クリスマスプレゼント。
「あ、もうすぐクリスマスだねー。」
それはが審神者になってから一年が経とうとしていた頃。
刀剣男士も増え、本丸が賑やかになっていたある日、
広間で短刀数人と遊んでいたは、壁に飾ってあるカレンダーを見てつぶやいた。
「クリスマスですか。イエス・キリストの生誕を祝う日ですね。」
の言葉に、前田藤四郎が答える。
「あ、よく知ってるねー。確かそうだよ。まぁ、日本ではお祭りみたいなもんだけどね。」
はは。とが苦笑いすると、
「あれだろ?ケーキとチキン食ってパーティーするやつ!」
と、一緒に遊んではいなかったが、そばにいた厚藤四郎がに言った。
「そうそう。」
は苦笑いして答える。
「けーきとちきんですか・・・ぱーてぃー・・・・・・したいですね!ちゃん!」
すると、一緒におはじきをして遊んでいた今剣が、瞳をキラキラと輝かせながら言う。
「え、あー・・・そうだね・・・・・・クリスマスパーティーか・・・・・・できるかなー・・・
ケーキとチキン食べるだけだし・・・・・・光忠さんに聞いてみようか。」
みんなもやりたい?とがその場にいた、前田、平野、秋田、厚、五虎退、今剣に聞くと、
みんなは嬉しそうに、はい!や、おう!と答えた。
「そっかー、じゃあ、光忠さんに聞いてみるね。」
なんかつぶやきが大事になっちゃったな・・・と、思いながら、
はみんなにそう言い、おはじきを再開した。
そして、夜。
みんなで夕飯を食べ終え、後片付けも終え、まったりした時間が流れる中、
はまだ台所で明日の仕込みをしている燭台切光忠の元をたずねた。
「光忠さーん。」
「ん?どうしたの?ちゃん。」
台所の入口から光忠に声をかけると、エプロン姿の光忠が振り向きに言葉を返した。
「あのー・・・今日、短刀くんのみんなと話してたんですけど、
クリスマスパーティーって・・・・・・できませんかね?」
「・・・・・・クリスマスパーティー?」
の言葉にきょとんとして、オウム返しをする光忠。
「あ!パーティーって言っても、ケーキとチキン食べるだけなんですけど!
・・・・・・食べ物の事だから・・・・・・やっぱり光忠さんに聞かなきゃなと思って・・・・・。
あ!もちろん私もお手伝いします!・・・・・・もし、可能なら・・・短刀くんのみんな、
嬉しそうにしてたんで・・・・できれば・・・・・・」
お願いしたいんですけど・・・と、最後の方はおずおずとが言うと、
「・・・・うん!まぁ、ケーキは前にも焼いたことあるし、
鶏肉料理もレシピがあれば出来ると思うから、構わないよ。パーティーしようか。」
光忠はそう言うと、にっこりと笑った。
「あ!本当ですか!?ありがとうございます!よかったです!」
のほっとした笑顔に、更にニコニコとする光忠。
「日にちはいつ?24?25?」
事が決まれば早速。と、光忠は日にちを聞く。
「あー・・・じゃあ25日で!」
はどちらがいいんだろう?と、悩みつつも、イブのつかない、クリスマス当日にした。
「了解。じゃあ、ケーキと鶏肉料理のレシピ相談、今度、付き合ってね。」
と、光忠はウインクする。
「あ・・・は、はい・・・。」
容姿の良い光忠にウインクされ、少し焦りながら言葉を返す。
もう、光忠とも長く過ごしているが、未だにこういう所には慣れない。
はすごすごと下がり、その場を後にする。
(パーティー発表は明日の朝礼で言うかな・・・・)
はそう思いながら、風呂の支度へと向かった。
「あと、もう一つお知らせがありますー。」
そして翌日の朝。
全員参加の朝礼で、みなが一列に広間に並べられたテーブルに、
それぞれ座る中、テーブルの端、いわゆるお誕生日席に立ち、
今日の出陣部隊、遠征部隊などを伝えていたは、すべて言い終えた後、話を切り出した。
「12月25日、クリスマスパーティーをします!」
のその言葉に、事情を知っている短刀などは、わぁ!と喜びの声を上げるが、
きょとんとしている者の方が大半だった。
「あ・・・えーっと・・・・クリスマスパーティーって、みんな多分、知識あると思うんですけど、
この間、短刀くんたちと話してて、やろうかっていうことになって、やれそうなのでやることにしました。」
あはは・・・とはどことなく気まずくて苦笑いしながらみなに言う。
「まぁ、パーティーと言っても、ケーキ食べてチキン食べるだけです。
夕飯がケーキとチキンになるみたいな感じです。」
の言葉に、やったー!と、短刀たちははしゃいでいた。
その様子を見て、大人な刀剣男士たちも納得したようで、その場の雰囲気も緩んできた。
「はい!というわけで、クリスマスパーティー決まりましたけど
浮かれて怪我しないように今日も頑張ってください!よろしくお願いします!では、解散です!」
そう言うと、広間にズラッといた刀剣男士たちは、各々の仕事へと向かって行った。
その後、光忠とのレシピの打ち合わせなどをし、日々の仕事をこなし、
淡々と日々はすぎ、クリスマスももうすぐという時期になってきた。
(あ、そうだ・・・・・・)
仕事部屋で、文机に向かっていたは、ふと思った。
(クリスマスプレゼント・・・どうしよう・・・・・・)
と。
(あげなくてもいい気するけど・・・あげた方がいいかな・・・?
