宣戦布告。













「板垣くん!これ昨日、忘れてたよ。」

「あ、ありがとうございます!」


板垣が鴨川ジムに入門してしばらくした頃、
板垣は何気なくから忘れ物を渡されが去ったあと、
その忘れ物をじっと見つめる。

「木村さんさんって彼氏いるんですかねぇ?」

「ブッ!」

そして、近くにいた木村にそんなことを聞いた。

「・・・・いねぇと思うけど・・・。」

わかるだろ!!と、自分も想いを寄せているが、
露骨な鷹村の珍しいというか、そんなこともあるんだな。
という、一途な想いの態度を見ているので、
木村含め、色々な人が、鷹村には敵わない・・・というか、
無理だろ・・・と、諦めているのだが、
こいつはわかっていないのだろうか・・・と、
木村は思いながら返事をした。

「そうなんですかぁ〜・・・さんって、
顔とかはふつうですけど、いい人ですよね。
あと、なんかかわいい。」

板垣はにこにこする。
顔がいいので、ニヤニヤにならないのが悔しいな。
と、木村は思いつつ、声をかける。

「おい、お前・・・」

「あ!さ〜ん!」

「あ!・・・ったく。」

俺らの気も知らねぇで・・・顔のいいやつはいいよなぁ・・・。
まぁ、はたして鷹村さんに勝てるかだけどな。

と、木村はなぜか、フフンと、ほくそえんでいた。



それから、板垣のへのアピールは続いた。

「あ、持ちますよ。地下室までですか?」
「あ、うん。ありがとう。」

「買い出し付き合いますー!」
「え!いいよ!」
「いえいえ!」


そんな買い出しの帰り道。


「ふー、たくさん買いましたね。
こんなに買うなら毎回手伝いますから言ってください!」

笑顔で板垣は両手のビニール袋を持ち上げながら笑顔で言う。

「いやー・・・いつもは・・・鷹村さんが来てくれるから。」

ははは。とはすこし照れたように笑う。

「・・・・・・」

へのアピールをはじめて板垣も気づいた。
というか気づいてはいたが。


さんと鷹村さんって付き合ってるんですか?」


「へ!?」


板垣はいつも直球だ。

「いやいや!付き合ってないよ!!!」

「そうなんですかぁ〜?なんか、微妙な雰囲気漂わせてたんで。」

「え・・・そう?」

焦る

「まー、なんか鷹村さんの無理強いって感じですけどね!」

にっこりと安心させるようにほほえむ板垣。

「あー・・・。」

歯切れの悪い返事をしては前を向いてうつむいた。

「・・・・・・。」

そんなを見て、

さん、ボクって結構いい顔してると思うんですよ。」

板垣はそんなことを言い出した。

「え!?あ、うん、そうだね。かっこいいよね。」

「でしょ〜?自分で言うのもなんですけど、結構モテるんです。」

「だろうねぇ〜。」

事実そうなのでは笑いながら返事をする。

さんはボクみたいのタイプじゃないですか?」

「え!?」

再度、驚きの声を上げては板垣を見た。

そこにはキラキラと顔を輝かせた板垣の顔があった。

「・・・・・・・。」

なんて答えよう・・・正直に言っていいのかな・・・。
と、思いつつ何だかめんどくさそうなことになりそうなのでは正直に答えた。


「うーん・・・私、キラキラかっこいい系の男の子には興味ないんだよね・・・。」


ぎこちなく笑いながらはスッパリと言う。


「・・・・・。」


その言葉に、板垣は硬直した。
まさかの返事。
好きな子にはフラれたことのないこのボクが・・・。

「・・・へー、じゃあ、宮田さんとかにも興味ないんですね。めずらしいですね。」

「あ、宮田くんは別格。」

「・・・・・・。」

一応、宮田を確認で出してみたのだがに即答されて、板垣は真顔で言葉をなくした。

「宮田さんは・・・別格・・・・。」

「うん!宮田くんは超かっこいいよ!!昔から知ってるのもあるし、
あー懐かしいなー。今、どうしてるかなー!」

は目をキラキラさせていた。

「じゃあ、宮田さんと付き合えばいいじゃないですか・・・。」

簡単にいじけた板垣が拗ねた顔で横を向きながらそう言うと、

「は!?私と宮田くんが!?無理無理!不釣り合い!!それに・・・」

は言葉を続ける。

「私、今、誰かと付き合うとか考えてないんだよね・・・まぁ、昔からそうだけど・・・。
これ言うと鷹村さん怒るけど、宮田くんはいなくなっちゃったけど、ジムにいると、
皆でわいわいやってすごく楽しいじゃない?なんか、それでいいかなーって。
まぁ、ジムの人たちだけが付き合う人じゃないんだけど・・・。
私は今、ジムで楽しくやれてばそれいいの。」

にっこり笑っては言った。


(あんだけ鷹村さんと毎日いちゃついてるくせに・・・・。)


板垣は納得いかない表情で少しムッとして、黙っていた。
そして顔を上げる。


さん!それはズルいです!男にとっちゃヘビの生殺しですよ!はっきりさせて下さいよね!」

「え!?」





「ボクはさんをボクに夢中にさせてみせます!!!!」





板垣はそう叫ぶと、走って行ってしまった・・・・。



「え・・・・・・。」



残されたは、思いもしない・・・いや、うっすら感じていたことをはっきり言われ、
その場に立ち尽くして、呆然としていた。



ヤバイ・・・この先どうしよう・・・・。




と、思いながら・・・。








終。



2021/05/21...