審神者になった日。05
「こちらへどうぞ!本丸の中へと入りましょう!」
こんのすけがそう言いながら、尻尾を揺らして歩き出す。
はこんのすけの後に続いた。
「うわー・・・大きいですね。」
遠くから見ても大きいと思った本丸の日本家屋は、
近づくと、もっと大きいと実感した。
玄関の扉も大きくて、装飾なども立派だ。
木の色がまだ新しくいい香りがする。
どうやら新築の様だった。
「はい、ここではたくさんの刀剣男士と暮らすため、広い作りとなっております。」
こんのすけはそう言いながら、どうぞ、玄関をお開けください。とに言う。
玄関の引き戸の扉をガラガラとは開けた。
(うわ・・・玄関も広い・・・・)
そこは四畳か・・・あるいは六畳もありそうな、大きな玄関だった。
とうけんだんしって・・・何人いるんだろう・・・・とは思いながら、
こんのすけに促され、靴を脱ぎ、玄関を上がる。
「まずは、あるじさまのお部屋へご案内いたします。」
こんのすけはそう言うと、広い廊下をてってと歩く。
「・・・・・・・・」
はきょろきょろと家の中を見ながらこんのすけの後をついていった。
こんのすけに案内されながら、障子がいくつも続く長い廊下を歩き、
角を曲がるとの目に飛び込んできたのは、綺麗な庭だった。
「うわぁ・・・・」
廊下からは、生い茂る木々と、広い池、そして赤い太鼓橋と離れの部屋が見えた。
「ここがあるじさまのお部屋になります。」
が庭に目を奪われながら歩いていると、こんのすけはある部屋の障子の前で止まった。
「開けて・・・いいんですか?」
とが問うと、こんのすけは、はい!と頷く。
「・・・・・・・」
がスッとその障子を開くと、
「うわ・・・広い・・・・!」
中は15畳はありそうな、畳の広い和室だった。
新しい畳のいい香りがする・・・。
部屋の中に入りながら中を見ると、タンスが二つあり、鏡台に、ちゃぶ台もあった。
「布団は押し入れの中にはいっております。」
こんのすけも部屋の中へと入り、そう言う。
は持っていたカバンと刀を畳の上に置くと、押入れを開けた。
確かにそこには真新しい布団がひと組入っていた。
「・・・・・・・・」
押し入れを閉めながらは振り返る。
「・・・・・・・・・・」
は何だかちょっとわくわくしてきた。
大きな家に広い自分の部屋。
そして何よりこの部屋は日当たりがよく、明るい。
そして綺麗な庭も見える。
障子を通り、太陽の光が柔らかく部屋へとさんさんとそそがれている。
開けたままの障子の隙間からは強いほどの太陽の光が差し込んでいた。
広い庭に面したの部屋は太陽の光で明るかった。
「荷物をおかれましたら、刀を持ち、他の部屋へ参りましょう。」
こんのすけは少しにやついているにそう声をかける。
「あ、はい。すみません。」
はそう言いながら、慌てて刀を持とうとする。
しかしそこで、少し暑いことに気づいた。
はコートを脱ぎ、たたむと、カバンの上へと置く。
(あ・・・そう言えば、カバンもコートも服も乾いてる・・・・)
あんなに雨に濡れたのに・・・と、思いながら、コートを脱いでも暑かったので、
は冬服のセーラー服の袖をまくった。
そして、刀を持ち、こんのすけと一緒に部屋を出る。
「あるじさまの隣の部屋は、仕事部屋になっております。」
廊下へ出て歩くと、こんのすけはそう言いながらすぐ立ち止まった。
「はい・・・・」
がそう言いながら障子を開けると、
「・・・・・・・」
そこは10畳ほどの和室で・・・・確かに仕事部屋だった。
「すごい・・・本の数ですね・・・・」
部屋の中には中央に低い木製の机と座布団があり、
机の上と脇にはたくさんの本が重ねて置かれていた・・・。
はその光景を見て、審神者がまだ何をするかわからないが、
少し大変なことなのかもしれない・・・と、言葉を詰まらせる。
「はい!あるじさまのためにたくさんの書物をご用意いたしました!」