でも何プレゼントするかにも迷うし、全員分用意するの・・・かなり大変だもんなぁ・・・どうしよう。)
は仕事の手を止め、寒そうな冬の庭を眺めて考える。
(どうしようかなー・・・・・・)
物・・・食べ物・・・・・・何をプレゼントとして用意するにもこの人数じゃ大変だ・・・・。
しばらく窓の外を見て、ポンポンとプレゼントに適した物を頭に色々と思い浮かべていると・・・・・・
「あ!」
「!」
の側で雑務をしていたへし切長谷部がの叫び声にビクッとしを見た。
「あ、主・・・・どうされました?」
長谷部が突然叫んだにおそるおそる聞くと・・・・
「あ・・・ごめんなさい、長谷部さん。何でもないです。」
は、あははっと、少し恥ずかしそうに頭をさげた。
「そうですか・・・・・・」
長谷部は不思議そうな表情をしながら、また仕事に戻ったを見ると、自分も仕事へと戻った。
そして、12月25日。当日。
「ツリー、ここでいいのかー?」
「この飾りはー?」
朝が身支度をすませて朝ごはんに向かうと、
何やら広間からバタバタとした音と声が聞こえてきた。
「?」
が不思議に思いながら空いている障子から中に入ると、
「わ!すごい!」
中には大きなツリーや、キラキラした飾りなどが飾り付けられていた。
「え!?これどうしたんですか!?ツリーとか!」
とがツリーをいじっている日本号にたずねると、
「こんのすけに用意してもらったんだよ。今日の朝、さっき届いてな。」
と背の高さを生かし、ツリーの上部の飾り付けをしている日本号は言った。
「・・・・・・やるんなら、短刀たちも喜ぶし、ちゃんとやろうってね。」
隣にやってきた光忠が、ふふっと笑いながらそう言う。
「あー・・・・・・」
よくツリーとかキラキラの飾りつけるってわかったな・・・とは思うが、
そうか・・・・・・知識はあるんだもんね。わかるか。と、納得する。
(まぁ・・・短刀くんたちも喜んでるし、私も楽しいし、よかったな。)
がそう思って微笑んでいると、
「ー!見て見てー!俺、かわいい?」
加州清光がキラキラした赤い壁に飾る飾りを首に巻き付けて、ウインクしている。
「・・・・・・う、うん、かわいいよ・・・・・・。」
は、ははは・・・と、苦笑いしながら答えた。
加州くんは相変わらずだなぁ。と、思いながらは朝ごはんへと向かった。
そして、夜・・・・・。
朝ごはんの後から、ケーキとチキン、その他色々の食べ物の準備に、
、光忠、歌仙兼定で取り掛かり、オーブンで焼ける最大のサイズのショートケーキを三つ作り、
チキンの香草焼きや唐揚げなどなど色々作り、夜になる頃には三人ともぐったりとしていた。
「で、できましたね・・・・・・」
「間に合ったね・・・・・・」
と光忠は作業台に手をつきながら、ぐったりしてそう言い合う。
「まったく・・・・・・雅じゃなかったよ、今日の一日は。」
歌仙はいささかご機嫌ななめでむくれている。
「さ、運ぼうか。ちょうど時間だし。」
その言葉にと歌仙は頷き、ケーキや料理を広間へと運び出した。
「みんなー!できたよー!」
が先頭切って大きなホールのショートケーキを持ちながら広間へ行くと、
広間は綺麗に飾り付けられ、これもこんのすけに頼んだのかラジカセがあり、
クリスマスソングが流れていた。
がテーブルへケーキを置くと、わっと短刀たちが周りに集まってきた。
「まだ手つけちゃだめだからね。」
はそう言い、また台所へと戻る。
「主、お手伝いいたします。」
すると、ひょっこりと台所へ長谷部がやってきて、そう言う。
「あ、はい。ありがとうございます。じゃあ、運ぶのを・・・・・・」
