視線の先。













(・・・・やべ・・・・また目で追っちゃってる・・・・。)


ドスン!バシン!と重い音が鳴り響くトレーニング室で、
休憩中の木村達也はふいっと視線をそらした。

いけないいけない・・・と、思いながらも、気になってまた見てしまう・・・・



彼女を。







木村がつい目で追ってしまっているもの、
それはこのジムにバイトとして来ているだ。


恋は落ちるもの。


気がつくと木村はのことを見ていることが多かった。
それが何を意味しているかも、もう自覚している。


(あ〜〜〜・・・やべぇなぁ・・・どうすっか・・・・・)


そんな悩みをここ最近、ずっと抱えていた。




彼女が好きだ。


それは紛れもない事実。

だが、問題がある。



それは・・・・・




「もーー!!だから鷹村さんやめてくださいってばーー!!」



の頭をその大きな手で掴み、ぐりぐりと回してご満悦の鷹村守と、
文句は言いながらもどこか嬉しそうな


はたから見たらもう、歴然としているこの状況。


(ひそかな片思い・・・・か。)


片思いで終わるんだろうなー・・・・と、木村はぼんやりと、
胸に重く冷たい物を抱えながら、ふぅっと息をついてうつむく。


(でもま・・・ばれねぇようにはしねぇとな・・・・・)


木村はそう思いながら静かに顔を上げを見た。

にこにこと明るくきゃっきゃと鷹村や青木と話している
彼女が自分の物になれば、自分の彼女になってくれれば、
一緒にどこかに行き、隣で微笑んでくれれば・・・・


そんな来るはずのない楽しげな日々を少し想像して、

木村はまた顔をうつむけた。



のことが好きだと知られればとも、ジム内の雰囲気も悪くなる。

それは一番避けなければならないことだ。


このままでいい。

このまま・・・・仲良く話してくれて、いいお兄さんとして見てくれれば・・・・・




木村はそう思いながらまた顔を上げる。


そしてしばし、少し悲しいまなざしで、彼女を見つめた。














終。


2014/05/16....