叶わぬ夢と現実。













「・・・・・・・・・」




大好きな人と、小さな子供が一人いて・・・穏やかに小さな家で慎ましく暮らしている夢を見た。


彼は笑っていて、子供も笑っていて、私も笑っていて、
ぽかぽかひだまりの様な空間で・・・・とてもおだやかだった・・・・・。


「夢・・・・か。」


朝起きると、見ていた夢のことを思い出すことは多々ある。
今の私には残酷な夢だ・・・・。
願望か?とは思った。

あんな日は来るのだろうか・・・・。

と、思いながら、考えるのをやめて支度をする。




今日は鷹村さんの試合の日だ。







最近、ジムはギスギスしている・・・・少し穏やかになったが、
原因は一歩くんが引退したこと。トレーナーになったこと。
で、何だかジムの空気が少し変わったのと、
鷹村さんが拗ねたような・・・拗ねたのとちょっと違う・・・かな?
何かに頑なになった?いや、何かに必死になっている?ような感じで、
いつもピリピリしている様な・・・・・最近いつも怖い。

加えて最近の試合で大ぶりを喰らうようになった。
あれは確実に・・・・・・。

は頭を振りながらホールの廊下を歩く。


(今日の鷹村さんの試合に集中しよう!六階級制!それが終われば!)



・・・・・それが終われば・・・?



鷹村さんはどうするんだろう・・・・。


引退?


でも、その前に身体が持つか・・・。


終わったらどこかに行ってしまいそうな気もする・・・。



私は今日の夢を思い出した。



涙が溢れてきた。





あの穏やかな夢は・・・・きっと叶わぬ夢なのだろう・・・・。




夢の中で、鷹村さんはくったくなく、幸せそうに子供を撫でて笑っていた。




ガチャっと扉を開く。



「・・・・・・・・」



戦闘態勢に入ったこの表情の鷹村さんとは真逆の表情。


でも、これが現実の鷹村さんで、これが鷹村さんのあるべき姿なんだと思う。




ついていきますよ。どこまでも。








終。



2020/06/19...