とが言うと・・・・・・
「あ、俺も手伝うよ。」
と、御手杵も台所へ現れ手伝ってくれた。
すると、私も俺も僕も・・・・・・となり、あっという間に運ぶのが終わってしまった。
(あっという間だったな・・・・・・)
とはエプロンを外しながら思う。
そして広間へと行くと、いつの間にか、みな大体席につきもう始める準備が出来ていた。
は、あっ!と、あることを思い出し、急いで部屋へと走った。
そして戻ってくると待ちの状態になっていて、
障子を開けると、無言の部屋にジングルベルが流れ、みながを見ていた。
(うっ・・・・・・)
とは言葉に詰まる。そして動けない。
「ちゃんなにしてたんですかー!みんなまってたんですよー!」
と、今剣が言ってくれたおかげで、場の空気がなごみ、
はごめんごめん!と言いながら席につく事ができた。
「じゃあ、みんな飲み物まわった?」
そして、光忠が乾杯の音頭を取ろうとしていた。
(そこまでやるんだ・・・・・・)
とはツリーもあるし、部屋の飾りもしてあるし、クリスマスソングは流れてるし・・・・・・
もっと簡単な感じに思ってたのが大事になったなぁ・・・と、思っていると。
「じゃあ、ここはやはり主のちゃんに言ってもらおうか。」
と言う声が聞こえは、え!?と、顔を上げる。
すると、光忠がグラスを持ちウインクしてくる。
え、あ、これは・・・あれですか・・・・・・と、思い、どぎまぎしながらは、少し恥ずかしいが口を開く。
「そ、それじゃあ・・・・・・メリークリスマス!」
とは苦笑いしながらグラスを上げ、そう言った。
なんでここまでしなきゃならんのか。恥ずかしい。と、正直思いながらも、
みんな知識はあるから忠実にやっちゃうのかな。と、
は少し顔を赤くしながら、子供用のアルコールの入っていない、
シャンパンに似せた炭酸飲料を飲んだ。
「鶏肉うめー!」
「唐揚げもうまいぞ!」
「ぼく、けーきがたべたいです!たべていいですか?」
「じゃあ、ケーキ切ろうか。」
すると、そんな声が聞こえて来ては顔を上げる。
「・・・・・・・・・」
みんな楽しそうだった。
まぁ、一部不本意そうな顔をしている者もいるが、
料理を食べたらそんな顔もほころんでいて、クリスマスソングが流れる中、みんな楽しそうにしていた。
(よかった・・・・・・クリスマスパーティーして・・・・・・)
は、いつも戦闘に出て傷だらけで帰ってきたり、返り血を浴びていたり、
いつ破壊されて死んでしまうかもわからない緊張と殺伐とした空気が多い日々の中、
みんながこんなに楽しそうにしている姿を見て、少し微笑みながら、そう思った。
一時ではあるが、みんなの安らぎになってよかったな・・・とが思っていると・・・・・・
「ではでは、ここでプレゼントタイムだよ!」
と、乱藤四郎が立ち上がり大きな声で言った。
え?とが思っていると、
「ボクからちゃんへのプレゼント!」
乱はそう言い、タタタ。との元へ走ってくると、
「はい!」
と、両手を開いて差し出してきた・・・・・・
それは花の飾りがついたヘアピンだった。
「わー!かわいい!え!?プレゼント?いいの?貰って!?」
は突然のことに驚いて戸惑う。
「うん!もちろん!ちゃんのために作ったんだよ!」
「え!手作り!?」
「うん!」
うわー!ありがとうー!とはヘアピンを受け取り、まじまじと見る。
「あ、あの!」
すると、五虎退がめずらしく声を上げる。
そしての元へと来ると、
「あ、あの・・・・・・僕・・・も・・・・・・プレゼント・・・・・・です。」
と言って差し出してきたのは、ピンクの淡い花がついた、押し花のしおりだった。
