孤独を埋める者達。
それは、何回目かの鷹村の世界防衛戦のことだったーーー。
(はー!今回も鷹村さん強かったなー!
回を増すごとに強くなってる気がする。減量苦が和らぐからかな?)
そう思いながらトイレに行っていたは、鷹村やみんなのいる控え室へと向かう。
(おっと・・・)
しかし、にぎやかで華やかな記者のインタビューや、
カメラのフラッシュ、大勢の人を見ては入るのをためらった。
「・・・・」
そして後退りし、ぽんっと、開いた扉の反対の壁に背をついて、天井を見上げた。
(なんか私とは住む世界の違う人間だわ・・・まさに天井人・・・。)
板垣くんの影響かな。と、思いながら天井を見つめながら思う。
住む世界が違うんだよ・・・。
なのに毎日毎日しつこくしつこく・・・。
そりゃ、普段はただの一般人ぽいけど・・・。
でも、世界チャンピオンだ。って言われるの増えたしなぁ・・・・。
とは天井を見上げながら物思いに耽る。
すると、
「なんじゃ、お前こんなところにおったのか。」
会長がひょこっと出てきてを見つけて少し驚く。
「あ・・・すみません。なんか、入りづらくて・・・・。」
苦笑いする。
そんなの心境を察する会長。
ふぅ。と、一息ついての横に同じくぽんと背をついた。
「あやつの機嫌が徐々に悪くなっておるぞ。」
「へ?なんでですか?快勝だったのに。」
「・・・みなまで言わせるな・・・。」
「え・・・あ・・・・。」
は少し赤くなる。
「良い機会だから少し話しておこうかのぉ・・・。」
会長はそう言うと、じっと正面。
何もない正面を見て語りだした。
「あやつは果てしない孤独の中にいる。」
「え?」
「毎日ばかやっちょるが、絶対的な孤独、果てしない孤独、圧倒的な孤独の中にいた。」
「・・・・・」
その言葉には眉を寄せる。
「日常生活も、トレーニングも、試合も・・・
周りに人はいるが、孤独の中、してきたのじゃ。
その孤独はだれにも埋められん。
じゃがな・・・ある日から一つのひだまりがその孤独を照らし出した。
そしてそやつと入るときだけは、あやつは孤独から
のがれられることができるようになった・・・。
それがいいのか悪いのかはわからん。
強さになるのか弱さになるのかはわからん・・・。
ただ・・・この老いぼれにはな・・・・少しばかしうれしいことではある・・・・。」
鴨川会長はふっと笑いうつむいた。
「会長・・・。」
「どうか末永く・・あのバカの側にいてやってくれ・・・。」
「え!」
しかし、会長に小さな声でそんなことを言われ戸惑う。
「じじいーー!!どこいったーーー!もだーーー!」
すると大声で鷹村の声がする。
「ふっ・・・さて、やっかいなバカ息子のところにでも行くか。」
「・・・はい」
二人は控え室の中へと、苦笑しながら、
しかしあたたかいほほえみを浮かべ、入って行くのであった。
終。
2019/08/10...