こんのすけはの心中をよそに、得意げに言う。
(さにわって・・・何するんだろう・・・)
はそう思いながら、静かに障子を閉めた。
そのままこんのすけに家の中を案内される。
「ここは食事などをする広間です。」
「わー、広ーい。」
玄関のすぐ脇にある、庭に面した広い部屋は、
皆で食事をする広間だった。
その広さには唖然とする。
まるで旅館の大広間だ。
部屋の隅にはたくさんの木製のテーブルがたたんで置かれている。
「広間は、台所につながっております。」
こんのすけは何もない、がらんとした広間を歩きながら、台所へと向かう。
台所は広間と廊下を挟んですぐ側にあった。
「・・・・台所は・・・結構普通なんですね・・・・」
台所につくと、そこには炊飯器、冷蔵庫、ガスコンロなど、
がいた時代によくある器具が並ぶ、ごく普通の台所だった。
ただし・・・
(やっぱりここも広い・・・し、炊飯器とか冷蔵庫とか大きい・・・)
ガスコンロは業務用なんじゃないか・・・?とは思いながら、
とうけんだんしは何人いるんだろう・・・と、先ほど同様、疑問に思う。
「次は厠とお風呂をご案内します。」
こんのすけはサクサクと先へ進める。
廊下をしばらく歩くと、突き当たりに『女』という文字が見えた。
「こちらが厠です。」
と、こんのすけは言う。
「・・・・男子用・・・たくさんありますね・・・・」
はずらっと並んだトイレを見て、言葉に詰まる。
女子用は一つだけなのだが、男子用は数えてみたら、10個あった。
「・・・・・・・」
女子用トイレを開けると、中は少し広めの洋式トイレでは少し安心した。
床や壁は木だが、洋式トイレにトイレットペーパー、洗面所など、
一通り揃っている。窓もついていて明るい。
「・・・・・男子用・・・見てもいいですか?」
とは男子用トイレが気になったのでこんのすけに聞くと、
こんのすけは、はい。と答えた。
は女子用トイレ同様、木の扉に木の出っ張った取っ手を持ち、扉を開ける。
(あ・・・和式だ・・・)
男子用トイレは、女子トイレよりも狭い、人、一人分の和式トイレだった。
(みんな和式なのかな・・・・)
はそう思いながら10個の男子トイレを次々と開けていく。
(あ、洋式だ。)
10個のトイレを開けた結果、5個が和式で5個は洋式だった。
(半々か・・・)
はそう思いながら10個目の扉を閉める。
(あ・・・・・)
10個目のトイレの脇には、学校の様な長い手洗い場があった。
「・・・・・・」
鏡もついている。
(ここで『とうけんだんし』さんたちが顔洗ったりするのかな・・・?)
がそう思っていると、
「あ、あの・・・あるじさま・・・次へ行ってもよろしいでしょうか・・・・」
次々と男子トイレを開けていくに、こんのすけは少し戸惑っていた。
若干、引いている。
「あ!は、はい!すみません!」
はハッとしあせりながら、少し困った顔をしているようなこんのすけの後に続く。
「こちらは風呂場になっております。」
と、言われて立ち止まった所には、赤いのれんに『ゆ』の文字。
そしてその斜め下に少し小さく『女』の文字がかかれていた。
隣には青いのれんに『ゆ』と『男』の文字が書かれていた。
「中見てもいいですか?」
とが女湯の扉を指差すと、こんのすけは、はい。と答える。
今度は木の引き戸になっている扉を開けると、
そこは少し広めの脱衣所だった。
木の床に木の台。洗面台もついていて、洗面台の隣には洗濯機もあった。
洗面台や洗濯機の向かいは棚になっている。
入り口の反対側には、中央にガラスの引き戸があり、そこを開けると、
中は銭湯の様な、タイルの風呂場だった。
洗い場に湯船。
湯船は広めで、一人で入るには広すぎるくらいだった。
手足伸ばせそう・・・とは思う。
シャワーもついていて、安心する。
女風呂から出ると、こんのすけにまたもや、男風呂見ていいですか?とは問う。
はい・・・と、こんのすけは言いながら、苦笑いをしているようだった。
