お家へ行こう!
〜鷹村さん編〜
02
「やっぱり・・まずったかも・・・。」
はあるアパートの一室の窓を見上げてそうつぶやいた・・。
するとガラッとその窓が開いた。
「おう!!早いじゃねぇか、上がって来い!」
そう・・このアパートは鷹村の住んでいるアパートである・・・。
鷹村の誘いに最初は理性を保ち拒んでいただったが、
チャンピオンベルトと試合ビデオの山に理性を忘れ
『鷹村の』部屋に『一人で』行くことになってしまった・・。
はたしてこれからどうなるのか・・・・。
「はぁ・・きちゃったよ・・・。」
は少しうなだれる。
あの場では浮かれてオッケイ!と返事をしたものの、
日を置いてよく考えて見れば自分はかなり危ない事をしているような・・。
と、思えてきたのだ。
しかし、すっぽかすわけにもいかず・・・。
アパートの前で悩んでいたら野性の勘で見つかってしまった。
そして覚悟を決めて扉の前まで来たのだが・・・。
(自惚れだけど・・おそ、襲われたりとかしないよね・・そうだよ・・まさか!
だって、よく顔あわせる間柄だし!会長にもきつく言われてるし!
それに鷹村さんだって鷹村さんよ!?)
とは半分わけのわからない自分を励ます言葉を自分にかけてやった。
そのお蔭か少し重い気分も晴れてきた。
そして扉をノックする。
コンコン。
すると中から「おー入れやー。」という声が聞こえてきた。
いざ出陣!
は扉を開けた。
「お邪魔しまー・・・す。」
そして少し唖然とした。
この散らかりように。
台所さながらワンルームの畳の部屋もあちらこちらに物が散乱している。
その中に鷹村は座っていた。
「・・・お邪魔します。鷹村さん。」
は出来ればやはり入りたくなかった。
ていうか今からこれをあたしが片付けるの!?
と、焦ってきた。
「おー、よく来たなー。」
しかし、そんな事を思っているとはつゆ知らず、
鷹村は結構、上機嫌でこいこいと手招きしを部屋へと通した。
「・・・散らかってますねぇ・・。」
はバッグをテーブルの横に置いて行った。
「ああ?そうか?これでも片付いてる方だぜ。」
鷹村はさらっと凄いことを言った。
さいですか・・とは心の中でつぶやいた。
そして本題に入る。
「鷹村さん・・ベルトとビデオは・・?」
そう、それが目的なのだから。
「あー・・押入れのどこかにあんじゃねぇか?」
鷹村は適当に答える。
出しといてくれてもいいのに・・。
とは思うが、鷹村はそんな気の効く人ではないことを知っている。
「開けていいですか?」
は荷物を置き、立ったままだった為、
そのまま押入れに近づき押入れを指差して聞いた。
「ん?ああ。」
「じゃあ、あけまー・・・す・・」
とは押入れの取っ手に手をかけ、押入れを・・・開けた。
そして眼の前に現われたのは・・・・。
「うわぁあ!!!」
ズドドドドド!!!!!!
