何年、何十年、いつまでも――。
!ご注意!
あの先生ネタですw
原作未読の方は多分意味わからないし、ネタバレになるので、見ない方がいいと思います。
先生は話には出てきますが、実際には出てきません。
千堂さんと夢主、両思いだけど悲恋?です。
一応『千堂さんの夢女子さんが少しでも救われますように・・・。』と、思って書きました。
こんな裏話があって今の原作があったらまだ救われる・・・と、
私も千堂さん好きなので、思いながら書きました・・・。
そんな感じでよければどうぞ。
突然、電話で千堂さんから話があると、いたく真剣な声で家へと呼び出された。
(急になんだろ・・・)
と、思いつつ千堂の家へ向かうに連れ、
もしかして・・・別れ話?という不安が頭の中に浮かんできた。
でも、別に仲悪くもなかったし・・・と、思いつつも不安な胸をかかえは千堂の家へと向かった。
千堂商店。
看板を見上げる。
ここに来るのも何度目だろう・・・いやな緊張感と早くなる鼓動を感じながら、
は家の中へと入った。
「こんにちはー・・・・」
「こんにちは。」
すると、千堂の祖母が迎えてくれた。
「あの・・千堂さんは・・・」
「あの子なら部屋やで。部屋まで通してくれ言われとる。言ってやってくれや。」
千堂の祖母はいつもと同じように座り、猫を撫でながら言う。
「・・・はい。おじゃまします。」
は靴を脱ぎ、そろえると、千堂の部屋へと向かう。
何の話だろう・・・。
本当に嫌な予感しかしない・・・。
どんどん鼓動が早くなる・・・。
お願いだ、私の思い過ごしであってくれ・・・。
はそう思いながら、千堂の部屋の前まで来た。
「・・・千堂さん?です。開けてもいいですか?」
と、問うと。
「入ってくれ。」
と、中から返事が返ってきた。
襖を開けると・・・・・
部屋の中で、千堂がこちらに向かって真剣な表情で正座をして座っていた。
嫌な予感が当たりそうだ・・・。
は泣きそうになる。
「座ってくれ。」
千堂は自分の前を掌で指す。
「・・・はい。」
泣きそうなのをこらえても正座をして、鞄を脇に置き、座る。
「・・・」
「はい・・・」
「すまん、何も聞かずに別れてくれ。」
千堂は掌を八の字につき、頭を畳につけた。
「・・・・・・」
は頭から冷水をかぶったような・・血の気が失せた。
頭の中が真っ白になった。
「・・・・すまん。」
千堂はつけくわえる。
「・・・あの・・・私・・・何か・・・した?」
涙目で、涙声で絞り出したの言葉。
「お前はなんも悪くあらへん!わいの身勝手や!すまん!!」
千堂は大きな声で謝った。
「え・・・り、理由は?理由教えてよ!理由聞かないとそんなの納得いかないよ!」
の瞳からぽたりと涙が落ちた。
「理由は・・・言えん・・・。」
「なんで!そんなの!そんな・・・」
「堪忍や!すまん!お前のことは大好きや!愛しとる!!でも・・・これしか方法はないんや・・・。」
千堂は最後は絞り出したかのように苦しく言う。
「方法・・・?千堂さん!理由も言わないで別れてくれは筋が通ってません!理由を言って下さい!」
ぼろぼろと涙をこぼしながらも、気丈には言う。
「・・・・せやな・・・筋・・・通ってへんな・・・。」
千堂は下げていた顔を上げた。
そして泣いているを見て瞳を見開き、苦しそうな顔をして、少しうつむき、
ぎゅっと両拳を膝上で握った。
「わいの・・・中学時代にお世話になった先生がおるんや・・・。」
千堂は語り出した。
その先生が結婚してから暴力を受けていたこと。
耐えきれず離婚したが、元旦那がしつこく職場まで押し掛け教員を辞めたこと。
今も警察に頼り、なんとか生活していること・・・。
そして・・・その先生が初恋の人だったこと・・・。
「わいは!わいは・・・そんな先生を放っておくことはできん!なんとか力になりたい!