は引かれてるかな・・・でも、気になるし・・・と、思いながら中へと入る。
「うわー!広ーい!」
温泉か銭湯みたい!と、思いながら脱衣所を見る。
銭湯の脱衣所のように広く、四方真ん中に棚があり、中に木の丸いかごが入っている。
洗面台も3つあり、その横に洗濯機が三台ある。
入口の反対の壁中央の、二枚のガラス引き戸を開けると、
中は本当に温泉や銭湯の様だった。
タイル作りなのは女風呂と変わらないが、
湯船が広く、何十人も入れそうだ。
洗い場も10個ほどあり、すごいな・・・とは唖然とする。
引き戸を閉めて、外に出る。
「すいません、お待たせしました。」
外で待っていたこんのすけにそう言うと、では次へ・・・と、こんのすけは歩き出した。
てくてくと小さい足を進めながら、こんのすけは、
この辺りは刀剣男士たちのお部屋になります。と、言う。
中を見ようかと思ったが、ただの和室かな?と、思いはやめておいた。
「・・・・・・・・・」
しかし、廊下を歩きながら、いくつもの部屋の前を通る・・・・。
(部屋数・・・いくつあるんだろう、この家・・・・)
まぁ、トイレやお風呂がああだからな・・・・と、思いながら、
こんのすけにただただついて行った。
「さて!ここからが肝心な場所になります!」
しばらく廊下を歩いていると、こんのすけはそう言いながらある部屋の前で立ち止まった。
「開けてみてください、あるじさま。」
こんのすけはそう言う。
「・・・・・はい」
なんの変哲もない、他と同じ障子の扉・・・・。
がそれをスッと開けると、
「うわっ!」
むわっとした空気が中から出てきた。
「うわ・・・なにこれ・・・・」
中を見ると、中は鍛冶場だった。
あまり知識のないでも、テレビなどで見て知っている。
炉や、冷やす場所など、刀や刃物を作る場所だ。
「あ・・・・」
しかも中には二頭身の・・・・小さな人・・・がいた。
ぺこりとこちらにお辞儀をしている。
「あ・・・どうも。」
もお辞儀をする。
「ここは鍛刀部屋です。刀を作るところになります。」
「たんとう・・・部屋・・・・」
聞きなれない言葉に、言葉を繰り返す。
「ここで資源の数を決め、札などを渡し、刀を作ってもらいます。」
こんのすけがそう言うと、中にいる小人さんはにっこりと笑った。
「ここで刀を作り、顕現させると、刀剣男士が生まれます。」
「そうなん・・・ですか・・・・」
が凄いな・・・と、部屋の中を見ていると、
「鍛刀部屋は二つあります。隣の部屋も鍛刀部屋です。」
と、こんのすけは言う、
「え!二つあるんですか?」
が驚いて言うと、
「刀を作るには時間がかかります。20分から最大5時間です。」
「5時間!?」
は思わず叫ぶ。
「はい。手伝い札を使いますとそれがすぐに終わりますが、
毎回使うわけにもいかないと思いますので、同時に鍛刀できるよう、二つあります。」
「手伝い札・・・?」
とが問うと、それは後ほどお話いたします。と、こんのすけは言った。
隣の部屋も見ますか?と、言われ、一応、中の小人さんに挨拶しておこうと思い、
は、はい。と、返事をする。
隣の部屋も先ほどの部屋同様、鍛冶場になっていて、中に先ほどと同じ小人がいた。
お辞儀をして挨拶をすると、障子の戸を閉めた。
「鍛刀部屋の次は刀装部屋です。」
こんのすけはまた隣の部屋へと向かう。
「うわ・・・綺麗・・・」
隣の部屋を開けると、そこには中央に、神社の祭壇のようなものがあった。
鏡はないが、祭壇にきらきらとした透明な玉がいくつも置いてある。
「ここで資源を使い、刀装を作ります。」
「とうそう?」
と、鍛刀部屋の時同様が問うと、
こんのすけはそれはまた後ほどお話します。と同じように答えた。
「そして隣の部屋は手入部屋です。」
「手入れ・・・・」
は今度は言葉がわかるので、ポツリとつぶやく。
「はい、ここで傷ついた刀剣たちを治します。」
