空っぽと全肯定。
「・・・私ってなんにもないなあ・・・空っぽ。」
ある日の晩。
鷹村のアパートでは鷹村の世界チャンピオン特集の雑誌を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。
「あ?」
寝転がっていた鷹村が振り向く。
「・・・みんな世界チャンピオンとか、日本チャンピオンとか、ボクサーでランカーだったりすのに・・・私にはなんにもない。ただの事務員・・・。」
「・・・別に事務員だって俺らの役にたってんだろ・・・。」
何かめんどくせぇのが始まった。と、鷹村は内心思いつつ、本音を軽くいい、顔を戻した。
「役に立ってるかー・・・まぁ、私のいる環境が特殊なんだよねぇ・・・・世界チャンピオンとか日本チャンピオンとか・・・。」
大きなため息をつく。
そんなに鷹村も大きなため息をつく。
「・・・・お前はいるだけでいいんだよ・・・。」
そしてそんなことを言った。
「え?」
がどういう意味かと聞き返すと、
「・・・お前はジムでも、ここでも・・・横にいるだけでいいんだよ・・・。」
「・・・・・・・。」
少しためらいながら言った鷹村のその言葉に、なんだ愛されてんな、私。とは思いつつも・・・。
「それは何か違うのーーーー!!!」
と、鷹村の上にダイブした。
「うお!!!」
「何か違うーーー!!!」
そして鷹村の体をバシバシと叩く。
「あんだようるせぇな!!!オレ様のそばにいられるんだから光栄に思え!」
「ちがうーーーー!!!」
存在の全肯定をされながらも、そうじゃないんだ!!!と、漠然と思いは鷹村にごろんごろんするのだった。
終。