言葉の力。













その日はちょっと遠回りをしてみた・・・。


あいつにもしかしたら会えるかもしれないと思って・・・。











「はぁ・・はぁ・・はぁ・・。」



宮田はもうすぐに試合を控え、減量にいそしんでいた。
計量を通過しなければ話にならない・・・。

しかし・・・宮田の体重はそう簡単には落ちてはくれないのだ・・・。







計量はもうすぐそこなのにまだ多い体重・・・。

減量に減量を重ね・・・・宮田の体も心も弱りきっていた。




それでも走っていた・・・・戦うために・・・。







幕之内一歩と戦うために・・・・。


それだけを頭に今まで走ってきた。


何も障害のないまま進むと思っていたボクシングロード。


そこにやつはやってきて・・・・大きな壁となって立ちはだかった・・・。




それは思いもかけない事で・・・・。




だから・・・やつを越えなければならない・・・。



やつを越えなければはじまりも終わりもしないのだ・・・・・。









だから次の試合の為に減量をしていた・・・走っていた・・・。






でも・・・走り過ぎて・・・もう疲れたと・・・・・投げ出したくもなる・・。



時折思う・・・何のために頑張っているのか・・・・・。



何のために戦うのか・・・・・。







そんな弱気になっていたから・・・・。



会いたかった・・・・あいつに・・・・・・。










「宮田君!」









そしたら声が聞こえた・・・。




「・・・・・・・。」




会えた・・・彼女に・・・・。



「あ、そか・・・・今、減量中・・・・・・?」



そして彼女は俺を一目見てそう言った。

そう・・・一目見れば分かるほど今の俺は酷いなりだ。


こんな所を彼女に見せないほうが良かったか・・・・・。

俺はそう思うが・・・。



「ああ・・・試合が近いからな・・・・。」



と答えた俺に彼女は・・・・。








「じゃあ・・・頑張ってね・・・・・。」








そう言った。




たった一言・・・・そんな一言だ・・・・・・・。





だけど、一言だけれども、彼女の表情などが物語っていた・・・。





頑張ってに込められた言葉にならない想い・・・・。





それは極限状態の俺の妄想かもしれないけれど・・・。




それでも・・・・それは俺のとてつもない力になった・・・。







「ああ・・・・・。」





だから俺はそう言ってまた走り出した。







たった一言・・・。



たった一言だけれど・・・・。





その一言が・・・力になった・・・・・・・。









だから俺はまた走り出した。















終。


2003/09/03....