別れの求人雑誌。
!注意!このお話は鷹村さんの女性関係の話です!先生のことで揉めます!苦手な方は見ないでね!
わかっていた。
始まりがあるものは、全て終わりがある。
だから私はいつも不安だった。
だからその終わりをいつも危惧していた。
いつか終わる、この関係を想像して・・・・切ない気持ちになっていた。
だけど、こんなにも、相手が理不尽で、私の気持ちがおどろおどろしい物になるとは思わなかった。
「まったく、こりねーよなぁ〜鷹村さんも。また、山口先生にせまって投げ飛ばされたらしいぜ。」
ジムへのドアを開くとの耳に、そんな青木の言葉が飛び込んできた。
「あ、おい!」
を見た木村がしっと、口に指をあてる。
は?
え?
はそこで立ち止まる。硬直と言ってもいいだろう。
「あ、オレ、ロードいってきまーす・・・」
「オレもー・・・」
「ボクも・・・」
次々と逃げようとするメンツを後目に、一人だけ残っていた人物がいた。
「もう潮時ですよ。ちゃんと現実伝えないと。」
板垣だ。
「・・・・板垣くん・・・どういうこと?鷹村さん、足傷めて、山口先生のところ通ってるのは知ってたけど・・・。」
は少し狂気に満ちた目で板垣をじっと見つめた。
あの彼氏にしてこの彼女・・・って感じだな。と、板垣は思った。
「実は・・・言いにくいんですが、何か、どうやらご執心らしくて・・・・ただの性欲かと思ったんですけど・・・・
何回も何回も山口先生にせまっては投げ飛ばされて、それでも挫けず、
お姉さん情報では、「山口先生じゃなきゃだめ」という言葉に、否定も肯定もせず黙ってたとか・・・・。」
「・・・・・・・。」
板垣の言葉にはその場で頭が真っ白というか・・・何も考えられなくなった。
いや、彼女の私は?
私、彼女だよね?
私なんなの?
散々、近寄る男に嫉妬全開してた貴方なんなの?
え?乗り換え?
と、ふつふつと怒りが沸いてきた。
「おーっす。」
タイミング悪く、そこへ鷹村がやってきてしまった。
「あ・・・。」
板垣が、うわっという顔をしている。
「おう!!オレ様のいない間さみしくねーか!?」
しかもそんなことを満面の笑みで言っている。
が目を見開いた。
そしてつかつかと鷹村の元へ歩いて行く。
「山口先生に乗り換えたんじゃないんですか?」
直球だった。
うっ・・・と、鷹村が、らしくなく、怯んだ顔をした。
「山口先生に乗り換えたんじゃないんですか!!???」
怒鳴りつけながらは怒りの表情で叫ぶ。
「いや・・・違う・・・・。」
鷹村はバツが悪そうに目をそらして言った。
「何が違うの!!!」
は怒り心頭で叫ぶ。
「も・・・智子とも・・・・やりてぇ・・・・。」
その言葉を聞いての眉間にシワが寄った。
「ほら!なんかどっかの国に、いっぷたさいせい?とかあるだろ?オレ様だからな!一人の女だけの物にしとくのはむ・・・」
バッチーン!と、盛大な音が響いた。
は人を殴ったのは初めてだった。平手打ちだが。
「一夫多妻制なんてごめんです。さようなら。」
吐き捨てるようにそういうとは冷たい目で鷹村を見て、背を向け練習室から去っていった。
バタンと扉が閉まった。
(くそ!くそ!くそ!!!)
怒りが、悲しみが襲ってくる。
涙が溢れ出そうだ。
でも、仕事中。我慢しなくては。
なんだあの男。
最低じゃないか。
なんであんな男に浮かれて惚れてたんだ。
なんであんな男と何年も付き合ってたんだ。
「・・・・・・・・・。」
自分がこんなヤンデレみたいな人間だと思わなかったと、
「死ね死ね死ね死ねクソヤロウヤリチン」だの書きなぐったノートを見ては自室で思った。
でも、まだ腹の虫がおさまらない。
本当は藁人形を釘かカッターで滅多刺しにしたいくらいだ。
自分がこんなに醜い感情を持っているなんて思わなかった。
自分が浮気・・・?され、他の女に男を取られ・・・いや違う。
山口先生が悪んじゃない。
山口先生は拒んでいるのだ。
全てはあの男が悪い。
あの、ヤリチン野郎が悪いのだ。
「殺したい・・・・。」
ぼそっと出た一言は、まぎれもない本音。
でも、殺せない。
こんなに憎むのは・・・・それほど愛していたから。
あれだけ楽しい時間を過ごしたから。
ほら、涙が出てきた・・・・。
大声で泣いている。
横になって、手に顔を当てて、大声で泣いている。
いつか、この関係も終わるんだろうな・・・。と、思っていたことが、
本当になってしまった・・・・一夫多妻制を許せば継続可能だが、無理だ。多分。
この気持ちはどうなるんだろうか・・・・。
時間が解決してくれるんだろうか・・・・ほぼ毎日会う人に・・・・。
「転職しよ・・・・。」
ぼそりとつぶやいた。
逃げて、会わないようにして、忘れるしかない。
テレビには出るけど、見ないようにして・・・・。
はいはい、もうさようなら。
女は切り替えると早いんですよー。
はそう思うと、求人雑誌を買いに行こうと、着替えだした。
終。
2022.04.05...