スーパースターの背負うもの。
04













「やった!」


思わず声にでた。


その後、試合は続き、とうとう鷹村がホークをダウンさせたのだ。
しかも二度も。

「来た所にカウンターあわせろ!」

「連打でカタつけちまえ!!!!」

みんなもいっせいに盛り上がる。

「鷹村さん!!頑張ってーーー!!!!」

も涙を振り払い、大声で叫んだ。


リングの中央で、両者の拳がぶつかり、轟音が会場に響く。


(うわっ・・・)


あんなのに当たったたら間違いなく即死だ・・・。
は少し冷静になってきた。
鷹村が、巻き返してくれたからだろうか。

その後は全弾フルスイングの・・・ボクシングというよりは喧嘩のような試合が続いた。
振り回される豪腕と、床や相手にぶつかる度に鳴り響く轟音。
鷹村優勢の状態のまま第4ラウンドは終わった。

静まり返る両国国技館・・・・そして第5ラウンドが始まる前・・・・


「よっしゃあ!鷹村さん!!!」

「いけーー!」


わああぁ!と会場が盛り上がった。
鷹村が両手を上げ、KO宣言したのだった。


(鷹村さんっ・・・!)


は嬉しさにどんどん涙があふれて止まらなかった。

お願いだから、このまま。
どうかこのまま行ってくれ。
このまま勝ってくれ!

(勝って!勝って!勝って!)

胸の中で何度もつぶやきながら、ボロボロと涙を流し、
両手で口を覆いながらは願った。


盛り上がる会場、猛ラッシュする鷹村。
しかし、ホークは冷静だった、ガードで固める。
猛連打する鷹村の攻撃をよそに、ゴングはなった。

第5ラウンド終了。

期待に沸き返る大観衆。

第6ラウンドもこの調子で、6ラウンドで勝敗が、鷹村がKOをすると、
みなが期待を持っていた。

しかし・・・・


「!」


第6ラウンド・・・鷹村のパンチには力はなく、打って変わってホークのペース。
鷹村は打たれ続け、またもやダウンを許してしまった・・・。


静まり返る会場・・・・

そこで両手を上げ、先ほどの鷹村のパフォーマンスをするホーク・・・。


(なんで・・・)


はよろよろと立ち上がる鷹村を呆然と見ていた。
なんでこんなことになっているのかわからない・・・。
さっきまで、あんなにいい調子だったのに・・・。

「減量苦だ・・・」

「減量さえなかったら・・・」

木村と青木がつぶやくように言う。

「!」

は涙を拭きながら二人を見る、

「減量さえなかったら勝ってたんだ!
万全の鷹村さんならこんなことになりゃしないのに!!!」

青木が辛そうな表情で叫ぶ。


「苦しいと・・・言っただニか・・・?」


みなの視線が猫田に集まる。

「減量中、一言でも・・・あの男が苦しいと言っただニか?
きっと・・・鷹村はわかってたんだニ。
自分の身体は5ラウンドが限界だということを・・・。」

その言葉ではハッとする。

(そうか・・・減量で・・・体力が持たなくて・・・5ラウンドまでしか・・・)


「だからこそ両手を上げ、自分を奮い立たせて出ていった・・・。
自分がどれだけ期待されているかも知っている・・・
誇りさ傷つけられても、感情を押し殺し、
あいつは一言も愚痴らずただ黙々と・・・限られた時間しか戦えないならそれに懸け、
5ラウンドを全力で戦える身体に仕上げたんだニ・・・
同じボクサーとして・・・いんや、同じ男として・・・
お前たちにそれができるだニか!?」

「っ・・・・」

猫田の言葉が胸に刺さる・・・。

(鷹村さんは・・・鷹村さんは・・・・)

はあふれてきた涙が止まらない・・・。


「わしは涙が出る!鷹村の、あの誇り高い姿さ見ると・・・本当に涙が出るだニ!」


その言葉に・・・みなが涙をにじませた・・・。

「っ・・・くっ・・・ひっく・・・・・」

の顔はもうぐちゃぐちゃだった。
先程から止まらない涙に加え、猫田の言葉・・・・。

(鷹村さんは・・・なんて、凄い人なんだろう・・・・)

凄い・・・素敵・・・最高・・・本当に凄い・・・。

あふれでる涙を、顔を伏せて抑えながら、
は、そんな言葉を次々と浮かべていた。
どんな言葉が一番合うのかはわからない。
もうすべての言葉が合うような気さえしてきた。

そんな風に思えるほど、いつものはちゃめちゃさを帳消しにできるほど、
この試合への準備と、試合中の鷹村は・・・・誇り高く、最高にかっこよかった。


「ぐすっ・・・・」


は顔を上げる。


見なくては。

負けてもいい。

負けて欲しくないが、勝っても負けてもどちらでもいい。

この戦いを、一秒も眼をそらさずに、しっかりと、見なくてはいけない。



はそう思ったのだ・・・・・。












続。



2017/11/07...