黒い固まりだった。
「な、何これぇ・・。」
押入れから出てきたものに押し倒され、畳に倒れ込んだは
なだれてきた物に負け、つぶっていた眼を開けた。
そしてそこには、ほとんど裸体の金髪のお姉さんがセクシーポーズをとっていた。
「ひぃあ!!」
は赤面して眼をそらす。
が、そらした方には・・・今度は日本の女の子がぎりぎりな格好をした表紙の本が・・。
そう、黒い固まりはエロ本の山だった・・・。
「鷹村さんーーーー!!!」
は真っ赤になって涙目になりながら叫んだ。
「ああ、そこに入れといたんだよ、わりぃなぁ。」
鷹村はどっこいしょ。と立ち上がりの上からエロ本をはらった。
そしてこんなエロ本で真っ赤になってるを
にたり。と何か考えている顔で微笑んでいたりした。
「もう良いですよ!!片付けてからベルトとビデオ見ます!エロ本全部捨てて良いですか!?」
はぶちきれてそう叫ぶ。
「ああ?駄目に決まってんだろ。固めて置いとけ。」
が、鷹村はそう言った。
そうして先の見えない掃除が始まった。
まずは山のようにばら撒かれたエロ本を重ねて押入れに入れる作業。
そしてそのついでに押入れの掃除。
「あ!あった!」
そこでは無事ベルトとビデオも見つけることが出来た。
だがはとりあえず別の場所に置き確保し、掃除を続けた。
偉いであった。
そして押入れの整理が終わると今度は散らかった部屋。
服やらまたもやエロ本やら散乱しているのを
服は洗濯物のところへ、エロ本は最近のらしいのでまとめて部屋の隅へ・・。
もう、その頃にはエロ本の表紙にも慣れてきたがいた・・。
そして次は台所・・。
ラーメンか何か作りっぱなしの物が異臭を放している・・。
「じゃあ・・あたし台所片付けますから・・鷹村さん洗濯してもらえますか?」
今までは二人で部屋を片付けていたが、台所は一人で良さそうなので、
は鷹村にそう言った。
「ああ〜?めんどくせぇなぁ・・・。」
が、鷹村はそうつぶやく。
「洗濯くらい洗濯機回すだけでしょう!やってください!!」
と、さすがのも切れた。
第一何故が鷹村の部屋の掃除をしているのか。
それなのに本人は洗濯さえもめんどくさいと・・たった少量なのに・・。
(あ〜・・終わらない終わらない・・。)
とは台所に手を付け始めた。
まず、大きな鍋を洗って。
食器を洗って。
周りを拭いて。
調味料をちゃんと揃えて置いて・・・。
と、やっているうちにあっという間に時は過ぎた。
やりだすととまらないがはっと気づくと、
窓の外は暗く、部屋を見ると鷹村は暇そうにテレビを見ていた・・・。
(洗濯・・終わったのかな・・・。)
はそんな事を思いながら台所の掃除の最後の仕上げをする。
そしてが顔を前に戻すと、鷹村がちらっとを見た。
セーラー服では無いが、制服姿で台所に立っている少女の後姿・・。
「・・・・・・。」
鷹村はにぃ・・と人の悪そうな笑みを浮かべる・・。
さっきから制服姿でばたばたと動き回るを見て鷹村はにやついていた・・。
なんとも言えない良い物が男にはあるのだ・・。
さて・・これからどうしようかねぇ・・・。
と、鷹村が企んでいることも知らず・・・はせっせと掃除をしていた・・。
あわれなだった・・。
「ふぅ・・終わった・・・。」
そしてようやく終わった綺麗な台所を見て、達成感の喜びの一息をついて振り返ると・・。
「・・・・鷹村・・さ・・・ん・・・。」
「あ?」
部屋がまた散らかっていた・・・・。
エロ本が・・エロ本が散乱していたのだ。
鷹村はねっころがって違うエロ本を見ている、その周りにわんさかエロ本が・・・。
「鷹村さん読み終わったらちゃんと元の場所に戻してくださいーーー!!!」
きー!とはヒステリっぽく叫んだ。
もういい加減にしないとも切れる。
「ああ・・わりぃな・・。」
しかし、その一言で、鷹村は動こうとしない・・。
「はぁ・・。」
はもうあきらめた。
とりあえず、自分がいるときだけは自分の気がすむように自分で綺麗にしよう。
はそう思って膝をつき、片手を地面に片手はエロ本掴みに・・と
はいつくばう格好で鷹村の周りのエロ本を収集し始めた。
(何でこうなんかなー・・鷹村さん・・闘う姿は格好良いのになぁ・・。)
はそんなことを思ってひざをついて拾い集めていた・・・。
その格好がかなりマズイということに気づかずに・・・。
「・・・・・。」
鷹村は見ていた。
が本を収集する姿を。
制服のスカートで膝をついてはいつくばう感じに動いているを。
そう。
制服のスカートで。
は別にウエストで思い切り折ったり裾を切ったりしてミニスカートにしているわけじゃない。
だけど、それなりに一応短い。
はい、皆さんもご存知のように、そんなスカートではいつくばったらどうなるか・・・・・・。
それは鷹村の顔を見れば分かる。
「・・・・・・・。」
もう、文では言い表せない程の言うなればにやけ顔をしていた。
怖くて震えが来るほどの何かこれから起こすという企み顔だった。
無防備に、一応、中は見えてないが見えそうで見えない風なも悪かったのだ・・・。
「なぁ・・・。」
「はーい?」
寝そべっている鷹村が、鷹村に背を斜めに向けるようにエロ本を片付けているに声をかけた。
はエロ本をまとめながら振り返らず答える。
「晩飯食べてくのか?」
「あ、はい。何か美味しいものを奢ってもらいます。」
は嫌味っぽく言う。
「そうか・・じゃあ遅くなっても良いんだな・・。」
「あー・・友達の家でご飯食べてくるって親に言いましたからね。」
「そうか・・・。」
「なら平気だな。」
最後の言葉がの耳元で聞こえた。
「・・・・・・・・・。」
は怖くて振り向くことが出来なかった・・しかし・・目の前の
片付けていたエロ本を握り締めて恐る恐る振り返る・・。
するとそこには・・・・。
「にひ。」
左肩のすぐ後ろに鷹村のドアップがあった。
(やっぱりなったか!最悪の事態!!)
