恒例のクリスマス。













「・・・・・・・・・・」



とある寒い冬の夜、鷹村は布団の上に寝そべりながらテレビを見ていた。

「こちら××駅、駅前です!クリスマスのイルミネーションが綺麗に輝いています!」

(あ〜・・・今日クリスマスか。)

鷹村はテレビを見ながらボリボリと尻をかき、そう思った。

(ねえちゃんでも引っかけに行くかなー・・・でも外はカップルだらけか・・・)

「チッ」

舌打ちをすると、不機嫌そうに眉を寄せ、あーあ。と、言いながら仰向けになる鷹村。

「どっかに暇してるちょうどいい女いねぇかな・・・」

鷹村はそう思いながら天井を見つめる。

「・・・・・・」

そしてふっとの顔が頭に浮かんだ。

(何であいつが出てくんだよ。)

鷹村は再度、チッと舌打ちしながら壁に向かって身体を反転させる。
するとその時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。

「・・・チッ・・・誰だよ・・・」

めんどくせぇなぁ・・・と、ブツブツと小さく言いながら、鷹村は大きな身体を起こし、玄関へと向かう。
そして、ガチャっと扉を開けると・・・・・・


「あ、メリークリスマース!鷹村さん!」


そこにはケーキの箱を持ち、顔の横に掲げたがいた。



「・・・・・・・・・・・・」



鷹村は、今さっき頭に浮かんだ人物が目の前に現れ、少しびっくりしてを見つめる。

「・・・・・・? あの・・・鷹村さん?」

無言で見つめられて少し焦る

「あ?ああ、おう、どうした。」

の言葉に鷹村はハッとしに声をかける。

「あ、いや・・・今日、クリスマスなんで・・・鷹村さん一人だろうと思って来たんですけど・・・・・・」

ホールケーキの箱を見せながらは言う。

「あー・・・まぁ、一人でテレビ見てたけどよ・・・・・・入るか?」

鷹村がそう言うと、

「あ、はい!」

は安堵したように笑顔で返事をした。






「・・・・・・・・・」


しかし、部屋の中に入りは言葉をなくす。

「そうですよね。そうですよね。クリスマスも通常通りのこの散らかりようですよね。」

はぁ・・・とはため息をつくと、ケーキの箱を流しの台に置き、コートを脱ぎながら、

「軽く片付けてもいいですか?」

と、少しうんざりした表情で鷹村にそう聞いた。

「ああ。」

鷹村はそう言いながら、布団の上に座る。

「あ、ちょっと布団たたんでくださいよ。」

がそう言うと、鷹村は舌打ちをしながらしぶしぶ布団をたたみ出した。

「さて・・・どこからやるかな・・・・」

はそう言いながら腕まくりをすると、床に散らばっている雑誌類を拾い出した。



そうしてしばらくが片付けに奮闘してそこそこ整理整頓が終わり、
座る空間やテーブルの上や流しの片付けも終わり、部屋が綺麗になった。

「はぁー、終わった。これじゃ掃除しにきたようなもんじゃないですか。」

はそう言いながらため息をつき、テーブルの前へと座る。

「おう、おつかれさん。」

鷹村はそう言いながらテーブルに肘を付き、テレビを見ていた。

「・・・・・・コーヒー貰ってもいいですか?」

「あ?ああ、かまわねぇぞ。」

はコーヒーを飲んで一息つこうと、台所へ行く。

「あ、俺のもな。」

すると背後から鷹村の一声。

「・・・・はぁ・・・・・・はいはい。」

一瞬、イラッとしたが、何様俺様鷹村様にはもうなれてるので、
はコーヒーを二つ入れて、部屋へと戻ってきた。

「あー、今日寒いですねー。部屋あったかいから幸せです。掃除もしたから身体あったまったし。」

テーブルにコーヒーを置きながらがそう言うと、

「・・・・・・なら、もっとあったまる運動するか?」

ニヤリと鷹村は嫌な笑みをしながらにそう言った。

