スーパースターの背負うもの。
02
「って!どさくさにまぎれてお尻触らないでください!!!」
しかし、数分後、案の定な展開になり、静かだった部屋にの怒声が響く。
「チッ・・・んだよ、いいだろケツの一つや二つくらい・・・
減るもんじゃねぇし・・・前祝いだ前祝い。」
にひっペがされた鷹村はそう言うと、チッと、耳をほじくりながら言う。
しかしそこで、お!と、良い事を思いついた!という顔をする。
「そうだ!、貴様俺様が勝ったら、祝いをよこせ。」
「・・・・・・・」
祝いはよこすもんじゃありません。と思いながらもはげんなりした顔で鷹村を見る。
「大体、『鷹村さんの事が大好きですー!』とかぬかしておいて、
それから何もさせねーとはどういうことだ!」
「!」
は一気に身体が凍りつくのを感じた。
「ったく!あれ7月だぞ!?あれからヤらせもしねー、キ・・・」
「うわあああああ!!!!!」
鷹村の言葉をは大声で叫び、耳を塞ぎ、かき消す。
「うるっせぇな!」
の大声に、鷹村は怒鳴る。
「その話はしないでくださいって言ってるでしょ!!!」
「ああ!?」
そう、以前、鷹村に告白のような一方的なお前は俺の物宣言をされ、
その後、鷹村の誕生日にも鷹村さんが『多分』好きです。と、伝えた。
しかし、それ以降、二人に進展はなかった。
もちろん、鷹村はもう次の日から即進展させようとしたが、
鷹村に気持ちを伝えたことによりがそれどころではなく、
同じ空間にいることも耐えられない、眼も合わせられないような状態になり、
鷹村が折れ、何もしねぇからいつもどおりにしてろ!!と、なったのである。
そして現在に至るのだが・・・・。
「ほれ。祝いだ祝い。世界チャンピオンになった記念なんていいだろ〜?
クリスマスも近いし。世界チャンピオン祝いとクリスマスプレゼントだ。ん?」
鷹村はニヤニヤと嫌な笑顔で笑う。
「・・・っ・・・・」
その顔はムカツクが・・・確かに、7月から現在まで、何もないのは申し訳ないと思っている・・・。
よし、ここはひとつ・・・・・。
はぐっと腹に力を入れる。
「そ、そうですね・・・・」
「!」
ダメ元で言っていた悪ノリに、乗り気なの言葉に、鷹村は、真顔になる。
しかし・・・・
「じゃあ・・・・勝ったらお祝いに、ほっぺにちゅーで。」
は、はははは。と笑いながら言った。
「何がほっぺにちゅーだ!てめぇ!!ガキか!!!幼稚園児か!!!」
「ちょ!やめ!!!くるし!!鷹村さん!!!!」
期待した直後に来た、あまりにも低次元な進展のお祝いに、
鷹村は切れの首を絞め、ガクガク揺らし始めた。
「さーん、荷物・・・・って、うわあああ!!鷹村くん何してるの!?」
「や、八木さっ!!たすけ!!!」
「貴様ーーー!!!大事な試合前に何しとるんじゃーーー!!!!」
鷹村に殺される前にはちょうどやってきた八木と会長になんとか助けられたのだった。
それから、鷹村は会長にしこたま怒られ、八木とは売店の売り子で忙しく働き、
一息つくと、一歩の試合になった。
一歩の試合をは入場口からそっと見ていたが、あっという間に一歩の勝利で終わり、
ほっとしたのも束の間、次はいよいよ鷹村の試合。
は、鷹村が心配になり控え室へ戻ると、中からは賑やかな声が聞こえてきた。
「?」
不思議に思いながら中を見ると、中には日本ボクサー界のトップたちがズラリと勢ぞろいしていた。
(うわぁ・・・。)
は中に入るのをためらう。
(ちょっと・・・入るのはやめとこ・・・。)
そう思い、みなが去るのを廊下で待つことにした。
