審神者になった日。07













陸奥守吉行を顕現したあと、二人と一匹は部屋を出て、
隣の仕事部屋へと向かった。

「ここじゃろ?」

陸奥守吉行は先を歩いて行ったが、
部屋の前で障子を開けずに待っていた。

「あ、はい。」

は返事をして、障子を開ける。

「あるじさま、鍛刀と刀装と手入の書は机の上に置いてあります。」

こんのすけと一緒に部屋に入ると、こんのすけが本の場所を教えてくれた。
は、低い机の前に立つと、ここです。と、こんのすけが手で示す場所を見た。

そこには、糸で背が閉じられた、江戸時代の本のような本があった。
表紙の中央に縦長に白い紙が貼られ、そこには『鍛刀の書』と達筆な筆使いで書かれている。

(これか・・・鍛刀ってこう書くんだ・・・難しい字・・・・)

が思いながらそれを手に取ると、
その下に『刀装の書』があった。
『鍛刀の書』と同じ、背を糸で閉じられ、真ん中に白い紙が貼ってあり、
そこに達筆な文字で書かれている。
それを持つと更にその下には『手入の書』・・・・・。
それを持つと、その下には『結成の書』があった。

「・・・・・・・・」

よく見ると、その下にも何冊か詰んである・・・・。
はさにわの仕事は大変なのかな・・・と、
少しうんざりした顔になってしまった。

「あるじさま?いかがされました?」

こんのすけはそんなを見て、首をかしげる

「あ、いや!何でもないです!」

は慌てて笑顔を作り、取り繕う。

「鍛刀と刀装と手入の書でいいんですね。」

「はい、その他はまたこれらが終わってから説明いたしますので。」

「・・・・・・・・」

こんのすけの言葉には笑顔が壊れそうになるのをぐっとこらえた。

「あとその隣にあります、依頼札と手伝い札をお持ちください。」

と、こんのすけに言われ、本の横を見ると、
少し大きめの紙の札が、麻紐でまとめられているのが二つ重ねてあった。
依頼札と書かれた札の束を持つと、下には手伝い札があった。

「あと、何か書く物をお持ちください。」

「書く物?」

こんのすけにそう言われはこんのすけに聞き返す。

「はい、そこに筆、鉛筆、しゃーぷぺんしるなど色々ありますので、お好きなものを。」

こんのすけにそう言われて机を見ると、確かに机の反対側にはペン立てが置いてあった。
そこに、色々なペンがある。

(・・・・何書くんだろう・・・・わからないけど、消せるやつの方がいいよね・・・・)

と、思いながらはシャーペンを選び、手に持った。

シャーペンを手に持ち、片方の腕には本三冊に札の束を二つ抱える。
結構持ってくな・・・・とが思っていると、

「どれ持ってくんじゃ?持ってやるきに。」

斜め後ろにいた陸奥守吉行が、そう言って手を差し出してくる。

「え・・・あ、いや、大丈夫です。三冊なので、自分で持てます。」

はそう言うと、笑顔で返した。

「そうかぁ?遠慮せんでええぞ?わしらはおんしのためにおるんじゃからのう。」

陸奥守吉行はそう言うと、にこっと笑った。

「・・・・・・・」

笑顔が・・・・は陸奥守吉行に微笑まれ、少し言葉に詰まってしまう。

(やっぱり、爽やかで明るい好青年だったわ・・・・)

はそう思いながら、少し赤らんだ顔を隠すため、下を向く。

「なんじゃ?どうした?」

陸奥守吉行はきょとんとしてを見た。

「あ、いいえ。本当に大丈夫なんで・・・。」

はそう言いながら、まだ少し赤い顔を上げ、微笑む。

「そうかぁ?ならええんじゃが・・・・」

陸奥守吉行は少し残念そうにしゅんとし、身を引いた。

「じゃあ、鍛刀部屋行きましょうか!こんのすけさん!」

「はい。」

そんなしゅんとした姿は可愛いくては少し硬直したあと、
赤い顔を見られたくなくて、こんのすけにそう言い、そそくさと部屋をあとにした。





本三冊と言っても、薄いので重くはなく、札もシャーペンも本当に自分で持てる位だった。
は歩きながら、後ろをついてくる陸奥守吉行を少し意識していた。

もうこんのすけさんと二人じゃないんだなぁ・・・と、思い、
さっきの陸奥守吉行の言葉と笑顔を思い出す。


『わしらはおんしのためにおるんじゃからのう・・・』


「・・・・・・・・」

(私のためにいるとか・・・小っ恥ずかしいな・・・・)

