想いの力。
「・・・・・・・・・・・・。」
は今日の夕方のある出来事を思い出していた・・・。
「〜〜♪」
はバイトが休みで、母からのお使いの帰りで自転車で川沿いを走っていた。
「・・・ん?」
そこへ前から走ってやってくる見慣れたジャージ姿の黒髪の人・・・。
その人は下を向きながらもくもくと走ってきて・・・のすぐ近くを通り過ぎようとしていた。
は既にその人が誰だかわかっていた。
「宮田君!」
はすれ違いざま、嬉しそうに声をかける。
「・・・・・・・・。」
そしてそのジャージを着た黒髪の青年は・・・。
その声にピタッと立ち止まり、振り返った。
「・・・・・・・。」
そしてつぶやいた。小さな声で。
その声は・・・かすれていた・・・・。
「・・・・・・・宮田君・・・。」
は顔を上げた宮田の顔を見て、
少し唖然とした。
「あ、そか・・・今、減量中・・・・?」
しかし、そう言って宮田に微笑みかけた。
「ああ・・・試合が近いからな・・・・。」
そう、そう言った宮田の顔は、酷くこけていて・・・唇は乾き・・・顔色は悪かった・・・。
「・・・・・・・・・・・。」
は自室の電気を消し、学習机の光だけをつけ、
机に向かうも、何をするわけでもなく肘を突き、手に顎を乗せ考えていた・・・・。
宮田の体はもうフェザー級の体ではない・・・。
この間会った時も更に背が伸びていて・・・・もはや骨格がフェザー級の体重を許さない体だ。
しかし、宮田は必死に減量し・・・・毎回の試合に挑んでいる・・・。
一つ上の階級に行けば減量などしなくてすむし・・・。
宮田の力なら楽にチャンピオンになれるのに・・・・。
宮田がフェザー級をやめない理由・・・それはわかっている・・・。
一歩だ。
一歩と戦いたい気持ちはわかる・・・・だが、あそこまで過酷な減量をして・・・・・・。
「・・・・・・・・・・。」
は机に腕を重ね顔を突っ伏した。
やるせない・・・・・・・・。
あんな過酷な減量・・・想像しただけで自分には無理だ・・・。
しかし、それをしている宮田・・・・。
全ては一歩と戦うために・・・・・。
どうしてそこまで頑張れるのか・・・・。
耐えられるのか・・・・・。
逃げ出したくもなるだろう・・・・。
減量を放りだして飲んで食べたいだろう・・・。
でも、宮田は我慢して・・・・減量を続ける・・・・・。
極限で過酷な減量を・・・・。
そんな宮田を毎日見ているわけではないが・・・・。
今日会って思い知った・・・・。
毎日そんな生活を送っているのかと・・・・・。
そう思うと・・・・。
とてもやるせなくなる・・・・・。
自分に出来ることはないだろうか・・・。
何かしてあげられることは・・・・。
あの時は、
「じゃあ・・・頑張ってね。」
という言葉を言うしかなかった。
ジムも違くなり、自分は何もしてあげられない。
ただ、言葉を投げかけることしか・・・・・。
その言葉は宮田の力になっているだろうか・・・・。
たった一言・・・・そんな一言・・・・・・・。
「・・・・・はぁ!」
は息をついた。
自分に出来ることは言葉を贈ることしか出来ないから・・・。
せめて減量が終わり、試合が終わったら、
宮田の大好物をたくさん持って遊びに行こう・・・。
はそう思った。
それがに出来ることなのだから・・・・・・。
終。
2003/09/01....