は心の中で叫んでいた。
は、ばっ!と身体を反転させ、背中に壁、前にエロ本を構え、前に鷹村という図式を取った。
「何がですか?鷹村さん。」
は、あははははー。と笑う。
「何がってナニがよ。」
鷹村はが目の前にかざしたエロ本からどんどん近づいてきた。
「何って何ですか?」
「何ってナニよ。」
鷹村はどんどんどんどん近づいてきて、
は壁に押し付けられる。
「・・・・・・。」
顔を横に反らしていたはちらっと鷹村を見る。
鷹村の顔はに〜っと笑っていて・・・
本気だった。
(ひーーー!!何なのよーーー!!誰か!誰でも良い!!助けてーーーー!!!)
貞操の危機だ!!!
真面目に誰か助けてくれ!!!
そんな叶うはずの無い願いをは心の中で叫んだ。
が、そんなものどうにもなるわけなく・・。
「おらよっと・・。」
「うわっ!」
という言葉と共には引っ張られ畳の上に仰向けにされた。
もちろん・・見上げればそこには鷹村が覆いかぶさっている。
巨大な影が・・・そう巨大な・・・・。
は冗談だと思っていたが、だんだん
鷹村が本気そうで怖くなってきた・・今にも震えだしそうだ。
誰か助けてくれ、そんな事を何度も何度も心の中でつぶやく。
そして何十回目の時だった・・。
「鷹村さーーん!お邪魔しまーす!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
鷹村とは顔を合わせる。
そして首を横に向き、玄関を見ると・・・。
「うわぁ!!」
そこには一歩がいた。
「一歩くーーーーーん!!!」
はダッ!と起き上がり、一歩に猪突猛進、抱きついた。
「た!さん!?」
一歩はえ!え!?と焦っていると・・。
「おや、どうしたちゃん。」
「あれー、何でここにがいるんだー?」
一歩の後から青木と木村が入ってきた。
そしてチッと舌打ちする鷹村との状況から
なんとか間に合ったみたいだな・・・。
と、ほっと胸を撫で下ろした青木と木村だった。
「鷹村さん!どういうことですか!鷹村さんが晩御飯
ご馳走してくれるって言うから来たのに!」
と、一歩は叫ぶ。
「ああ〜?」
鷹村は邪魔された苛立ちと、約束した覚えの無いことを言われ言い返す。
「!」
そしてはっと青木と木村を見た。
二人は、バッと顔をそらしたのだった・・・。
てめぇらか・・・。
と鷹村は言おうとしたが、さて、ここからの反撃が始まる。
こんだけ味方がいれば怖いものは無い!
いや・・やはり暴走した鷹村は怖いが・・・。
まぁ、とりあえずはキッ!と鷹村を睨み付けた。
「鷹村さん!約束通り、夕飯奢ってもらいますからね!」
「ああ〜?」
「もちろん皆も一緒に!」
「あ!?なんでだよ!」
「当たり前でしょ!あんなことしておいて代償は高いですよ!!!」
「あんなこと!?ど、どうしたのさん!!」
と、そんな言葉をギャンギャンと言いながら、鷹村はこの後、
この付近ではちょっと高めな焼肉屋で四人分の晩御飯代を払わされたとかなんとか・・・。
終。
2003/06/30....