スーパースターの背負うもの。
03













試合はド派手な入場から始まった。

そして、試合がはじまる直前までの挑発につぐ挑発。


鴨川ジムのメンバーや猫田たちと観客席で見ていたは、
入場時からぎゅっとかたく両手を握り締めていた。


そしていよいよゴングが鳴る。



(なに・・・あれ・・・・・)



試合は第1ラウンドから波乱の展開を見せた。
無茶苦茶なホークのスタイルに、なぶり続けられる鷹村。

(鷹村さん・・・!)

鷹村の顔はあった言う間に鮮血に染まった。
意識も第1ラウンド終了時には失っていただろう。

「・・・・・」

静まり返る青木や木村・・・もまた同じだった。

今まで見たことのない、ありえない物をみてしまったような・・・
そんな気分だった。


(うそでしょ・・・。)


はぎゅっと握っていた両手を口元にあて、
コーナーにいる鷹村を見つめていた。

しかし、視界が滲む・・・・涙があふれてきた。

(泣いちゃダメだ・・・)

はぎゅっと涙を拭う。

(泣くのは・・・まだ早い・・・・鷹村さんが勝った時に・・・・)

はそう思い、ぎゅっと唇を噛むと、再びリングを見つめた・・・・。



その後、足を使った鷹村だが、初のダウンを食らい、
打ち合いの末、二度目のダウン。

場内に響く鷹村コール・・・。


「・・・・・・・」


顔を背けたい・・・。
の頬に涙がつたった。
見てられない。
もうやめてください。と言い、目をそらしたかった。

あんな鷹村さんは見たくない。

カッコ悪いとかそういうことではない。



つらいのだ。



(一歩くんのお母さんや、久美ちゃんの気持ちがわかった気がする・・・。)



はあふれつたう涙をぬぐいながら、そんなことを思った。

大切な人が、大事な人が殴られ、倒れる姿・・・・

そんな姿など誰がみたいだろうか・・・・。


見たくない。


見たくないのだ。




でも、見なくてはいけない。





「っ・・・」

目を背けるのは、鷹村さんに失礼だ。

ここまで必死に頑張って、やっとリングに上がった鷹村さんの努力を
愚弄するのと同じだ。


「鷹村さん・・・頑張って・・・・」


つらくても、泣いても・・・・見届けなくてはいけない・・・・・。







この勝負の行方を・・・・。














続。



2017/11/03...