お家へ行こう!
〜千堂さん編〜
03
「おう、帰ったでー。」
「ただいまですー。」
と、千堂とは千堂家の駄菓子屋の入口をくぐった。
はほぼ初対面のしかも今始めて上がる家なのにただいまーと言う。
それは大阪の下町の、溢れる人情にさっきから何度も触れているせいで、
何だか千堂の家が自分の家のような・・・・そんな親近感がわいてしまうのだ・・・。
「おお、おかえり。もうすぐ夕飯じゃ、すこうしまっとれ。」
千堂の祖母は台所から顔を覗かせて言った。
「お嬢さんも食べていくやろ?」
そしてに聞く。
「あ!いえ!!そんなご飯なんて・・!」
とは言うが
「えーやん食べてけば。」
千堂は靴を脱ぎ、家に上がりながら言った。
「そやそや、いつもこいつと二人で寂しいもんやからのー。
そら、お嬢さん上がってや。」
おばあちゃんはいつまでも駄菓子屋と家の境に立っているを中へと促した。
「あ、はい!」
と、とりあえず家の中へと入っただが・・・・・。
居間のような部屋でしばし立ち尽くした。
やっぱり親近感がわいたと言っても人の家である。
自分がどう行動したら良いのか・・・少し戸惑っている・・・。
「ん?何ぼけっとしてんや、はよこっち来い。」
と、千堂はを自分の部屋へと促した。
そうそう、本とビデオを見に来たのである。
それを思い出しは千堂の部屋へ行こうとするが
自分が持っている物達を思い出した。
湿ったタオルに湿った制服・・・・・・・。
これどうしよう・・・タオルはおばあさんに渡して制服は・・・。
と考えていると・・・。
「ああ、気ぃきかんで悪いなぁ、タオル渡しぃや、
あと制服は今ハンガー持ってくるさかい、かけておいたら乾くやろ。
ストーブ焚いとるし。」
と、おばあさんが声をかけてくれた。
「あ、すいません。有難う御座います。」
はおばあさんにお礼を言う。
「何しとんのやー?」
と、千堂が自分の部屋から顔を覗かせる。
「制服濡れてるから今おばあさんがハンガー持ってきてくれるから制服干すの。」
がそう言うと、そか・・と千堂は顔を引っ込めた。
「これでええやろ。」
「はい、有難う御座います。」
そして制服を鴨居にかけ終えてはおばあさんにお礼を言う。
そしてじゃあ・・と千堂の部屋へと向かった・・・。
「千堂さー・・・・・・」
とは千堂の部屋を覗いて言葉を詰まらせた・・・・。
なんというか・・・・。
まぁ、男の部屋だから仕方ないけど・・・。
せめてさぁ・・・・布団くらいたたもうよ・・・・。
という布団は敷きっぱなしの服はそこいらに投げ飛ばされ
雑誌もそこいらにばら撒かれビデオやらなにやら・・・
とにかく見事に散らかった部屋だった・・・・・。
「あ?終わったんか?」
がやってきて突っ立っているのを見て、
千堂は万年床そうな布団の上に座りながら雑誌から顔を上げ、
に声をかけた。
「千堂さん・・・・・・片付けましょう!!!」
「は?」
「はー・・・終わったー・・・・・。」
は掛け布団の上にボスンとうつ伏せた。
「ご苦労さーん。」
と、千堂はまだ雑誌を見ながら布団の上に座っている・・・。
何故なら千堂は片づけを手伝ってないから。
片付けましょう。とが言い出した後、
千堂はべつにええやん・・と言ったががどうしても片付けると言うので
じゃあ勝手にやりぃ。と一人で片付けることになった・・・。
片付けると言っても散らばってる物を並べて置いたり
洗濯物は洗濯物置き場へ持っていったりとそんなことをしただけである。
しかし、それでも部屋は随分すっきりした。
そしては片付け終わり、風呂に入って片付けて、
なんだか眠くなりボスンと掛け布団の上にダイブした。
が・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
よく考えるとこの状況・・・・・。
とは思った。
一枚の一般的な長さの布団の向かって右側に千堂が座り、
左側にが丸めて置いてある掛け布団の上にダイブして寝っころがっているのだ・・・・・。
別に片付けて開いたスペースに座れば良いものを・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・。」
でも、布団は心地よかった・・・。
ついうとうとして眼をつぶる・・・・・。
「!」
そしてはっと眼を開ける。
(何、人んちの布団で寝てんのよ!!!非常識極まりないじゃない!!!)
とは思い顔を上げ、起き上がろうとするが・・・・・。
布団が心地良い・・・・・。
これはもうあれだ・・・・。
は思った。
「千堂さん・・・・・。」
「何や?」
千堂はが布団で寝ている事を別に気にしてはいないようだ・・・。
だからは言った。
「眠い・・・・・・・・・・・・・。」
「は?」
千堂はを見る。
「・・・・・・・。」
は掛け布団から半分顔を出し千堂に、あは。と笑った。
「眠いよ〜〜千堂さん〜〜!この布団で寝てもいい〜〜?」
「あ、あんなぁ・・お前・・・・。」
人んち来て、しかも男の部屋来て男の布団で寝る女がいるか・・・。
と、流石の千堂もの言葉に呆れた。
実はさっきから千堂もドキドキしていたのである。
別に変な気を起こしていたわけじゃないが、
自分の布団に他人、しかも女が寝ているというのは変な気分である・・・。
しかも至近距離・・・・・・・・千堂は現役高校生である。
ドキドキしない方がおかしい・・・。
そしてそんな事を思っていたら今度はこの女は寝かせろ。
と言い出した・・・・・・・。
千堂は・・・・・・・・・・。
(まぁええか・・・。)
雨に打たれて風呂に入れば誰でも眠たくなるだろう・・・。
しかも部屋片付けたしなぁ・・・・。
まぁ、部屋片付けてくれたお礼や。
と、千堂は承諾することにした。
「あーあー、わかった。この布団で寝ろ。わいはあっち行って本読んどるから・・・。」
頭をぼりぼりとかきながら、千堂は立ち上がった。
流石に寝ている女の側にいるわけにはいかない・・・。
寝ている方も近くに人がいちゃ寝れないだろうし・・・。
と、思い千堂は部屋を出てく。
「わーい!有難う千堂さん!しばらくしたら起きるから、あ、でも夕飯出来たら起こしてね。」
はもう遠慮もへったくれもない。
「おう・・・・。」
そう言うと千堂はパタン。と部屋の戸を閉め出て行った・・・・。
(うわーい、寝れる〜!)
とは枕をぽんぽんと叩き、掛け布団をばさっと持ち上げ、
本格的に寝に入ろうとした。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
隣の部屋からテレビの音が聞こえる・・・・。
はそんな事を思いながら眼を閉じ、もぞもぞと布団を顔まで上げた。
そしてうつらうつらと寝に入る・・・・・・。
千堂の布団は何故か心地よかった・・・。
何が心地よいのだろう・・・。
別に普通の布団で、高級布団なわけでもなし・・・。
でも何か・・・・・・・。
(あ、千堂さんの匂いだ・・・・・・)
とは心地よい物の正体に気付いた。
布団には千堂の香りが充満していた・・・。
「ふふ・・・・・。」
何だかは嬉しくなってきた。
千堂の香りは暖かく・・・・優しく・・・とても良い香りだったのだ・・・。
そしては眠りにつく・・・・千堂の香りに包まれながら・・・・・・・。
続。
2003/11/26....