だから!先生と結婚するつもりや!」
「・・・・は?」
は唖然とする。
「わいと先生が結婚すれば、元の旦那も諦めるやろ。
諦めんくても、やつが来てもわいが返り討ちにしたる・・・・。
先生には・・・世話になった・・・初恋やし・・・情もある・・・。
それに・・・男が女に暴力振るうのも許せん・・・なんとか・・・したいんや・・・・。」
ぎゅっと更に拳を握り、千堂は苦い顔でつぶやくように言った。
「そんな・・・じゃあ、私は・・・私はなんなの・・・。」
は涙があふれだしてきた。
「ちゃうで!!!」
千堂はガッとの両肩をつかんだ。
そしてまっすぐの涙がこぼれ落ちている瞳を見つめて言う。
「わいが一番好きなのはや!愛しとんのもや!この世でたった一人!お前だけや!!」
千堂は必死に叫ぶ。
「・・・・意味が・・・わからない・・・・じゃあなんで別れるの!」
叫ぶ。
「・・・先生を・・・助けたいんや・・・。」
肩をつかんだまま、下を向き、千堂は小声で言う。
「・・・それは・・先生のことが好きなの?」
は内心わかっているけれど問うてみる。
「いや・・・好きとか・・愛してるとかとはちゃう・・・なんちゅーか・・・・。」
それは・・・千堂の正義感と・・・先生への情・・・・。
にはわかっていた。
涙がこみ上げてきた。
「うっ・・・うぅ・・・。」
「堪忍や・・・・・・。」
千堂が肩をつかんだまま謝る。
はそのまま千堂に抱きついた。
「二人で先生をっ!救う方法はないのっ!?」
泣きながら問う。
「・・・あかん。先生のことや・・・わいに彼女がおるってわかったら・・・
迷惑かけたらあかんおもて、どっか行ってまう。」
は泣きながら千堂にぎゅっと抱きつく。
何度も肌を重ね、感じた体温、肉体の感触。
もうこの身体に触れられないの?とは思う。
「たまに会うだけでもっ・・・妾でも、セフレでもいいよぉ!!千堂さん!一緒にいたい!!!」
は顔をくしゃくしゃにしながら大声で泣きながら切実な想いを訴える。
「あかん・・・それはあかんのや・・・・。」
千堂も苦しそうな表情をして、ぎゅっと、力一杯を抱きしめた。
苦しい。
心も。
身体も。
いっそこのまま千堂さんに抱きしめられて殺してほしい・・・。
はそう思った。
「・・・・・。」
はそっと千堂から離れる。
「・・・今日が・・・最後?」
千堂の手に触れて、そっと問う。
「ああ・・・最後や・・・。」
その言葉を聞いて・・・・
「じゃあ・・・朝まで・・・一緒にいよう・・・?」
泣きながらはほほえんだ。
「ああ・・・。」
千堂も泣きそうな表情でほほえんだ・・・あの千堂が。
それから、二人はそっと触れるキスをした。
そして・・・翌日の朝まで・・・何度も何度も・・・愛し合ったのだった・・・。
「なんぎな子達やなぁ・・・・。」
そして、下の部屋で、千堂の祖母は布団の中でつぶやくのだった。
翌朝・・・。
布団に寝てこちらに背を向けている千堂を背後に、服を着る・・・。
「千堂さん・・・。」
は、千堂のたくましい背中に触れ、額をつける。
「私・・・やっぱり待ちますから・・・。
そんなことにならないかもしれないけど・・・
先生のことが落ち着いて、片付いて・・・千堂さんが迎えに来てくれるまで・・・・
何年でも・・・何十年でも・・・死ぬまで・・・・一人で待ちます。」
「あかん!」
その言葉に千堂は身体を起こし顔を向けた。
「お前はっ・・・他のやつと・・・幸せになれ・・・・。」
うつむきながら、嫌そうな顔をして、千堂は言う。
「ふふ・・・顔に出てますよ。私が他の人とこんなことしてほしくないって。」
「っ・・・」
千堂はどうしていいかわからない顔をしていた。
「大丈夫です。女は強いんですよ!
あ、でも、千堂さんは気にしないで下さい。私が勝手に待ってるだけですから。」
はいつもの笑顔で笑う。
そんな顔するな・・・。
と、千堂は思う。
そんな顔されたら・・・帰したくなくなる・・・別れたくなくなる・・・。
せっかく決心した心が・・・揺らぐ・・・。
千堂は父親が死んで以来、涙が頬をつたいそうだった。
「・・・愛しとるで・・・お前だけを・・・。」
千堂はそう言うとを抱きしめ、何度したかわからないが、
最後の、最後の・・・・優しい優しいキスをした・・・・。
「はい、私もです。」
唇が離れはほほえむ。
千堂が奥歯を噛み涙をこらえる。
「・・・それじゃあ・・・帰ります・・・。」
は立ち上がる。
千堂の手から・・・腕から・・・はなれる・・・。
「それじゃあ・・・お元気で・・・・いつかまた。」
笑顔でそう言った彼女は、さらりと髪を揺らし、部屋を後にし、襖を閉めた・・・・。
残された千堂はうつむいて、震えるほど拳を握り・・・。
階段を下りるは、涙と叫び出しそうな嗚咽をこらえていた・・・。
階段を下りると、居間で、千堂の祖母がお茶をすすっていた。
「あ・・・あの、お騒がせしました・・・。」
は昨晩のことを思い、少し恥ずかしく、頭を下げる。
「・・・融通のきかんアホな子で迷惑かけるな・・・。」
「・・・・・」
千堂の祖母は猫をなでながら、一言そう言った・・・。
は瞳を見開く。
「・・・・そんな千堂さんが大好きです。」
は満面の笑みでほほえむ。
「おばあさん、お体大事にしてください・・・多分・・・もうお会いできないと思うので・・・。」
は少しうつむいて言う。
「ちゃんも・・・元気でな・・・ありがとう、あんなぼんくらを好いてくれて。」
「・・・・。」
その言葉に涙があふれてくる。
「・・・ありがとうございました!」
泣き叫びそうではそう叫び、急いで千堂の家を後にする。
最後にじっくり、千堂の家を見たかったが、それどころではなかった。
靴を履き、駄菓子の並ぶ見慣れた玄関を通り、外に出る。
そして走った。
走って走ってしばらくして立ち止まり・・・。
「う・・・うああああああん!!!」
早朝の人気のない道で大声で泣いた。
大声で叫び、涙を流し、歩きながら・・・今まで我慢していた物を全て吐き出した。
「千堂さっ・・!千堂さんっ!!」
は泣きながら千堂の名を呼ぶ。
しかしもう会えない。
もしかしたら死ぬまでもう二度と会えないかもしれない。
大好きな、大好きな、愛しい人・・・・。
「うっ・・・くっ・・・・・」
しかしは涙をぬぐい、昇る朝日を見つめ思う。
私は待つ。
何年、何十年・・・死ぬまで・・・ずっと・・・・千堂さんを・・・。と。
「千堂さん・・・大好きです。」
そして朝日に向かってつぶやき、涙を流しながらほほえむのだった。
終。
2020/04/04....