クリスマス。













バスン!


「ふぅ〜・・・・。」


はサンドバッグに最後の一打ちをした後、腕で汗を拭った。
すると聞こえてきたのは他の練習生の会話・・・・。

「俺、この後デートなんよ〜。」

「くっそ・・・この野郎が・・・むかつくわー・・。」



(あ、そうか・・そういえば・・・。)



と、思いながらはサンドバッグに抱きつきぶらぶらしていた。


するとそこへ。



「何してんや・・・・。」


「あ、千堂さん。」



千堂がやってきた・・・・。



「あ、千堂さんー。ロードワーク終わったんですか?」


「おう。」



の問いかけにさらりと汗を拭きながら返す千堂。


「千堂さんー、そういえば今日クリスマスなんですよねー。」


はサンドバッグにまだ抱きついたまま言った。


「ああ?くりすます?」


「ええ。」


まさか知らない・・?とは思うが・・。




「ああ、今日クリスマスなんか。」




知ってはいたらしい。





「さっき『俺この後デート〜。』って嬉しそうに言ってましたよ。羨ましい限りですね〜。」



は何気なしに言う。









「せなんか・・・・・なら俺とデートするか?」








「・・・・・・・千堂さん・・その手の冗談やめて下さい・・・。」








にしし。と笑う千堂に少し赤くなりながらサンドバッグに顔をつけ、もう・・とは言った。


するとそこへ・・・。







「なんやなんや、ええ年した若いもんが。こんな日にデートの約束もないんかい。」






「あ、柳岡さん・・。」


「おお、柳岡はん。」



声をかけられ返事をする二人に・・・・。








「・・・・・・お前らデートしてこいや。」







「「は!?」」




柳岡さんは突然そう言った。



「こんな日やのに若いもんが真面目に練習してんなや!
ちょうど二人あまっとるなら行ってき!
ほれ!駅前のイルミネーションが凄いって話やろ!ほらほら!!!」





「え!」


「ちょお・・!!!」

















「ほななー。」



ガラ、ピシャッ。







「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」







数十分後・・・二人は着替えてジムを追い出されていた。


これは密かに、以前二人が密かに抱き合っていたのを見た柳岡さんの計らいだったりする・・・・。


「追い出されちゃいましたよ・・・。」


「何やねん!柳岡はん!!!!」




しかし、当の二人にはそんな気は無いのだが・・・・・。





「・・・・・・・・・・。」



どうしよう。

は一人思っていた。


追い出されたのは良いが、千堂さんは怒っている・・・。
このまま本当にデート?
まさか・・・このまま解散だろう・・・・。


はそう思った。
だから・・・。




「わい練習しに来たのになんで追い出されなあかんねん!」



と、ぶりぶり怒る千堂は右へと歩き出した。

の家は左。

だからは・・・・。



「あ、じゃあ千堂さん、また。」


と、手をふり左に行こうとした。
が。








「何ぼけてんねん。駅前行くんやろが。」






と、ポケットに手を突っ込んだ千堂に振り返られながら突っ込まれた。





「へ・・・・・・。」





「はよこんと置いてくでー。」




千堂はスタスタと歩く。









デートするんですかい!!