とうけんだんしさんはみんなこんななのだろうか・・・・
は思いながら少し赤らむ頬と緩む口元をぐっと抑えた。


「着きました!あるじさま!」

「!」

色々と考えていたら、鍛刀部屋についてしまった。
どの部屋も同じに見えるから迷いそうだし、どこが鍛刀部屋かわからなくなるな・・・
紙でも貼っとくかな・・・そのうち・・・とは思いながら、こんのすけを見た。

「で、ここからどうすればいいんですか?」

「まずは鍛刀の書を開いてください。」

(鍛刀の書・・・・っと・・・・・)

そう思いながらがシャーペンを持ったまま、
もう片方の腕に抱えた三冊の本の上にある札の束を持ち、鍛刀の書を取り、開こうとする・・・・

「あっ!」

すると、バランスを崩し、持っていたシャーペンと札の束、鍛刀の書以外が落ちてしまった。

「おっと!」

すると、陸奥守吉行がサッと本をキャッチする。

「あ!ありがとうございます!」

は斜め後ろにいた陸奥守吉行にお礼を言い、受け取ろうとする・・・・

「ああ、ええよ。鍛刀終わるまでもっちゃる。他の書物持ってたらやりにくいじゃろ?」

なんじゃ字も書くみたいやしのう。と、陸奥守吉行は微笑む。

「あ・・・でも・・・・」

が戸惑っていると・・・・

「気にせんとき。その札ももっちゃる。」

と言って、陸奥守吉行は微笑んで手を差し出してきた。

「あ・・・じゃあ・・・すみません・・・・」

確かに札の束を持ち、本を抱えながら本を開いて文字を書くのは大変なので、
は今度は素直にお言葉に甘えることにした。


そして鍛刀の書を開くと、そこには縦横に線が引かれた表が書かれていた。
一番上には『隊 Lv 1』と書かれている。
レベル1?と、疑問に思いながらも、その横を見ていくと、
横には『木炭 1000 玉鋼 1000 冷却材 1000 砥石 1000』と書かれてあった。
更にその下には少し小さめに『依頼札 12 手伝い札 17 御札 梅 0 竹 0 松 0 富士 0』の文字。
その下から表は始まり、一番上には、
木炭、玉鋼、冷却材、砥石、御札、手伝い札、結果と、書かれている。

「・・・・・これ・・・どうするんですか?」

はしゃがんでこんのすけに見せる。

「鍛刀するには資源を使います。この木炭とかのことです。
右上に表示されている分しか使えませんので、お気をつけください。
使う資源を、この枠の中に書いていきます。
資源によって出てくる刀が違いますので。
資源は最低50から最高999まで使えます。
まずは全て50でやってみましょう。資源の下に50とお書きください。」

そう言われては木炭、玉鋼、冷却材、砥石と書かれている下に、
シャーペンで50と書いていった。

「鍛刀には資源の他に、依頼札が必要になります。
御札は使うことにより、貴重な刀を入手する確率が高くなりますが、
今はないので、使えません。御札の枠になしと書いてください。
手伝い札は鍛刀を一瞬で終わらせることができる札です。あとで使います。」

こんのすけは次々と言葉を連ねていく。
は混乱しそうだったが、依頼札、御札・・・手伝い札・・・と、頭に刻みながら、
御札の枠になしと記入する。

「では、実際に鍛刀してみましょう!」

「はい!」

こんのすけにそう言われは鍛刀部屋の障子を開いた。
むわっとした空気が出てくる中、中にいた小人さんが、こちらへやってきた。

「依頼札を渡してください。」

「! あ、はい!」

依頼札と言われは慌てて後ろを振り向く。

「すみません、陸奥守吉行さん、依頼札の束を・・・・」

と、陸奥守吉行に言うと、これか?と、陸奥守吉行は依頼札の束をに渡す。
ありがとうございます。と、言いながら、前を向き、
一枚スッと取り出すと、小人さんに渡した。
小人はぺこりとおじぎをすると、スッと障子を閉めた。

