審神者になった日。09
それから二人と一匹は、次の部屋へと向かった。
次の部屋は手入部屋。
案内の時に、布団と刀掛けがあった部屋だ。
手入れはどんな風にするんだろう・・・とが思っていると、
手入部屋の前についた。
「では!手入れについてご説明いたします!」
こんのすけは手入部屋の障子の前に着くと、足を止めた。
どうぞ障子を開けてください。と言うこんのすけの言葉に、
はスッと障子を開ける。
「・・・・・・・・・・」
中には案内された時と同じく、布団と刀掛けがふた組置いてあった。
「あるじさま、手入の書をお開きください。」
「あ、はい!あの・・・むっちゃん・・・さん、手入の書を・・・・。」
とは振り返り、少しあだ名で呼ぶのをためらいながら、陸奥守吉行に言う。
「ああ!これじゃな。」
と陸奥守吉行は、刀装の書と手入の書を交換する。
そして手入の書を開くと、1ページ目には『手入の書』と、
達筆な筆文字で書かれており、ページをめくると・・・・
「・・・・・・・・・」
なんだか鍛刀、刀装の書とは違い、随分絵が多く、色もついていた。
見開き2ページで使う本らしく、
左のページには、『刀剣男士選択』と書かれており、
は『とうけんだんし』ってこう書くんだ・・・と、思いながら、続きを見た。
その下に3センチか5センチの幅の、横長の欄があり、
陸奥守吉行の写真が左寄せに置かれ、
それに続き小さい文字で、名前、刀の種類、レベルが書かれてあった。
そして顔写真の下には、何かのゲージとEXPと書かれたゲージがもうひとつあり、
右端には四角の中に選択と書かれている絵があった。
右のページは、灰色の四角い絵の下に、手入時間とあり、
その下に線が引かれ、必要な資源と書かれた下には、
先ほど同様、木炭、玉鋼、冷却材、砥石とあり、
さらに線を引き、手伝い札の灰色の絵と共に、
『使用しない』と書かれていた。
さらにその下にも灰色の四角い絵がある。
そして最後に、手入開始の灰色の絵・・・・。
「・・・・こんのすけさん、これどうやって使うんですか?」
はしゃがみこんで本の中をこんのすけに見せる。
「ここで手入れをする刀剣男士を選びます。
陸奥守吉行しか今はいないので、
陸奥守吉行の選択というところを、指でタッチしてください。」
「・・・・はい」
はそう言われ、タッチ・・・タブレットみたいな使い方だけど、
紙だしな・・・・と、思いながらも、選択を指でタッチする。
「うわ!」
すると、右のページが瞬時に変わった。
そこには、灰色だった部分に陸奥守吉行の写真と
何かのゲージ、そしてレベルが表示されていた。
手入れ時間には00:00:00と書かれている。
必要な資源も全て0。
手伝い札の灰色だった絵にも色がつき、
今もっている手伝い札の数が書かれている。
「今はまだ、怪我をしていないので手入れをすることは出来ませんが、
怪我をしていると、時間や資源などが表示されます。
手伝い札を使いたいときは、手伝い札の絵の隣の、
使用しないというところをタッチしてください。
使用するに変わるかと思われます。」
「・・・・・・」
が試しに『使用しない』と書かれているところをタッチすると、
表示が変わり、『使用する』になった。
その下には、今持っている枚数と、使って1枚を引いた数字が表示されていた。
手入開始の絵は相変わらず灰色だ。
「怪我をしていると、この灰色の手入開始も色つくんですか?」
はこんのすけに本を見せながら言う。
「はい!色がついて、そこをタッチしますと手入れ開始となります。」
こんのすけは尻尾をゆらゆらと揺らしながら答えている。
「手伝い札は、手入れを開始してから使うこともできますので。」
そしてそう付け加えた。
「あ、出血などしているときは、人間と同じ様に肉体の手当てしてください。
その後、そちらの布団に寝かし、刀をかけ、手入れを開始してください。
また実際に手入れをすることになりましたら、私が説明いたしますので。」
こんのすけはそう言うと、にこっと笑った。
「わかりました。」
はそう言いながら、本を不思議そうに見つめた。
本のページは4ページしかなく、紙は2枚だ。
ページをめくって触ってみても、ただの紙。
ただの紙なのに、タッチしたりすると、スマホやタブレットのように内容が変わる・・・・
2205年はこんなことが出来るようになってるのかー・・・・と、
は不思議そうに本を見つめていた。
「あ、そうだ、こんのすけさ・・・くん。このゲージって何ですか?」
がそう言い、指差したのは、陸奥守吉行の写真の下の緑のゲージだった。
「それはその刀剣男士の・・・体力と言いますか、命と言いますか・・・・・げーむでいうHPです!」
(HPって・・・・・)
こんのすけの言葉には心の中で突っ込みを入れた。
「じゃあ、こっちのEXPっていうのは?」
と、再度が尋ねると・・・・・
「そちらは経験値です!」
「・・・・経験値・・・・」
「戦った分だけ経験値がたまり、『れべる』が上がります!