は思わず心の中で突っ込んだ。



しかし・・・。




「・・・・・・・・・・待って下さいー!」




少し悩んだ後、少し微笑みながら後を追いかけたのだった。
















「うわー!綺麗ーーー!!!」




そして駅前。


真っ暗な中、キラキラと光るイルミネーションには嬉しそうにそう叫んだ。




「・・・・嬉しいんか・・。」



と、千堂はそんなを見てぽつりと言う。



「うん!結構嬉しい。」


が言うと・・・・。






「そうならええわ・・・。」





千堂は俯きながら少し微笑んだ。









「・・・・・・・・・・・・。」







そんな千堂には少しどきっとしていると・・・。







「てか寒っ!!!もう帰るか。見たなら用すんだんやし。」






千堂は言う。


普通気のきいた男ならここでどっかでお茶でも・・。
とでも言うだろうが、まぁ、千堂さんだし・・・とは思い、承諾した。




「はい、帰りましょう・・・あ!でもどうせ帰るならあの大通り歩いて帰りたい・・・。」



が恐る恐るわがままを言うと・・・。




「ああ、ええよ。」



と、千堂はなんなく承諾してくれた。







そして二人は大通りを歩く・・・・・。











「うはー!綺麗〜。」


は上を見たり先の方をみたりしながら歩く。

そんな事をしていると・・・・・。




「あ!千堂さん!まっ・・!!」



千堂が数メートル先に行ってしまった。



「あ?」














「はい・・すみません・・・追いつきました・・・。」


はぐれそうになって、止まってくれた千堂にがやっと追いつくと・・。


「なにしとんのや。」


千堂が、あほ。と言った。

そして・・・。






「・・・・・手、繋ぐか。」





と言った。



「へ!?」



その言葉に驚く



「・・・・嫌ならええけど・・・またはぐれる思たから・・」




「あ!いや!嫌じゃないですよ!!
そうですよね!またはぐれたら面倒くさいですもんね!!!」



一瞬、焦ったはそういう意味か!と赤くなりながら千堂に言う。
そして。





「ほい。」




「はい・・。」




差し出された千堂の手をぎゅっと握った・・・・。















「あ、雪だ・・・。」











そうして二人、手を繋いで歩いていると雪が降ってきた・・・。


「すごーい、ホワイトクリスマスだー。」


「今の時期に雪なんて・・・まだはやいんとちゃうか?」


千堂は言う。



「あ、今日天気予報で見ましたけど何か凄い寒波が来て今日めずしく雪降るって言ってましたよ。」


そんな千堂の独り言な問い掛けには答えた。


「せなんか。」


千堂は納得する。






「あ〜・・ごっつ寒・・・はよ帰ろ・・・・・うち寄るか?」




千堂は歩きながらに聞く。



「あー・・良いです。もう夜遅いし。」



最近、千堂の家に行くことがあまりめずらしくなくなったは平然とそう答える。





「せな、家まで送ったら、でーと終了やな・・・・・。」




と、千堂はやっと終わりやな・・という風に言った・・。

そんな千堂を見て・・・・。




「・・・・なんかごめんなさい・・・あたしだけ楽しくて・・・。
千堂さん練習したいのにあたしが変な話ふったから柳岡さんに追い出されて・・・・。」





は少し落ち込んで、俯きながら言った。
そんなの言葉に千堂は・・・・・。





「あん?ああ・・・せやな・・・。」




と、言った。




(う・・・・・・・・。)




が千堂の言葉に更に落ち込んでいると・・・。









「でも、別に全くつまらんわけやなかったし・・・・。
『でーと』つーのも出来たし、結構楽しかったから別にええよ。」







そう千堂は言った。





「・・・・・・さいですか・・。」




は少し赤くなりながら俯いて返事をした・・。






(デートか・・・・・。)










「何かあたし達って・・・・・・・・・・。」



「あん?」









(何なんだろう・・・・・・。)







「いいえ・・何でもないです・・・・・。」





は心で思いながら、口にはしなかった・・・・。














あたし達の関係って・・何なんだろう・・・・。










は思う・・・。









今の関係が一番楽しい・・・。





友達のような・・・。


しかしそれ以上なような・・・。






でも惚れたはれたではない・・・・。




微妙な・・・凄く微妙な。





されど楽しい関係・・・・・。









(千堂さんじゃなきゃこんな関係にはなれないんだろうな・・・・・。)






現に男子とこんな関係になったのは初めてだ。









(・・・来年も・・・千堂さんとデート出来れば良いな・・・・。)






は思う・・・。














(この微妙な関係で・・・・・・・・・・。)


















「何ぼーっとしとんのや?足元きぃつけんと転ぶで。」


「あ!はい!」



「はよ帰ろな・・・。」


「はい・・・・。」











こうして二人のクリスマスは終わった・・・・・。














終。



2003/12/25....