乱世拳闘物語。05
門があり、中に通された場所は、寺だった。
鴨川藩・・・宮田様のちゃんとした陣地というのか・・・
にはあまり知識はないが、ちゃんと戦うために作られた場所なのかと思ったが、中は寺だった。
そういえば、寺を借りるとか聞いたようなこともある・・・と、思いながら、
鷹村にがっしりと肩を抱かれ宮田の後を歩いていると・・・
「女だ・・・」
「女・・・」
「でも鷹村の女か・・・・」
と、ひそひそと声が聞こえてきた。
ちら見すると、じっとこちらを見つめる嫌な目を見つけて、
パッと目をそらし、鷹村の方に身を寄せた。
そうか・・・ここは戦場・・・男しかいない・・・・そんな所に、女一人・・・。
(だから鷹村さん俺の女って・・・この人気が利くんだか利かないんだか・・・ほんとありがとうございます・・・。)
は心の中で感謝した。
それから二人は宮田に続いて歩いていき、寺の中の小さな一室へと通された。
「宮田様・・・お前は!鷹村ではないか!!」
「あん?」
すると、宮田の側近が近寄ってきたかと思うと、鷹村を見て、そう叫んだ。
(なんでみんな鷹村さんのことを知ってるんだろう・・・。)
はここで違和感に感じていたものを、確かな疑問に変えた。
鷹村はと共に別の世界からやってきたのに、
皆、鷹村を知っている・・・。
(そういえば、さっき『ぞくの鷹村』って・・・ぞく・・・賊・・・?山賊とかの?)
そんなことを考えていると、
「なんだぁ?てめぇーだれだ。」
鷹村がたれてくる血をぬぐいながらそんな言葉を返す。
「宮田様!これは一体どういうことですか!」
「外で暴れていたのはこいつだった・・・鷹村っぽいが・・・
なんだかあの鷹村とは少し違うようだ・・・でも、強さは同じ様でな。
行く当てがないから雇ってくれとのことだ・・・・。」
「はぁ?どういう・・・しかしまぁ、鷹村が味方になればいい戦力になりますが・・・。」
「でも、いつ裏切るかわからんしな・・・皆を集めろ。」
「はっ!」
なんだか大事になってきたな・・・とは思う。
「しみったれた寺だなー。しかも男ばっかじゃねーか。
殿様だっつーから、キンキラキンでもっと女はべらかしてるのかと思ったぜ。」
しかし、のんきに鷹村はそんなことを言って部屋の中を見ている。
「女をはべらかしてるのはお前だろう。いつも。今も。
まぁ、せいぜい、その女から目を離さないことだな・・・・。
隙あらば・・・なんてやつはここにはごまんといるからな・・・。」
「・・・・・・。」
はぞっとした。
「わーってるよ。」
べーっと鷹村は舌を出す。
「・・・俺はお前たちのことを話し合ってくる。
その間に傷の手当をするように言っておくから、真っ赤な顔をなんとかしとけ。」
「おー、あんがとな。あと、お前がここにおいてくれなかったら青木んとこ行くからな。」
「っ・・・・。」
「ケケケ。」
(鷹村さんって、頭いいのか悪いのかほんとわかんないよなぁ・・・・。)
悪魔のように笑っている鷹村を見ながら、
今日何度目かのことを思う・・・・。
「はぁ・・・」
宮田様は宮田くんらしく、ため息をついて行ってしまった。
「はぁーあ!」
すると、ドカッと鷹村は、床に座る。
も小さい一室の畳の上に、なぜか正座で座る。
正直、無意識に緊張してた。色々なことで。
「あー・・・喧嘩は久々だったから、やっぱボクシングとはちげーな。
しかも刃物持ってたからなかなか楽しかったぜ。」
鷹村は袖で血をぬぐう。そろそろ血も乾いてきた。
「ああ!鷹村さん、血、乱暴に拭っちゃダメですよ!
今、手当してくれるらしいですから!」
「これくらいツバつけときゃ治るつーの。それよりお前・・・」
「はい?」
正座を崩して鷹村に近寄ったに鷹村が顔を近づける。
「ここではマジ気をつけろよ。
オレ様から絶対、何があっても、離れんじゃねぇ。
離れたら速攻、そこらへんのやつにヤられるからな。」
「・・・・・・・。」
は真顔になった。
だが、それが真実だった。
「・・・・はい・・・気を付けます・・・・。」
そして小さく頷きながら真顔で返事した。
「まったく!いくら何か月もセックスできないからって、
女ならこんなやつでもいいなんてなぁ!人間追いつめられると怖いぜ!」
鷹村はガハハ!と笑いながら打って変わっての頭をぐしゃぐしゃと
かき混ぜながら笑う。
しかしにはわかっていた・・・・。
それが鷹村なりのやさしさだということに・・・。
「そうですね・・・もっといい女もう一人いたらよかったのにな!」
「だな!」
なので、そう言って、二人で笑ったのだった。
続。
2023/02/16...