がスッと障子を開けると、そこには布団が敷いてあり、
刀をかける台も置いてあった。
「手入れには傷ついた度合いに応じ、資源と時間がかかります。」
「そうですか・・・」
とは答える。
(戦いに行くんだもんな・・・そりゃ怪我するか・・・)
がそう思いながら、少し暗い気分になっていると、
「手入れ部屋も二つあります。鍛刀部屋と手入れ部屋は
最大四部屋まで増築することが可能ですが、お金がかかるのでしばらくは無理かと思います。」
「はい・・・・」
増築にお金・・・・とが思っていると、
「次は顕現の間に行きましょう。」
と、こんのすけは言い、歩き出す。
「あ、はい!」
は急いで戸を閉め、こんのすけの後を追った。
顕現の間というのは、鍛刀部屋などから少し離れた所にあった。
また日当たりのいい、庭が見える方へと戻ってくる。
その部屋は仕事部屋の隣にあった。
「ここが顕現の間です。」
こんのすけにそう言われ、スッと障子を開くと、
中には祭壇があった。
刀装部屋同様、神社の祭壇の様な祭壇だ。
ただ、鏡の前には刀をかける台が置いてある。
中へ入りましょう。と言われ、中に入ると、スッと空気が変わった。
「・・・・・・・」
清らかな・・・澄んだ空気に包まれる。
(何か・・重要な場所なのかな・・・・)
とは思いながら、祭壇の前の座布団の横で座っているこんのすけを見た。
「ここは顕現の間です。ここで刀の付喪神を顕現し、刀剣男士を出現させます。」
「あ・・・・・」
(そうか・・・ここで人の姿にするのか・・・・)
はそう思いながら、こんのすけの話を聞く。
「以上でこの屋敷の案内は終了です。全ての部屋を案内いたしました。
そしてここからは審神者のお仕事の話になります。」
「!」
は審神者のお仕事という言葉に、少しドキッとする。
「ここは顕現の間。審神者が神力を使い、刀剣男士を顕現させます。
では、実際にその刀でやってみましょう。」
「え!」
急な展開にはつい驚いて叫んでしまう。
「・・・そんなに驚かれなくても・・・・」
こんのすけは戸惑う。
「あ、いや!ご、ごめんなさい!急に・・・何か・・・けんげん・・・?とか、
本格的なことになったので、びっくりして・・・・・」
は慌てて取り繕う。
「・・・・屋敷の案内の後で急でしたか?では、一休みいたしましょうか?」
こんのすけはを気遣ってにこっと微笑みながら言う。
「あ・・・・」
どうしよう・・・と、思いつつも、できればそうしてもらいたい・・・とは思う。
神社で雨宿りしてから、ここまで休憩なしだ。
次々と進められることをこなしていて忘れていたが、
身体・・・・特に階段を上ったり、広い家の中を歩き回ったので、足が疲れている。
休憩・・・したい・・・それから仕切りなおしてお仕事の話をしてもらいたい。
はそう思った。
「・・・すみませんが・・・一休みしてからで・・・お願いします・・・・。」
は少し申し訳なさそうに、こんのすけにそう言った。
「いえいえ!あるじさまが疲れているのに気づけず、申し訳ありません!」
私もまだまだです・・・と、こんのすけも申し訳なさそうにぎゅっと目をつむり頭を振る。
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
むしろこんのすけさんがいてくれて助かりましたし・・・と、
はそんな可愛いこんのすけの仕草を見て、にっこりと笑い、しゃがんでこんのすけに話しかけた。
「では!休憩にいたしましょう!台所にお茶があったはずです!」
こんのすけがそう言うと、はい。と言いながらは立ち上がり、
刀・・・・陸奥守吉行を持ったまま、こんのすけと台所へと向かった・・・・。
続。
こんのすけの主呼びがわからなかったので、あるじさまにしてしまいました・・・。
もしわかったら直します・・・・。
あと、勝手に顕現の間とか作ってすみません・・・・。
2015/10/10....