わり、簡易的に出陣した部隊の戦闘状況を見ることができます。
実際に出陣はしませんが、出陣までの流れをやってみましょう。」

「はい・・・・」

こんのすけにそう言われ、出陣か・・・・と、少し暗い気分になりながら、
はこんのすけに返事をする。

「まず、場所を選びます。緑色で囲まれているところが選択した場所です。
今は函館になっていますね。
その状態で、一番下にある、『部隊選択』をタッチして下さい。」

「はい」

こんのすけにそう言われは緑色の四角に囲まれた、
部隊選択という絵を指でタッチする。

するとパッと内容が変わり、『部隊選択』という文字が一番上に書かれたページになった。

その下には、第一部隊と書かれており、先ほど結成の書で見た、
『打』や『短』のマークにみんなの顔写真が描かれた横長の図が表示された。
そしてその下には、『戻る』と『出陣』の四角い絵・・・・。

「ここで出陣を押すと、その部隊で出陣することになります。
そしてページの内容がまた変わりますので。」

戻るを押して戻りましょう。
と、こんのすけに言われは戻るの絵を指で押した。
すると、最初の四角い図が四つある内容に戻る。

「以上で全ての説明は終わりです。
遠征と出陣はまた実際にするときが来たら、説明いたしますね。」

こんのすけはそう言うと、お疲れ様です、あるじさま。とにっこりと笑顔で言う。

「・・・・はい、ありがとうございました。」

は『出陣の書』を閉じると、ふっと息をつき、笑顔でそう言った。

(やっと終わった・・・・)

は心の中でそう思いながら、正座していた足を少し崩す。

「では、私はこれにて失礼させていただきます。」

「え?」

しかし、突然のこんのすけの言葉には短い言葉を返す。

「また、わからないことや、遠征や出陣の時が来ましたらお呼び下さい。
すぐに駆けつけますので。」

こんのすけはそう言う。

「え・・・こんのすけくん・・・いなくなっちゃうんですか?」

は少しぽかんとしながらそう言う。

「はい、用がすんだら私は姿を消します。
ですが、呼ばれましたらすぐにあるじさまの元へまいりますので、御用の際はお呼び下さい。」

こんのすけはにっこりと微笑みながら、尻尾を揺らしてにそう言う。

「・・・・別にずっといても構いませんよ?」

はそう思い言うが・・・・

「お言葉は嬉しいのですが・・・私は長い間こうして姿を維持することが難しいのです。
申し訳ありません・・・・・」

こんのすけは申し訳なさそうに、少し悲しそうに、眉を下げて微笑んでいる・・・・。

「そうなん・・・ですか・・・・」

「はい。」

こんのすけの言葉や微笑みにも少し悲しい気分になる。
でも、無理は言えない。

は崩した足をまた戻すと、

「じゃあ・・・また、何かあったら呼びますね。
案内や説明して下さってありがとうございました。」

そう言って、机を挟んで目の前にいるこんのすけに、頭を下げた。

「! 頭を上げてくださいあるじさま!私は当然のことをしただけですので!」

こんのすけは少しあせっている。

「いえ、とっても助かりましたし・・・・ここに来たとき一人だったので・・・・
こんのすけくんが現れてくれてほっとしたんですよ。
本当に・・・ありがとうございました。」

は顔を上げてそう言うと、微笑む。

「あるじさま・・・・・」

こんのすけはのそんな言葉に、少し瞳を潤ませる。
そして顔を左右に振ると、

「私はいつでもお呼び下されば現れますので!」

少し大きめの声でそう言った。

「はい・・・ありがとうございます。」

はにっこりと微笑む。

「では・・・・これにて失礼いたします・・・・」

こんのすけはそう言い、開いたままの障子から、廊下へと出る。
そして部屋の中のを振り向き、にこっと微笑むと、
そのまま左へと、てくてくと歩いて行ってしまった・・・・。

「・・・・・・・・・」

仕事部屋に一人残され、しばし開いたままの障子から見える廊下を見つめる・・・。
なんとなく、立ち上がり部屋の入口まで来ると、
障子に手をついて、こんのすけが歩いて行った廊下の左側を見る。

