今日も、しあわせだ。
「鷹村さん、『運命の人』って信じます?」
「あ?あにいってんだ?」
横になりながら雑誌を読んでいた鷹村はの質問に、チラ見して眉間に皺を寄せた。
「いや、なんか今、テレビで歌ってたから・・・。」
少し恥ずかしくなりながらは顔をテレビに戻した。
「中坊みてーなこと言ってんじゃねーよ。」
寝返りをうち、鷹村は背を向ける。
「そーですねー、しょせん、何回かくっついて別れて結婚するか、しないかですもんねー。
ん?結婚した人が運命の人なのかな?
いや、でも、離婚したりするしなぁ・・・家庭内別居とか・・・・。」
「ブツブツうるせぇ。運命の人なんていねーんだよ。」
鷹村は少し怒ったような、低い声でボソリと言い、不機嫌オーラを放ち出した。
「・・・・・。」
は黙ったまま、ニヤニヤする。
鷹村は、恋人や夫婦が別れる関連の話になると、不機嫌になるのだ。
その理由は、いわずもがな。
こんな図体して、世界チャンピオンなのに・・・かわいいなぁ。
声に出して笑うと怒るのでは優しい笑顔でほほえみ、見つめるだけだ。
そしてこう言う。
「私の運命の人は、鷹村さんだといいなー!」
「!」
鷹村はピクっと反応する。
「鷹村さんが運命の人で、ずっと一緒にいたいなー!」
少し大きな声でがそう言うと、
「デケェ声でうるせぇ・・・。」
チッと舌打ちして、鷹村は小さくそう言う・・・。
そんな鷹村の背中を見ては嬉しそうにほほえんだ。
「さて、帰るか。」
そしてが夜も更け、帰ろうと立ち上がろうとすると、
ガバッと素早い動きで抱きしめられ、床に押し倒された。
一瞬のことだった。
さすが、世界チャンピオン。
「誰が帰すか・・・。」
そして、耳元で囁かられる。
は、あっはっはっは!と大きく笑う。
あに、笑ってんだよ!と、額をゴン!と、ぶつけられた。
あー、しあわせだなぁ・・・。
は心の中で、一人、そう思うのだった。
終
2021/05/10...