手を伸ばせば届く距離に
「・・・・・・。」
隣で寝ている鷹村の背中をはじっと見つめた。
起こしてはいけないので、そっと手を伸ばし、
背中に触れる直前で止める。
こんなに近くにいるのに、
には最近、鷹村がどこか遠くに感じた。
には昔と変わっていないように接してくれているが、わかる。
昔とは違う。
一歩くんが引退してしまったからだろうか・・・。
何か躍起になっている。
はなぜか泣きたくなって顔を歪めた。
どうしたんですか、鷹村さん?
何かありましたか?
何を抱え込んでるんですか?
どうしたら昔のように・・・。
と、伝えたいことはたくさんある。
でもきっと、話しても鷹村は、
なんにもねーよ。と、はぐらかして終わらせるだろう。
自分には何もできない・・・。
無力さを痛感しながら、
誰なら彼を元に戻せるのだろう。
とは考える。
でも、誰にも戻せないのかもしれない。
時が経てば、人は多少なり変わる。
肉体も、考え方も、背負うものも・・・。
変わらないものなどないのだ。
だから、鷹村は変わってしまった・・・。
もうきっと、元には戻らないだろう。
何を目指して、何を求めているのかはわからないが、
自分には何もできず、
ただ彼を見守ることだしかできない。
それが苦しいのなら離れるか――。
「っ・・・・。」
は涙があふれてきて、
身体を反対側へ向けると、体を丸めた。
そして涙を必死に堪える。
「・・・・・・・・。」
薄っすらと瞳を開いた鷹村は、
何かを射るように、正面を見つめていた。
終。
お題サイト様よりお題お借りしました!
2023/11/07...