「・・・・これで・・・いいんですか?」

はこんのすけに問う。

「はい!障子の上を見てください。」

と、言われが疑問に思いながら障子の上を見ると・・・・

「!」

そこには壁にデジタル時計のようなものが埋め込まれ、
残り時間という文字の下に、00:20:00と表示されていた。

「あれが、刀が出来るまでの時間です。今回は20分ですね。
ですが今回は手伝い札を使いましょう!
あるじさま、手伝い札を用意してください。」

「あ、はい!」

そう言われては再度後ろを向き、陸奥守吉行に手伝い札の束を貰う。

「一枚用意しましたら、障子をノックしてください。」

そう言われはスッと一枚、手伝い札を取り出すと、
障子の縁をコンコンとノックした。

「あ・・・・」

すると、障子がスッと開き、汗をかいた小人が出てきた。

「手伝い札を渡してください。」

こんのすけにそう言われはお願いします・・・と、言いながら、小人に札を渡す。
小人はこくんと頷くと、再度障子を閉めた。

「わ!」

すると数秒もしないうちに、カッと部屋の中が光った。
そして、スッと障子が開く。

「あ・・・・」

中からは、小さな刀を持った小人が出てきた。

「あるじさま、受け取ってください。」

「・・・ありがとう・・・ございます・・・・。」

はそう言い、少し屈みながら、その小さな刀を受け取る。
小さいな・・・とが思っていると、

「お、短刀じゃな。どいつがきたんじゃろうなぁ。」

と、後ろにいた陸奥守吉行が、覗き込んで言う。

「短刀・・・・」

はつぶやきながら、両手で持っているその刀をまじまじと見た。

「あるじさま、鍛刀の書を開いてみてください。」

こんのすけにそう言われは脇に挟んでいた鍛刀の書を開こうとする。

「ああ、短刀もっちゃる。」

すると、陸奥守吉行が、そう言い、手を差し出してくれた。

「あ・・・すみません。」

は微笑みながら、短刀を渡した。
そして鍛刀の書を開くと・・・・・

「まず資源の数が減っていると思われます。減ってますか?」

と、こんのすけに言われる。

「あ、はい!減ってます!」

資源の数は全て1000から950になっていた。
本の文字が変わっていることには驚く。

「依頼札と手伝い札の数も減っていると思われます。」

「はい!減ってます!」

はまたもや本の文字が変わっていることに驚いて、少し声が大きくなる。

「そして下の表の、資源を50と書いた行の手伝い札の欄に『あり』、
そして結果が書かれていると思われます。」

どうですか?と、言われが見ると、
確かに書いてないはずの手伝い札の欄に『あり』と、筆文字で書かれていた。
そして結果も・・・・・

「結果にはなんと書かれていますか?」

こんのすけにそう言われたは、鍛刀の書を見て・・・・・

「いまつるぎ・・・?」

と、答えた。

「あるじさま、それは多分『いまのつるぎ』です。」

こんのすけは、少し困った顔をしながらそう言った。

「あ!これ『いまのつるぎ』って読むんですか!?すみません!」

は少し恥ずかしくなり、あせる。
結果には、『短刀 今剣』と書かれていた。

「こうして、鍛刀の書には、使った資源や札を書いたり、結果が表示されます。
これを見て、今後の鍛刀に役立ててください。」

こんのすけはそう言い、にこっと笑った。

「はい!」

「どうしますか?もう一度鍛刀しますか?それとも刀装に進みますか?」

はそう言われ、どうしようか悩む・・・・。

(とりあえず、一通り終わってからまた鍛刀しようかな・・・・)

鍛刀は新しい刀が手に入り、何だか楽しいし嬉しいが、
刀装や手入れでまだ何があるかわからない・・・・
はそう思い、こんのすけに返事をした。

「刀装と手入れ終わってからにします。」

「わかりました。では、次の刀装部屋へと進みましょう。」

こんのすけがそう言うと、二人と一匹は、刀装部屋へと向かったのだった・・・・。











続。


2015/10/17....