お家へ行こう!
〜千堂さんの場合〜
02












「帰ったでー。」


「おう、おかえり武・・・・・。」


「こ、こんにちは・・・・・・・・。」





ここは千堂の家、駄菓子屋の入り口。

そこには・・・・・。




雨にずぶ濡れな二人がいた・・・・・・・・。











「おやまぁ、どないしてん、お二人さん・・・・
それにそちらのべっぴんさんはどちらさんや?」




と、千堂の祖母は言った。



「え!?べっぴんって・・!?」



が焦っていると・・。


「あー・・こいつは学校とジムで一緒のやつや。」


と、千堂が答えた。
千堂と祖母はの話など聞いていない・・・。



「ちょお、用あって家きたんやけど・・・・・・。」







二人はずぶ濡れ・・・・。








「そんなんで家いれへんで!銭湯行ってき!」





と、ばあちゃんの活が飛んだ。


「おー・・わいは行くんはええんやけど・・・・。」


千堂はを見た。


「あ・・・・あたし・・・・。」


はあたしはどうしましょうか・・・。と焦る。

と、千堂の祖母が・・・。



「そちらさんも行ってきなはれ。タオル貸してやるさかい、服も武士のやつ貸してやれば・・。」



と、祖母が言いかけたところで



「あ・・でも・・・・・・。」



が苦笑いした。





「なんや・・?」


千堂はに聞く。


「いや・・服がぬれてて・・ね・・。」


は言うが


「だからわいのを・・・・。」


「いやだから・・・・。」


「?」


千堂はが何を言っているか言いたいのかわからなかった。
そんなところへ・・・・。



「武士、お前は服脱いでタオルと服持ってき。」



ばあちゃんが口を挟んだ。



「あ?お、おう。」



と、千堂はそう言うと家の中へと入って行った。







「・・・・・・あ、あの・・・。」



と千堂の祖母の二人きりになりがあー・・と気まずそうに何かを言おうとした時・・・。




「・・・下着が濡れとるんやろ?」



と、千堂の祖母が愛猫を撫でながら言った。


「あ、はい!」


は即座に答える。



「銭湯の番台が友達やさかい、乾かしてもらうよう頼んどくから脱いだら渡し。」



そしておばあちゃんはにっこりとに微笑んだ。




「あ、ありがとうございます!」



そしてもほっとしたように微笑んだ。




「おー持ってきたでー。」



と、千堂がドカドカと歩きながらやってきた。





「あ、千堂さ・・・・・・」


はやってきた千堂を見てしばし固まる・・・。





千堂は・・・濡れた学らんを脱ぎ、濡れたズボンも脱ぎ、トランクスとTシャツ姿だった・・・・・。





「せ、千堂さん・・・・・。」


ここで普通なら「きゃー!」とか言うであろうが、
は家で父や兄弟で見慣れているのもあり、
苦笑い・・・・というか少し美味しい・・とか思っていたり・・・。

Tシャツとトランクス姿の千堂は何だか少し可愛かった・・・・。


が。






「たーけしーーーー!!」






ばあちゃんの活が飛んだ。


















そしてその後、千堂は「若い娘はんの前で・・・」と、延々と説教された後、
二人は銭湯へと向かった。



「あはは、おばあさん楽しい人ですね〜。」


は銭湯への道を歩きながら濡れた制服でタオルと千堂の服、着替えを持ち言う。



「楽しかないわ、ものごっつ叫びよって。」



と、普段着用のジャージを着て、タオルやらなにやら銭湯道具を持った千堂は言う。







「でも良い人ですよ・・。」





は声のトーンを少し落としてしみじみと言った。




「まぁ・・な。」



千堂はそんなを見てぽりぽりと頬をかきながら言った。




「あ、ついた!」



そして銭湯の入り口にたどり着いた二人。

銭湯独特の匂いがして、のれんがかかり、見るからに定番な銭湯である。


「わー!あたし銭湯久しぶり!」


は少しはしゃぎだした。


「せなんか?」


千堂は聞く。


「はい!千堂さんはいつも銭湯ですか?」

「あー風呂ないし・・。」

「へー、良いなぁ!」



という会話をしながら二人は下駄箱に靴を入れて木の鍵を取る。

そして男女に分かれるドアを開けた。






「ちわー。」




この銭湯はまだ昔ながらで、男湯と女湯を挟んで番台が立っていた。

そして入り口から入った二人と千堂は番台を挟んで向かい合う。


「おお、ロッキー、来たんか。」


番台の人は千堂のおばあさんに似たおばあさんだった。
これまたおっとりとしている。


「そっちの女の分もな。」


と、千堂はお金を置いた。


「あ・・・・。」


自分の分は自分で払いますよ・・とが言おうとするが・・・。





「おお何やロッキー、女出来たんか。」




と、また始まった。






「ちゃうわ!」

「違います!!」





二人は、があ!と言い放つ。




「何や違うのかいな・・・・・。」




番台のおばあさんは少しつまらなそう・・・・。



「ええ、ただの友達です。」


は言う。


「せやせや。ほな、わいは入るで。」


そして千堂も続けて言うと、さっさと中へと入って行った。


「はいよー。」


そして番台のおばあさんは答える・・。








「あ、あの・・。」




そしてはおずおずと、下着の件について話を切り出そうとした・・。


「ああ、さっき電話が来て話はきいとるよ、あとでぬいだら下着渡しや。」


おずおずしたにおばあさんはにっこりと優しく微笑みそう言ってくれた。




「・・・・・はい!」




は何だかあったかい気持ちになった。
















