先生。03













「あ、宮田君。今日宜しくねー。」


「・・・・・・・ああ・・・。」







はジムに来て、既に練習に入ろうとしている宮田にそう告げた。




今日はがジムのバイトの日。
すなわち、今日は練習の後、宮田に勉強を教えてもらえる日だ。
なのではジムにやってきて、
着替える前にすれ違った宮田にそう言った・・・。







「・・・・・・・・・。」




そしてその会話を近くで聞いていた者が一名・・・。










「・・・・・・よぅ、一歩、さっきちゃんが宮田に何か言ってたけどあれなんだ?」


「え?ああ、今日僕とさん、宮田君に勉強教えてもらうんです。」


「・・・どこで・・・。」


「あ、練習終わった後にジムのビデオ見る部屋で。」



「ふーん・・・・・。」






今思えば・・・の知らない所での、一歩の迂闊な発言が・・全ての発端だった・・・。

























「今日の練習は終了じゃ!!ジム閉めるから皆上がれい!」





時は夜。
会長の言葉が入り、今日の練習は終わった。

そして皆、次々とシャワーを浴び、帰路へとついていく・・・。


(やったぁ〜!練習終わった〜!)


はうきうきしながらもう、練習している人はいないジムを
さんまたね〜。」と帰っていく人達に挨拶をしながら
掃除し、片づけをしていた・・。











・・・・・・。」




と、リング周りのモップがけをしているとは声をかけられた。




「あ、宮田君!」



「勉強・・どうすんだ・・・・。」



振り返ったに宮田はふしめがちに言った。


「あ・・・あたしまだ終わらなくてさ・・・これからシャワー室の掃除もしなきゃいけなくて・・・。
あ、一歩君も、もう終わったよね?二人で先にやってて貰える?
一歩君が先に教えてもらってれば、後であたしが行った時にすぐ教えてもらえるし。」


効率いいから・・とは言う。


「部屋の隅に長机と椅子が置いてあると思うからそれ出してて使っててもらえれば・・・
その間に掃除ちゃっちゃか終わらせるんで・・・・・・。」


駄目かな・・・?教えてもらうのに先に二人で用意してやってろつーのはあれかしら・・?
はドキドキしながら宮田の機嫌を伺った・・・。




「・・・・ああ・・分かった・・・幕之内と先にやってる・・・・。」




しかし、以外にもさらりと宮田はそう言い。
スタスタと行ってしまった。


良かった・・・宮田君は案外怖くないのか・・・。


は思い、掃除を進めるのだった・・・・。

















「よっし!終わった!!!」



そしてその数十分後・・・はジムとシャワー室の掃除を終わらせた。

そしては先に事務室へと向かう・・・。






「あ、八木さん。掃除終わりました。これから宮田君に
勉強教わるんですけど・・・何時まで大丈夫ですかね?」



そう、制限時間を聞きに来たのだ。




「あさんご苦労様。時間・・・実は今日早く帰りたくてね・・・。」




と、八木はすまなそうに言った。


「え・・・・。」


は焦る・・が。





「でも、もう会長帰っちゃったから、鍵、スペアキー渡すから僕は帰るけど何時でもいて良いよ。」




と、八木はにっこり笑った。


「え・・八木さん・・・。」




「鍵は次のバイトの時にでも返してよ。勉強ちゃんと教えてもらって、テスト頑張ってね。」



そう言うと八木は帰る支度をした・・・。




「・・・・・・・。」


は八木の良い人加減に改めて感動した。






「バイト辞められちゃったら困るしね。じゃあ、戸締りだけはちゃんと宜しくね。」



「はい!有難う御座います!!!」





そうして八木はいなくなり・・・・は宮田と一歩の待つ、あの部屋へと向かった。






そしてジムには  宮田 一歩 の三人だけとなったのであった・・・・・。



















「八っ木さんは〜良いひっとだ〜♪」


は変な歌を歌いながらるんたるんたと二人が勉強している部屋へと向かう。




そしてはドアを開けた。







「お待たせー、ようやっと掃除終わりまし・・・・。」








「・・・・・・・・・・。」


「あさん、お疲れー。」







すると中には静かな部屋で勉強している二人の姿があった。


「・・・・・・・・・・・・。」


しかしは中の光景に少し焦る・・・。

ジムのいつもビデオを見ている部屋の右隅の方に、
長机を一つ置き、椅子が三つ並べて置いてある。
そのうち左端には一歩が座っており、真ん中の椅子には宮田が座っている・・。




一歩と宮田が並んで座りながら勉強をしているのであった・・・・。





そして、宮田の隣に一つ空いている椅子は、もちろんの為のものである。



「・・・・・・・・・・・・・・。」



そりゃあ教えてもらうには・・・この並び方が一番良いけどさ・・・・。
は思うが・・・。







宮田の横に座るのは・・・何故だかとても緊張する。







しかし、そんな事をまさか言えやしないのでは椅子に座る。






「机の準備有難うーごめんねー手伝えなくて。」



「あ、別に大した事じゃないから平気だよ。」


と、宮田を挟んだ一歩はに言う。




「・・・・・・で、何を教えれば良いんだ・・・。」



しかし、そんな一歩をよそに、宮田は早速勉強の方へと話しを進めた。



「あ、ちょっと待って・・・。」


は鞄の中からノートを取り出す。


「分かんない問題全部書いてきたの、まずこれからー。」


はノートを広げた。
そしてガタッと椅子を座り心地の良いように微妙にずらし、
シャーペンを取り出し、カチカチカチ。と勉強する体制へと入った。



「・・・これか・・・これは考え方の問題だ・・・・。」


と、宮田はの方に身を寄せてのノートに答えが出るまでの式を書き出した。











「良いか?ここはこうなって・・・。」


「うん・・・・。」


「で、ここをこうして・・・。」





と、宮田はさらさらと数式を書いていく・・・。

しかしそんな事よりも・・・・・・・。








(何かかなり至近距離なんですが・・・・・。)








はすぐ隣にいる宮田にどぎまぎしていた・・・・。



何だか、勉強を教えてもらっているのだが、

何だか、宮田がこんなに至近距離にいるとかなり緊張する・・・。






それは宮田が手を動かす度に揺れるさらさらとした前髪や・・。


ふしめがちのどの女も憧れるようなふさふさな睫毛や、そこから見える綺麗な眼のせいか・・。




そもそも全体的に美形な宮田の顔のせいである・・・・・。








(あ〜、やばい・・宮田君可愛い・・・。)





は思わず宮田に見惚れる・・・思わず顔が緩むが・・・何とか持ち応える。








「で、こうなるんだ・・・・・・。」




「・・え、あ・・・・・・・・・・・はい。」





と、宮田にシャーペンでトンとノートを叩かれははっとした。



「えーっと・・・・・・。」



そしてまさか「見惚れてて聞いてませんでした。」などと言えないので
宮田が書いた数式をじっと見つめ・・・・。


「あ!そうか!」


と、必死に理解した。


「わかったわかった!そういうことね!」


は嬉しそうに笑う。



問題が解けたときは何か嬉しい物がこみ上げてくる・・・。







「・・・・・・・・・・・・・・・。」






そして宮田もそんな至近距離なの嬉しそうな顔をしばし見つめていたり・・・・。




「・・・・・・・。」




しかし、はっとしてスッと目線をノートに戻したり・・・。











何にしろ・・・それぞれ二人にとってこの至近距離は


嬉しかったり、嬉しくなかったり・・・な物であった。







続。


2003/10/04....