れっつアルバイト!01













そこは、学校からの帰り道にあった。






(あ〜・・高二かぁ・・。)


は高校の始業式を終え帰路についていた。

(高二になったら・・・やっぱりそろそろバイトしなきゃね・・・。)

は思う。

高一では学校のことに忙しく、結局できなかった・・。
されど高二になったやらなくてはならないだろう・・。
なぜなら長引くこの不況・・の家は普通・・の
家庭なのだろうがあまり金銭的余裕が無い。
今まではお小遣いを毎月もらっていたが高二にもなってもらうのは・・・
そろそろ自分の遊ぶ金くらい自分で稼ぐ年だろう・・。
家庭の負担もへるだろうし・・。

は考える・・。

にこやかに笑うファーストフード店。
おしゃれなカフェでも良い。
はたまたスーパーのレジ打ち・・。

どんなバイトをしようか・・・。


出来るならば楽で時給の良い仕事を・・・。


誰でも一度はそう考えるだろう。もそのうちの一人だ。



と、耳にバシバシといういつもの音が入ってきた。

(ああ・・もうこんなとこに来ちゃったんだ。)

色々思いを膨らませていると、たまに意識が飛ぶ。
は何時も通るボクシングジムの看板を見上げた。
そこには『鴨川ボクシングジム』の文字。

そしてなんとなくいつも通り、道路側に面している何枚もの窓から
ボクシングしている人達を見ながら通り過ぎようとして・・・。


「!」


はその窓に張られていた張り紙に眼を見張った。




『 アルバイト募集。
  
   夕方から夜にかけて3、4時間。
   部屋の掃除、洗濯等の雑用をしてくれる
   明るく元気な女性を募集しています。
   年齢は問いません。時給、勤務時間応相談。
   気軽にお電話下さい。
      
   鴨川ボクシングジム 
      電話 ××−××××−××××  担当 八木 』





「・・・・・・・・・・・・・。」


これは天のお導きか・・・丁度バイトしようと思っていたら・・・

夕方から夜!ということは高校生でも大丈夫!
年齢不問!女性!
仕事は・・・家事のような雑用!

時給はわからないが・・・これはなかなか良い物件じゃないか・・。

は張り紙を食い入るように見つめる。


しかし・・ボクシングジムの雑用・・・。


はちらっと部屋の中を見る。

バシッ!

ドカッ!

なんだか厳つい顔をした男達がたくさん殴ったり殴られたり・・・。
当たり前だが。

うーん・・これはどうしたものか・・・・・

は唸って考える。

わざわざその場で悩まずとも家へ帰ってから悩めば良い物を、
は張り紙の前で悩み込む・・・・すると。


「君・・もしかしてアルバイト志望?」


「!」


窓をがらっと開けて、黒髪に黒ぶち眼鏡をした優しそうな中年の男性が顔を覗かせた。

「あ!えっと、いや・・アルバイト・・しようかなー・・と・・」


「本当かい!?」

悩んでたんですが。という前にの言葉は遮られ、
優しそうな男の人は嬉しそうに声を上げた。

「え、いや・・」

「嬉しいな〜。前の人が急にやめちゃってね、待ってたんだよー。」

の言葉は感極まっている中年の男性に、ことごとく打ち消され、話はどんどん進んで行く。

「君、履歴書持ってる?」

「え・・いや、持ってないです・・。」

「ああ、そうだよね。急にあるわけないよね。
でも、とりあえず面接だけでもしていかないかい?」

「あ・・はぁ・・。」

なんだかテンションの高い中年の男性に押され、
は話の流れからあれよあれよと面接を受ける事になった。

「じゃあ、そっちから入って入って!」

そういうと、男性は中へと引っ込んで行く。


「・・・・・・・・・・。」


なんかえらいことになったな・・・・。
は冷や汗だらだらである。


(まぁ・・・とりあえず話し聞くだけ聞いてみようか・・一応考えてた訳だし・・)


は思いながら、とりあえずドアから入ろうとしたのだが・・・


「・・・・・・・」


ドアを開けてからの一歩が踏み出せない。
は硬直していた。
何に?
中の空気にだ。

中には男しかいず。
厳ついごつい男達が、汗をかきながらそれぞれ物凄い顔で練習している・・。
向こうでは打ち合っている・・。
バシン!ドスン!という聞きなれない音が部屋中を占めておりはなんだか萎縮してしまう。

さっきの人は・・・と、探すと向こうで誰かと話していて、
そして窓の方からこっちへとやってきた。
がほっと安心していると・・・


「おー、嬢ちゃん何の用だー?」


突然、目の前に見上げないと顔が見えない位背の高い、今時リーゼントヘアーをした大男が現れた。

「・・え・・・・」

が思わず硬直して見上げていると・・

「・・・高校生はなぁ〜・・ちと範囲外なんだが・・まぁいいか。
なぁ、俺様と今からどっか行かねぇか?」

と、なんだかよく分からない事を言いながら更に近寄ってきた。

「あ・・あの・・」

が後退りながら言葉を返そうとすると・・


「まーた、鷹村さんナンパしてるよ〜」

「そういう事してっから、バイトの子が逃げちゃうんすよ・・」


鷹村と呼ばれる人の後ろに、四角い顔をした五分刈りの男の人と、
こっちは結構、整った顔立ちの、爽やかそうな黒髪の男の人が立っていた。

「なんだと〜・・てめーら・・・」


と、鷹村と呼ばれる人はその二人を振り返り睨み付ける。
そんな光景を何がなんだか、呆然としながら見ていると・・


「ああ!鷹村君!何やってんの!!!」


あの眼鏡をかけた中年の男性がやってきた。
ああ!との顔が一気に安堵の顔になる。

「なんだよ!八木ちゃんまで、そういうこと言うのかよ!」

「いや・・違うけど・・」

眼鏡の中年の男性は八木と言うらしい・・。

「あ、待たせちゃってごめんね、事務室で話そうか。」

と、八木と呼ばれる人は慌ててに振り向き、急いで奥の部屋へと促がした。







続。


03/04/09...