れべるが上がりますと、どんどん強くなるのですが、
刀剣男士の強さをわかりやすくするために、
書物にはげーむ風にこう書いてあります。」
わかりやすくゲーム風にしてるのか・・・とは思いながら、
まぁ、わかりやすくていいかな・・・・やりやすいし・・・・。
と、思い、そっと立ち上がった。
「以上で鍛刀、刀装、手入れの説明は終わりです。
あとは仕事部屋に戻り、任務、結成、遠征、出陣などの説明をいたします。」
こんのすけのその言葉を聞いては、うっと息を詰める。
正直、まだそんなにあるのか・・・と、重い気分になった。
「では、仕事部屋に戻りましょうか。あ、今剣を顕現しますか?」
「・・・・・・」
こんのすけにそう言われは少し考える。
「あの・・・鍛刀、少ししてもいいですか?」
先ほどまだ鍛刀したかったのをやめて、次へ進んだことを思い出したのだ。
鍛刀は楽しい。新しい刀に出会うとなぜかわくわくする。
それに、陸奥守吉行と顕現させた今剣二人ではこの広い家で少し淋しい・・・。
(資源もまだあるし・・・・)
はそう思い、こんのすけに聞いた。
「はい!あるじさまがしたいのでしたらかまいません。」
こんのすけはなんの問題もなく了解した。
「じゃあ、鍛刀部屋行きましょうか。」
こんのすけの言葉にはさっきまでの重い気分から一転、
パッと明るい表情になった。
そして、鍛刀部屋の前まで来た二人と一匹。
「じゃあ、鍛刀しますね。」
は後ろにいる二人にそう言う。
そして陸奥守吉行から渡された鍛刀の書を開いた。
さっきは全て50で短刀・今剣が出た。
正直、大きい刀・・・陸奥守吉行のような打刀が欲しいので、
は資源の数字を見ながら考える。
(資源は残り900か・・・・・)
あんまり使えないなぁ・・・と、思いながら、
数字が大きい方がいいのかな?でも、あんまり使えないし・・・・など、色々考える。
(んー・・・ここは勘だ!)
とは思い、鍛刀の書に記入していく。
記入した数字は全て350だった。
御札はなし、手伝い札はまだたくさんあるので使うことにした。
「よっし!」
そして鍛刀の書を閉じると、後ろを振り返り、陸奥守吉行に依頼札と手伝い札の束を貰う。
そして鍛刀部屋の障子を開けた。
「すみませーん・・・・」
中の小人に声をかけながら開くと、小人が気づき、
てくてくとやってきた。
「すみません、よろしくお願いします。」
と言い、依頼札と手伝い札を一枚ずつ渡す。
小人はこくんと頷いて、障子を閉めた。
「!」
すると、手伝い札を最初から渡していたので、
カッと部屋の中が光った。
障子のため、部屋の中が光るのがわかる。
そしてスッと障子が開いた。
「わぁ・・・・」
中から出てきた小人が差し出したのは、
陸奥守吉行と同じようなサイズの刀だった。
(やった!これ、打刀だよね!?)