しばらくすると、扉が開き、いかつく身体つきのいい男性たちがぞろぞろと出てくる。
「あ、宮田くんに千堂さん。」
は知った顔を見つけ思わず声をかけた。
「お!ちゃんやんけ〜!元気にしとったか!?」
「はい!」
「久しぶりだな・・・・」
「うん。」
二人は足を止めてくれた。
「・・・いよいよだな・・・」
宮田は瞳をふせていう。
「・・・うん・・・そうだね・・・。」
「なぁ〜に、辛気臭い顔しとんのや!鷹村さんなら大丈夫やろ!」
神妙な面持ちの二人に対し、千堂はいつもの明るい表情で言いながら、宮田の背中をバシバシと叩く。
「やめろ。」
宮田はその手を払いのけると、再びに向き直った。
「でも、あの人ならきっと大丈夫だ。」
「うん!」
宮田の言葉を聞き、不安が消えていく。
じゃあな。と言い、去っていく二人を見送る。
「・・・・・・」
これだけの人たちが陣中見舞いに来たのか・・・と、思うと、
鷹村さん大丈夫かなぁ・・とはまた不安になる。
鷹村を信じていないわけではない。
だが、当の本人も弱気になるほどの相手と初の世界戦なのだ・・・・。
周りが不安になって当たり前だ。
「・・・・・・」
は焦って控え室へと入る。
(わぁ!)
中には熊ではない、鷹のマントを羽織った鷹村がいた。
(かっこいい・・・・)
は思わず心の中でつぶやく。
「ったくよぉ、大げさなんだよゾロゾロ集まりやがって。
俺ぁ、ヘビー級まで6階級制覇する男なんだぞ。」
が、鷹村は相変わらずの悪態をついている。
「・・・・・・」
その様子に少し安心した。
「おも来たか。お前、何やってたんだよ。」
「え、あー・・・いえ、ちょっと。」
宮田というキーワードを試合前に出すのはまずいな・・・と、思い、
は言葉を濁す。
「あー?この俺様の大事な試合の前にクソでもしてたのかー?」
「違いますってば!!!」
は叫ぶ。
いつもの光景に、緊張していた場が和んだ。
「ひとまず全員、部屋から出るぞい。時間まで集中力を高めとけ。」
会長の言葉に、鷹村は、おう。と答える。
そして見慣れたいつものメンバーが、ぞろぞろと控え室から出ようとした、
その時。
「!」
青木が振り返り、鷹村の元へと駆け寄った。
そして、グローブを握り、
「思う存分、暴れてくださいよ!」
と、熱のこもった形相で伝える。
おう。と、鷹村は答えると、二人は拳を重ねた。
次に鷹村の元へ向かったの木村だった。
「俺は何の心配もしてませんから。」
そう言うと、またパンと拳を重ねる。
そして、板垣、猫田、ハチ、一歩の順で、同じように試合前の激励の言葉を伝える。
「おら、お前もだ。」
すると、端で見ていたも、鷹村にグローブでこいこいをされ、呼ばれる。
「え・・・あたしも・・・・ですか?」
はまさか自分もその中に加わるとは思っていなかったので驚いていると。
「早くしろ、時間ねぇんだから。」
鷹村に急かされる。
「は、はい!」
慌てて鷹村の元に駆け寄るが・・・・
「・・・・・」
じっと鷹村を見つめ、見つめられ・・・・。
恥ずかしいし、何を言えばいいのかわからない。
しかも背後ではみんなも見ている。
「っ〜〜〜」
いいや!早く終わらそう!とは思い、息を吸った。
「鷹村さんなら大丈夫です!信じてます!約束は守りますから必ず勝ってください!」
そう言うと、鷹村のさんのグローブに、
これからホークと闘うグローブに、ポンと拳をつけた。
「おう!約束やぶんなよ!」
鷹村は、にしっと笑った。
こうして、WBC世界J・ミドル級、タイトルマッチが、はじまろうとしていた・・・・。
続。
2017/11/03...