長い廊下に・・・・こんのすけの姿はなかった。

右を向いても誰もいない・・・・。

本当にこんのすけは姿を消してしまったんだな・・・・とは思うと、
再度、仕事部屋の中へと入った。

「・・・・・くらっ・・・・」

そこでふと、もう日がほぼ沈み、部屋が暗いことに気づく。
部屋の中央にある、電気傘の紐を引っ張り、明かりをつけた。

「・・・・・・・・」

静かな部屋に、机と本。

(少し・・・見るか・・・・)

と、思いは畳の上に積み重なっている本を見た。
日本刀についての本がたくさんだったが、歴史の本もあった。

そして机へと戻ると、机の上を整理する・・・・。
九冊の本に札の束二つ。
それらをトントンと机につけ揃えると、机の左端に重ねた。
そして、ふう・・・と息をつく。

(審神者・・・か・・・・)

そしてぼうっと、暗い廊下と暗い窓の外を見る・・・・。

(ん?)

すると、パタパタやドカドカとした複数の足音が聞こえてきた。
そして少しすると・・・・・


ちゃーん!もうおしごとおわったのですかー?」


ひょいっと、開けたままの障子の間から、今剣が顔を見せた。


「終わったがか?もう日も暮れたし飯にするぜよ!」


続けて陸奥守吉行も顔を出す。
そのあとに五虎退と山姥切国広も顔を出した。

「・・・・・・・・」

薄暗い廊下に立つ四人・・・・・。

こんのすけがいなくなったあとの淋しさの中、四人の姿を見て・・・・
は何だか不思議な気分になった。

そこに人がいるという・・・・何だか実感のない・・・・不思議な気分・・・・。

ちゃん?大丈夫なのですか?」

しかし、何も言わず、ぼけっとしているに、
今剣がとてて・・・と、部屋の中へ入ってきた。

「どうしたんじゃ?」

陸奥守吉行も中に入ってきて、他の二人もぞろぞろと入ってくる。

「・・・・・・・・」

部屋の中に入られた途端、何だかそこに人がいること、
ひとりじゃない事を実感してはちょっと泣きそうになった。

「・・・・・・・」

こみ上げてきたものを、ぐっとこらえ飲み込む。

「だ、大丈夫だよ!ごめんね!ちょっとぼーっとしてた。」

はそう言うと、あはは。と、苦笑する。

「そうだね、もう暗いからご飯にしようか。」

そして立ち上がると、そう言った。

「はーい!ごはんなのですー!」

今剣は喜びながらの手を握る。

「・・・・・・・」

握られた手は、あたたかかった・・・・・。

(あったかい・・・・)

じんわりとしたあたたかさに自然と顔がほころぶが、ふと、先程の『破壊』や『出陣』を思い出す。

「・・・・・・・・」

の表情が曇る・・・・。

「・・・・・・・なんじゃあ、疲れたんか?」

そんなの表情に、陸奥守吉行はにこっと笑い、
の頭に、その大きな手をのせる。

「!」

びっくりして陸奥守吉行を見上げる

「ん?どうした?」

陸奥守吉行はにこっと笑っている。

「だ、大丈夫です!なんでも!!」

は顔が少し熱くなるのを感じた。

(お兄さん!何してるんですか!!)

は思いながら、い、行きましょうか!と、みんなに言う。
んじゃ、行くかのー。と、言いならが、陸奥守吉行はの頭にあった手を下げ、
部屋を出ようとする。

(びっくりしたー・・・・)

はそう思いながら電気傘の紐を引っ張り、明かりを消して部屋を出ようとする。
しかし、明かりを消したら、辺りは真っ暗になった。

「うわ!真っ暗!」

がそう言うと、

「廊下出てみぃ。」

と、陸奥守吉行がそう言う。

え?と思い、今剣と手をつなぎながら、廊下へ出ると・・・・

「わ・・・・そうか・・・月明かり・・・・」

廊下は月の明かりに照らされて、暗いけれどほんのりと白く、明るかった。

「明かりがなくてもこれで見えるじゃろ?」

陸奥守吉行はそう言うと、背後にいるを振り向く。


「はい!」


月のほんのりとした明るさの中、五人は広間へと向かったのだった・・・・・。













続。


2015/10/31....