は心の中で喜びながら、ありがとうございます。と言い、刀を受け取る。
「うわっ・・・・」
刀はやはり重かった。
ずしりとした重さがある。
「もっちゃるか?」
すると背後にいた陸奥守吉行がに声をかけた。
「あー・・・・」
はどうしようか悩む。
既に陸奥守吉行には、鍛刀の書と札以外の本、そして今剣を持たせている。
これ以上持たせるわけには・・・と、思うが、
この刀を持っていると何もできない・・・・。
このまま顕現の間に行くなら良いのだが、
はまだ鍛刀する気でいた。
それに今、鍛刀の書を開いて、この刀の名前を知りたい。
どうしよう・・・とは考える。
「あ!じゃあ、私、今剣持ちます!なので、この刀持ってもらえますか?」
とは閃いて言った。
すると、
「あー・・・ええっちゃええっちゃ。あとひと振りくらい持てるきに。」
陸奥守吉行は笑顔で言う。
「え・・・でも・・・もうそんなに持たせてますし・・・」
申し訳なさそうな表情では言う。
「だーいじょうぶ。まだ持てるぜよ。気にせんとき。」
陸奥守吉行は明るい笑顔で笑った。
確かに、薄い本二冊の上に今剣を乗せている状態だ。
陸奥守吉行ならもう片方の手でこの刀を持てるだろう・・・・。
「・・・・じゃあ・・・すみませんが・・・お願いします。」
は申し訳なさそうに、両手で持っている新しい刀を
陸奥守吉行に渡した。
「まかせとき!」
陸奥守吉行は陰り一つ無い明るい笑顔で微笑み、刀を片手で掴み、受け取った。
ありがとうございます・・・と、言いながらはさて。と、鍛刀の書を開く。
先ほどの鍛刀の結果は・・・と、結果の欄を見ると・・・・
「・・・やまんばぎりくにひろ?」
先ほど行った鍛刀の結果を見ると、『打刀 山姥切国広』と書かれてあった。
はこんのすけに読みあってますか?と、尋ねる。
こんのすけは、はい!と答えた。
「そっか・・・山姥切国広さん・・・打刀・・・・」
やった!とは心の中で思い、笑顔になる。
「じゃあ鍛刀もう一回!」
はそう思い、資源を見る。
(あ・・・・・)
しかしそこに書かれてあったのは、550の文字・・・・。
(これは・・・・もう一度鍛刀したらまずいかな・・・
刀装も何個必要なのかわからないし・・・・)
は550の文字と、むむむ・・・と、にらめっこする。
しかしできればもう一度鍛刀したい・・・・。
鍛刀は何だかクセになるのだ・・・・。
(次も350でやれば・・・大丈夫かな・・・?
残りは、200・・・・うーん・・・・・・いいや!やっちゃえ!)
は若干というか、かなり不安な面もあるが、
テンションが高くなっていたこともあり、そう思うと、
鍛刀の書に350と書き込んでいった。
御札なしの手伝い札あり。
そして本を閉じ、依頼札と手伝い札を一枚ずつ取ると、
障子を開いた。
「あのー・・・すみません、もう一度いいですか?」
がそう言うと、小人がてくてくとまた目の前までやってきた。
疲れている様子はない。
ほっとして、依頼札と手伝い札を渡して、よろしくお願いします・・・・と、
言いながら、再度障子を閉める。
すると、先ほど同様、カッと部屋の中が光った。
(今度はどんな刀がくるかな・・・・)
がわくわくしながら待っていると、スッと障子は開き・・・・
「・・・・・・・・」
中から出てきた小人が持っていたのは、短刀だった。
「あ、ありがとうございます。」
は短刀が来たことに少しびっくりする。
さっきは打刀が来たのに・・・と、思いながら、
鍛刀の書を開くと、そこには『短刀 五虎退』と書いてあった。
「ご・・・・」
何と読むのかわからずは言葉につまる。
しゃがんでこんのすけに見せた。
「あの・・・これなんて読むんですか?」
とが聞くと、帰ってきたのは、
「『ごこたい』ですね。」
という名前だった。
「ごこたい・・・・」
ありがとうございます。と言い、立ち上がる。
そして鍛刀の書をパタンと閉じる。
もう資源の残りは200だ。
もう鍛刀はできない。
(とりあえず・・・顕現したら四人だし・・・いいか。)
とは思いながら、ふう・・・っと息をついた。
「鍛刀もう終わりです。つき合わせちゃってすみませんでした。」
はそう言うと、後ろを振り向き、陸奥守吉行とこんのすけに少し頭を下げる。
「ああ、頭さげんでいいきに。ほんで、次はどこに行くんじゃ?」
陸奥守吉行にそう問われは笑顔ですぐに答えた。
「顕現の間です!」
続。
2015/10/22....