もしも・・・。













「ぐあーー!!!財前先生がぁーーー!!!」







「うっせぇなぁ・・・・・。」



テレビに向かって叫ぶに、鷹村はつぶやいた。





「うぅ・・・・・・・。」




は今、鷹村の部屋でドラマを見ている。
鷹村は興味が無いのでボクシング雑誌を見ているが、
どうやらドラマが最終回らしくはテレビの前に座り込み、見入っていた。



「・・・・・・・・・・。」



しかしそこではふと思った。






「ねぇ・・・・鷹村さん・・・・。」






は鷹村に声を掛ける。


「あ?」


鷹村は顔は雑誌を見たまま答えた。

そしてもテレビを見たまま鷹村に聞いた。










「・・・・・・・・・あたしが今、死んだら・・どうする・・・?」












ちょっと一度は聞いてみたい質問だった。


もし、今、あたしが死んだら・・・という問い。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



はしばらくテレビを見たままで居た。






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」






しかし鷹村は黙り込み、何も返事が帰って来ない。



「・・・・・・・・・。」



何だかは気まずくなってきた・・・。


ああ・・馬鹿な質問しちゃったかな・・・・・。


は居たたまれなくなって鷹村の方を振り返りながら言った。





「あはは、今の質問気にしない・・・・・で・・・・・おわ!!」




しかし、振り向いた目の前には壁があった。


次の瞬間振り向きざまの変な格好で抱きしめられた。







そう、さっきの目の前の壁は鷹村の身体であった。










「・・・・・・・あ、あの・・・・たか・・鷹村さん・・・・・・?」





はしばらく変な格好で抱きしめられたまま何事かとじっとしていたが、
鷹村はの頭の後ろに顔をうずめ、動かない・・・・。




「・・・・・・・・・・・・・・。」



は少し考える・・。





もしかして・・・さっきの『もし死んだら・・』の質問のせい・・・?



まさか・・・あんな馬鹿げた質問で鷹村さん抱きついてきたのか?





有り得ない・・・・。




は思う・・・・・しかし・・。












「・・・・・・・・お前は・・俺が死んだらどうする・・・・・・・・・。」












と、鷹村が耳元で囁いてきた。





「・・・・・・・・・・・・。」





鷹村の耳元囁き攻撃には撃沈して、
うっ・・と顔を真っ赤にしながらも、少し考えてみた・・・・。











もし、鷹村が死んでしまったら・・・・・。












「・・・・・・・・。」












所詮、今の二人は一時の青春の思い出かもしれない・・・。





一ヵ月後にはもう別れているかも・・・・・。



それなのに・・・・。


こんな気持ちになるのは・・・。


馬鹿げてるかもしれないけど・・・。








鷹村さんがもし今死んだら・・・と思ったら・・・。










涙がにじんで来た。







「・・・・・・・・・・・・っ・・。」







は鷹村に抱きついた。


鷹村の広い背中にぎゅっと両手で手を回し、思いきり抱きついた。


ちゃんと今、鷹村さんはここに居る・・。


と、実感出来るように・・・・・・・・。







「・・・・え・・・お、おい・・・・・・・。」






いきなり泣き出したに気付いた鷹村さんが焦って声を掛けて来た。





「うぅ〜・・・・・・っ。」




は更に声を出して泣く。





「な、何、泣いてんだよ!ちょっと聞いただけじゃねぇか!!」




鷹村さんは本気で泣き出したに本当に焦って更に強く抱きしめた。





「た、鷹村さんが・・・・っ・・・。」




そしては語りだした。




「鷹村さんがもし死んじゃったら・・って・・・思ったら・・・何か・・・何か・・・
頭の中で鷹村さんが交通事故で死んじゃって病院に駆けつけたら死んじゃってて、
お葬式での最後のお別れまで考えちゃったら泣けてきたぁ〜〜〜!!!!!!」







はそんな事を叫んでうわーーーん!!!!と泣き出した・・。








「・・・・・・お前・・・・・そこまで考えるなよ・・てか勝手に殺すんじゃねぇ。」







鷹村はそんなにあのなぁ・・と呆れる。




「おらおら、泣くんじゃねぇよ。」




そしてべりっと引き剥がして、号泣しているを見る。





「・・・・っ・・・たか・・鷹村さんが・・・死んじゃったら・・・あたし・・・悲しい・・・・・。」





そしてはしゃくりあげ、涙を流しながら鷹村の顔を見上げて小声で言う・・・。





「・・・・・・・・・・・・・・・・。」





これは俗に言う『涙目上目使い』であって・・・・・・・。











鷹村にはかなりたまらなかった・・・・・・。










「・・・・・・・・・・。」




「うわぁ!!!ちょ、ちょっと鷹村さん!?」




鷹村はを小脇に抱えると、スクッと立ち上がった。



「な、何・・・・・・・・・。」



そして焦るが見た進行方向には・・・・・布団・・・・。






「鷹!鷹村さん!!!あたしまだドラマ見てるの!!
あー!ほら!そう言えばまだ途中だったんだよ!最終回最終回!!!」




はぎゃーーー!!と、慌ててもがく。





「うっせぇな!ドラマ何かどうでも良いだろ!てめぇが誘ったんだろ!?」




と、鷹村は言う。




「は!?誘ってないし!!!いやーー!!!ちょ、待って!!!
いやーー!!最終回見るの!!!最後、財前さんどうなるか見なきゃ!!!」






「財前なんか知るかってーの。」





「うわっ!」



と、鷹村は布団にボスンとを投げた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・。」




冷や汗だらだらなと。




「さぁ・・・お楽しみと参りましょうか・・・。」




満面の嫌な笑顔の鷹村。







(好きだけど・・・好きだけど・・・・鷹村さんは好きじゃないーーーーーーー!!!!)








という絶叫を、心の中で叫んだだった・・・・・・。






こうして夜は深けるのだった・・・・・・。














終。


2004/03/19....