寒い冬と願う夢。













「宮田くん、外、寒いよ。」


ある冬の日、宮田の住むマンションの部屋で、
は欲しい!と、ねだって無理矢理持ち込んだこたつに入りながら、
ロードワークに出かける宮田の背中に話しかけた。

「・・・寒くても行かなきゃならないだろう・・・・。」

宮田は背を向けたままトントンと、靴を履き終わる。

「いやまぁ、そうなんだけどさ・・・こたつに入ってたほうが減量にならない?」
「今は水分を抜けばいいってもんじゃない。」

ぴしゃりと宮田に言われる。

「はいはい、わかってますよ。筋力とか色々あるもんね。
なんとなく言っただけ・・・・風邪ひかないかなって、心配だったから。」

そう言いながらはみかんを食べる。


は、試合前はさすがに遠慮して、一切、宮田の部屋を訪れないし、会わないが、
試合の前じゃないときは、常に減量しなければならない宮田に遠慮することなく、
いや、多少の遠慮はして、お菓子などは食べず、みかんやフルーツを食べたり、
一緒に食べる食事も少なくしている。


「・・・・行ってくる。」

「はーい、気を付けてね。」

「・・・・ああ。」


そう言うとはサラテと一緒に宮田を見送った。

ため息をついてはサラテを持ち上げて、ひざの上にのせる。


「いつまで頑張るんだろうね・・・こんな寒いのに・・・食べなきゃ体も冷えるだろうに・・・。」


にゃあーと、サラテが鳴いた。

「夢は叶えさせてあげたいけど・・・無理はして欲しくないし、
つらい姿は見たくないなー、やっぱり・・・。」

はサラテを抱えてテレビを見る。


「一つ階級上げれば・・・こんな寒い冬の日には・・・あったかい部屋で、
鍋でも食べて、お酒飲んで、みかんでも食べて、ごろごろできるのにね・・・・。」


は窓の外を見る。


空はどんより曇っていた。



「でも・・・それよりも・・・優先したいことがあるんだよね・・・・ね、サラテ。」



はサラテをなでた。
サラテの体はあたたかい。
にゃあーと、鳴いてごろごろと喉をならし仰向けになった。


「お前が癒してあげるんだよー・・・私でも、なかなか宮田くんは素直にならないから。」


そうつぶやいては少し、さみしそうに笑った。




今年の冬も、寒そうだ。

減量が厳しくなるだろう。





終。



2021/01/11...