「ふは〜。」



その後下着を渡し、体を洗い湯船に入った


ふー、と息をつく。と。





「おうロッキー!久しぶりやなぁ!元気しとるか!」




男湯から会話が聞こえて来た。


「おうおっちゃん!元気しとるでー!」


と、千堂の声も銭湯中に響く・・・。



声大きいよ・・・・。



が思っていると・・・・。







「何や女連れてるみたいやないか!」







と、何処の誰だか知らない顔も知らないおじさんが言い出した。




「あー?ちゃうわちゃうわ女やあらへん。」

「そんな事いいよってほんまはどうなん?良い女なん?」

「だからちゃういうてるやろ・・。」


「胸あるんか?」








「ぶっ!」






は湯船につけていた口を思いっきりふいた。


(何つー会話大声でしてんのよ!!あたしに丸聞こえじゃない!!!)


は怒り心頭。

しかしそんなこと思っていると・・・・。






「あー・・・・・・」





と、千堂の声が聞こえた。







「千堂さん!変な会話しないで下さいよ!!」






は千堂が何か言う前に男湯に向かって叫んだ。



「おー、聞こえておったか!悪いのー姉ちゃん!」


と、おじさんの声が聞こえてきた。



「すまんすまん!」



千堂も、がははと笑った。



まったく・・とは湯船に顔をつけるが・・・・。




この壁の向こうで今度は小声で二人で話しているんじゃなかろうかと、
苛立ちを隠せなかった・・・・・・・。















「ふぅ〜・・・・。」


そして湯船から上がった


体を拭き、バスタオルを体に巻きつけると、下着を貰いに番台へと向かった。





「あ、おばあさん下着・・・・・」



が言いかけた時・・・・。






「せな、おばちゃんまた・・・・・。」






千堂と眼が合った。



そう、番台の向こうとこちらでばたりと合った。





「あ・・・・・千堂さんもう上がるんですかー?早いですね。」



はバスタオル一枚でなんとなく恥ずかしいながらも
見えやしないだろうと思い、話をするが・・・・・。



「お・・・おう・・・。」


千堂の顔は徐々に赤くなっていった。


それは何故か。



それは番台の高さにある。



番台の高さは少し高めになっており、千堂から見るとは肩から上しか見えず、
まるで裸体・・・・・・・のように見えるのである。

そんなことは無いが、タオルくらい巻いているだろうと思うが、



白く透き通った肩から胸にかけての肌。


鎖骨。


しっとりとした髪・・・・・。




青少年の千堂をドキドキさせるには十分な物だった・・・・・。






「ほ、ほな!わい先に出て待っとるからな!!!」





千堂はバッと顔を背けそう言うとガラガラバシャン!と戸を閉め行ってしまった・・・。







「・・・・・・?」




が何だろ?と思っていると、



「罪作りな女やな〜あんさん。」



と、番台のおばあさんには下着の入った袋を渡されながら言った。




「はい?」




しかしには何のことだかわからなかった・・・・・・・。

















「あ、千堂さんお待たせしましたー。」



そして入り口から千堂のパーカーとズボンを着て出てきた

千堂は意外と背が小さいのでそれほどぶかぶかではない。

されどやはり手はひとまくりしなければいけないほどにはぶかぶかだった。




「お、おう・・・・・。」


と、千堂はを見ながら少し気まずそうに言う。
しかし、髪も乾き、服も着ているので千堂は少し安心した。

しかし風呂に入り白い肌にうっすらと赤い頬は少しぐっと来る物がある・・・。









「千堂さんあれから変な話しませんでした?」


と、帰路の途中は千堂に問いただす。


「あ、変な話?」

「おじさんとあたしがどーたら言ってたじゃないですか!!
 あれ凄く恥ずかしかったんですからね!!!」

は叫ぶ。


「おー・・・おー・・・あの後な・・・・・・ふっ。」


と千堂は笑った。



「あーあー!!何!?やっぱり何か話してたんですかーーー!!??」



きぃーー!とは怒る。



「ブッ!そんな怒んなや、安心しー何も話とらんよ。」



と、千堂は笑いながら言った。


「あ、騙した・・・酷い〜〜・・・。」


すまんすまん。と笑う千堂に・・・。





「・・・・でも実際どうだかわかんないですしね・・・。」



けっとは言った。


「あん?」



「実際話してたかもしれないしー。」



はそっぽを向いてわざと嫌味を込めた声で言った。




「何や!わい嘘ついてへんで!何も話さんかったやさかい!!」


「どうだか?」


はへっと手の平をひらひらと上に向かす。





「何やわれ!わいは嘘つかへんで!!」




と、千堂がぶちきれそうになった時・・・。



「くっ!・・・・あははは!!!嘘ですよ。ごめんなさい。
からかわれたからからかってやろうと思って・・・・。
分かってます、千堂さんは嘘つきませんもんね。」


は笑顔で微笑んだ。




「ぐっ・・・・・。」




してやられた・・・・。と千堂は思いながら少しふくれて歩いた。





「あー、千堂さんが怒ってるー。怒らないで下さいよー。」


「べっつにー!怒ってへんわ!」


「怒ってるくせに・・・。」


「怒ってないー。」


「怒ってる〜。」




は、あははは。と笑いながら言った。




こうしてはたから見れば「何いちゃついてんだこのバカップルめ・・。」という
会話をしながら二人は千堂家へと歩いていたのだった・・・・・。










続。


2003/11/24....