「しません!」

ドスンと座りながらは、はいはい、いつものですね。という表情で言う。

「チッ、冗談だよ。てめぇみたいなお子様に興味はねぇ。」

もっとこう、ボインボインなねえちゃんと・・・と、語り始めたので、
鷹村さん、コーヒー冷めますよ。とは言い、ズズっとコーヒーをすすった。

「・・・・・・チッ」

鷹村は話を遮られ、舌打ちをするとカップに手をつける。

「はぁーあったまる!やっと一息つけました。」

は部屋のあたたかさとあたたかいコーヒーで、
中からも身体があたたまり、ほわっとゆるんだ笑顔で言う。

「・・・・・・・・・」

のそんな笑顔に、鷹村は一瞬、眼を奪われる。
しかし次の瞬間ハッとし、ブルブルと頭を振った。

「? どうしたんですか? 鷹村さん。」

がそう問うと、

「・・・・・・何でもねぇよ。」

鷹村はそう言って、バツが悪そうに眼を閉じ、少しうつむきながらガシガシと頭をかいた。

「・・・・・・てかお前、クリスマスに俺んとこなんか来てていいのか?
家族とか友達とか・・・・・・男とかと過ごさねぇのかよ。」

あ、お前に男なんていねぇか!と付け加えて、ダッハッハ!と、膝を叩きながら笑う鷹村に、

「・・・・・・・・・」

はこのやろう。と思いながらも、いつものこととその通りなので、はぁ。と息をつき、話す。

「友達は彼氏とか家族とかと過ごしますし、家族とは明日過ごすんで、
イブはきっと一人で淋しいだろう鷹村さんの所に来てあげたんです。」

はそう言いながらコーヒーをすする。

「・・・・・・別に淋しかねぇよ。」

余計なお世話だ。と鷹村は言いながら、フン!と顔を背ける。

「まぁ、いいじゃないですか。実際、ひとりで家にいたんですし。」

はバツが悪そうな鷹村を見て、ふふっと笑う。

「・・・・・・・・・」

のそんな笑顔に、まぁ、こいつと過ごすのも悪くねぇかな・・・・
一応女だし・・・と、思いながら、鷹村はフンっとテレビを見て、コーヒーをすすった。

「それに、やっぱりこういうイベントは大勢で過ごした方がいいですしね!」

「・・・・・・・・・」

のその言葉に、ん?と、鷹村が思った時だった。


「「たっかむっらさーん!おじゃましまーす!!!」」


部屋のドアが勢いよく開き、男の浮き足立った声が部屋に響いた。

「ブーッ!」

鷹村はその声に、飲もうとしていたコーヒーを噴き出す。
そしてゲホゲホと、むせる。

「あ、来た!」

はそう言うと立ち上がり、玄関の方へと向かう。

「木村さん、一歩くん遅いですよー!」

「いやー、ごめんごめん!チキン買うのに並んでさぁ。」

「・・・・・・・・・」

鷹村はそんな会話を聞きながら、口元にたれるコーヒーを拭う。

「鷹村さん!一歩くんと木村さん来ました!
青木さんはトミ子さんとデートらしいんで来れませんが、
これでそろいましたよ!さ、パーティーしましょうか!」

やっぱりパーティーは大勢でしませんとね!

はにっこりと笑う。

「・・・・・・・・・」

しかし、鷹村はゆらりと立ち上がると・・・・

「てめぇら帰れー!勝手にひとん家上がるんじゃねー!!!」

と、ズバーンと木村を殴った。

「!?」

一歩とは凍りつく。

「おら!てめぇもだー!!」

「う、うわああああ!!」

鷹村に追いかけられ、一歩は一目散に部屋から出ていく。

「ちょ!鷹村さん!何してるんですか!!木村さん!?木村さん!!大丈夫ですか!?」

・・・ちゃん・・・」

木村はに抱えられるが、ガクリと首をたれ、意識を失った・・・・・・。

「もう!何やってんですか!鷹村さんーー!!!」



の怒りのこもった叫び声が、聖なる夜に響くのだった・・・・・。










終。


2015/12/25....