弱音。













「はぁ・・・・。」


は鷹村の部屋の窓から、缶ビールを手に、夜空を見上げていた。

鴨川ジムのバイトを辞め、社会人として働きだしてもう何年か。



正直・・・疲れた。



どうしてこんなに毎日理不尽なことを言われなきゃいけないんだろう。

嫌なことを我慢して働かなきゃいけないんだろう・・・。

でも、生活していくためには働かなきゃいけない・・・。


「はぁ・・・。」


再度はため息をつく。


「あに、ため息ばっかついてんだよ。」


すると、鷹村がのしっとの頭に自分の顎を乗せてきた。


「鷹村さん重い・・・。」

「オレ様の部屋にきて、ため息つくだけなら帰れ。」

「・・・・・・。」

鷹村さんのきつい言葉に涙がにじんできた。



つらいつらいつらい。



どうしてこんなにつらいことばかりなんだろう・・・・。


「うっ・・・ひっく・・・・。」


は涙をぬぐいながらしゃくりあげる。


「・・・・・・・。」


すると、鷹村の両手が後ろから回ってきて、
ぽすんとは鷹村のあぐらの中に抱え込まれた。


「・・・最初から素直に泣きやがれ。」

「っ・・・だって!鷹村さん、弱音一度も私に吐いたことないのにっ!
 私ばっかり!ひっく・・・いつも!弱音吐いて泣いてっ!うっ・・・!」


は鷹村の厚い胸板に顔をうずめて、大声で泣いた。


今までのつらさを吐き出すかのように・・・。



「オレ様をお前ら凡人と一緒にするな・・・凡人はよわっちくて、てーへんだな。」

「大変だよぉ!」


鷹村に抱えられながら、鷹村の声と、体温と、肉体の感触を感じ、

は、この人と付き合ってよかった・・・と、心底思った。



素直じゃないし、

遠回しな愛情表現するし、

理不尽なことするし、

性欲強いし、



だけど・・・・本当は優しいこの人と・・・・

付き合って本当によかったと・・・は思ったのだった。






「っ・・・鷹村さんも、たまには私には弱音吐いていいんだからね?」

「・・・お前ら凡人とオレ様を一緒にするな・・・いわねーよ・・・・。」



終。


2023/07/12...