「わー!ありがとう!・・・・・・もしかして、手作り?」
とがたずねると、
「は、はい・・・・・・。」
と、五虎退は頷いた。
「ありがとうー!」
は満面の笑みでほほえむ。
「俺からもあるぜ。」
そして次は薬研が立ち上がる・・・・・・
そうして短刀を中心にプレゼントを貰い、一段落つくとは今かな。と、思い、口を開いた。
「あの!私からもみんなにプレゼントがあります!」
立ち上がって言ったその言葉に、話していたみんなはピタリと口を閉じる
「さすがに物とかだと全員分用意できないので・・・・・・」
と、言いながらがごそごそと巾着から取り出したのは・・・・・・
「『なんでもします券』です!」
顔の前に持ってきた、長方形の小さな紙の束だった。
その言葉にその場にいた全員が黙り込み、は?という表情をする。
「えっと・・・・・・あの・・・・・・肩たたき券みたいな!この券と引き換えになんでもします!」
その言葉に、広間は静まり返る。
おもに大人勢はに想いを寄せてる者も多々いるので、ごくり。と、つばを飲んだ。
「ほほう・・・なんでもしてくれるのか・・・・・・」
すると岩融がニヤニヤとしながら口を開く。
「あ、はい。畑仕事手伝ったり、掃除当番変わったり、それこそ肩たたいたり・・・・・・。」
とは笑顔で言う。
『・・・・・・・・・』
そのほほえみに、悪いことを考えていた一部の大人勢は、ああ、無理だな。と、悟った。
「いちにちじゅうずっと、ぼくとあそんでくれるというもいいのですか!?」
今剣はぴょんと立ち上がりにそう聞く。
「うん!大丈夫!」
はそれくらいなら。と、答える。
「わーい!それはうれしいけんですー!」
ぴょんぴょん跳ねる今剣をかわきりに、ザワザワとみな話はじめる。
「じゃあ、みんなに一枚ずつ渡しますね。」
そんな雰囲気にほっとしては『なんでもします券』をみんなに1枚ずつ渡し始めた。
「よーし!じゃあ俺は嬢ちゃんに添い寝でもしてもらうかな!ハハハ!」
と、日本号に券を渡した時、日本号はそんなことを言う。
「何言ってんですか・・・・・・そういうのは却下です。」
またこのおじさんは酔っ払って・・・・・・とは思うが、あながち冗談でもなかったりする。
「なんだぁ〜?何でもしてくれるんじゃなかったのか〜?」
日本号は券を持ちながらニヤニヤと笑う。
「っ・・・・・・」
が言葉につまっていると・・・・・・
「あーあー!もうこのおっさん出来上がってるから!相手しなくていいよ!次、行きな!次!」
次郎太刀が日本号の頭を押さえつけ、そう言って手を振った。
「あ、はい・・・・・・」
はなんだかなぁ・・・と、思いながらその場を後にして、1枚ずつみんなに渡して行く。
けれど日本号の言うこととの返事に、耳をダンボにしていた刀剣男士はかなりいた。
どこまでがよくて・・・・・・どこまでがダメなのか・・・・・・あわよくば・・・・・・。と、思う一部の刀剣男士たち。
しかしはそんなことを思っている刀剣男士たちがいるとはつゆ知らず、
サクサクと配るのを進めていた。
そもそも自分が多数の刀剣男士から想いを寄せられていることにもはまったく気づいていなかった。
迂闊に『なんでもします』などという券を渡してしまい、これからどうなるか・・・・・・
そんな心配はまったくせずには無邪気にプレゼントを配っていた。
何を頼もうか・・・・・・もんもんと考え出す一部の刀剣男士をしり目に、
は短刀たちと楽しく話し、美味しい物を食べ、楽しいクリスマスを終えるのであった・・・・・・。
終。
2015/12/25.....