髪くしゃ大作っ戦!
「ふー、さっぱり。」
それは・・いつも鷹村がシャワーを浴び、
出てきた姿を見るといつも思う願望だった。
あの髪を・・・くしゃっとしたい!!!
「お疲れ様ですー、鷹村さん。」
今日も鴨川ボクシングジムは何事も無く練習を終え、
帰宅準備をしだした練習生達がシャワーを浴び、出てくる。
そしてその中に鷹村もいる。
いつもはリーゼントにしている鷹村だが、このときはいつも髪が下りていた。
その髪の下りた鷹村にはドキドキしながらも平静を装いながら、
シャワー室から出てきて据え付けてあるベンチに
どかっと腰をかけた鷹村に飲み物を渡した。
「お、サンキュ」
と言って鷹村はそれを受け取る。
(うわー・・ヤバイ・・・。)
は、顎を上げ振り向きながら斜め上目線で飲み物を受け取る鷹村の、
髪の下りた顔を見て緩む口元を必死で抑えていた。
どうも髪の下りた鷹村さんを相手にするのは辛い・・・。
とは必死ににやける口元を押さえていた。
そしては見つめる・・・鷹村の髪を。
黒く艶やかに輝く髪。
今は水に濡れたせいでしっとりとし、
水の重みでしんなりと寝ていた。
はいつもシャワーを浴びた後の鷹村の姿を見ながら思っていた。
(触りたい・・・・・・。)
おもわず手がうずうずしてくる。
(きっと今くしゃ・・っと触ったら少し冷たいながらも
しっとりとした質感でそいでもってくしゃっと髪をしたせいで
無造作ヘアーになった鷹村さんはものすっごい格好良いのだろうな・・・。)
はそんな鷹村を想像して、にやけられない状況なのに余計に自分を苦しめた。
触りたい・・触りたい・・・。
の心に募る思い。
触りたい・・・触りたい・・・・。
でもきっと「触らせてください」とか言ったら
は?とか言われるんだろうな・・。
はそう思う。
触りたい・・触りたい・・・。
こうなれば・・・行動有るのみ。
強行突破だ!!!
は欲求に勝てず、鷹村の背後から忍び寄った。
はすっと手を前に出し。
近寄って・・。
近寄って・・・。
『?』
木村、青木、一歩などなどは、鷹村が、がーっと飲み物を
飲む後から何か切羽詰ったように忍び寄るを見て不思議に思い、
そしてその光景を見ていた。
そして・・・・。
(今だ!!!)
くしゃくしゃっ・・・・
は鷹村の髪を背後から触った。
そしてその瞬間の顔には満面の笑みが溢れていた。
鷹村の髪を触った感触は予想以上に良くて
もう、ぎゃー!!と喜びの声を上げたいくらいだ。
しかし、その光景を見ていた一歩、木村等々などは
頭に疑問符を浮かべている・・・。
「・・・なんだぁ?」
そして、至福の時を味わったを鷹村が振り返り、ああ?と見た。
「・・・・・っ・・・!!!」
そしてその時は第二の至福を味わう。
振り返った鷹村の姿はこれまた予想通りが悶絶するほどに格好良かった。
長めの前髪が無造作に前に散らばり、ぐしゃっとしたせいで少しふわっとしている・・。
は声にはしてないが顔が嬉しさの悲鳴を上げていた。
もう、地団駄を踏んで喜びたいくらいだ・・。
が、そんな事をしてしまったからにはやはり後始末をしなくてはならない。
何してんだ?と言われ。
わけを話したり・・。
はたまた苛立たせてしまうかも・・。
がには作戦があった!
「おま・・・」
鷹村が何か言おうとした時。
「有難う御座いました!!!」
と、鷹村や、他の人々にはわけのわからないお礼を言い、
はダッシュでジムを出ようとした。
そう、逃げるが勝ち。作戦である。
翌日になれば今までのことは忘れているだろう。と思っての作戦だ。
しかしの考えは甘かった。
(逃げろ!!!)
とが鷹村の脇を通り過ぎようとしたとき・・・。
「こぉら!待て!!!」
「うわぁ!!!」
鷹村の左手が瞬時にの左脇腹にフックのように引っかかり、
右手での左肩から首にかけてをガシッと鷹村に抱え掴まれた。
そしてずりずりと鷹村の座っているベンチへと運ばれる。
逃げるものを追う。
反射神経でボクサーに勝てるわけなど無かったのだ。
そんなこんなでは捕まり・・・。
「なーに変な行動して、逃げ出そうとしてんだよ。」
はベンチに座っている鷹村に腹と首元を両腕で抱え込まれ
鷹村の大きく開いた両足の間のベンチスペースに強制的に座らされ言われる。
「は、離して下さい〜っ!!!」
はじたばたともがき抜け出そうとするが、
そうすると余計苦しくなるばかり・・・。
「だから何、変な行動したかって聞いてんだよ。あ?」
鷹村は説明しろ。と言う。だか単に今の状況が楽しいだけだったりも・・・。
と、一歩、青木、木村等々は思う。
「あ〜・・・一歩君助けて〜。」
とは言葉を濁し、一歩に助けを求める。
「あはは。」
が、一歩には笑って返された。
分かっている。鷹村に何か言えるのは会長位だって事を・・。
「よーし、じゃあこのまま乳揉むか。」
すると、鷹村は言い出した。
「ぎゃーー!!わかりました!!言いますよ!!言います!!!」
は涙ながらに絶叫する。
「・・・・鷹村さんの・・髪の毛に触りたかっただけです・・。」
とは小さくつぶやいた。
「ああ?」
が、余計鷹村にはワケが分からなかったらしい・・・。
一歩達も不思議な顔をした。
そう・・これは女にしかわからない心境・・・。
「いつもシャワー後の鷹村さんの髪見てて触り心地良いんだろうな〜・・
とか・・思ってたんですよ・・・だから・・・触っちゃっ・・た・・ていう・・・。」
は何だか恥ずかしくなり、はは・・とうつむいた。
「・・・・・・・・・・・。」
そして鷹村は黙っている・・・。
が、次の瞬間。
わしゃわしゃっ・・
「うわ!」
は頭を撫でられた。
つまりさっきの鷹村と同じ事をされたのだ。
「な、何するんですか!」
は慌てて頭を抑えるが、鷹村はずっとわしゃわしゃの髪を触っていた。
「な・・何・・・・。」
が焦っていると・・。
「ああ・・確かに人の頭触るのって良いな。」
と、鷹村は言った。
(何!?あたし試されたの!!??)
は、はわっ!と思う。
しかもその間もずっと鷹村はの頭をわしゃわしゃしていた。
「ちょ!鷹村さん!!これから帰るんですからぐしゃぐしゃにしないでくださいよー!」
とは叫ぶ。
「ああん?」
「もう、良いでしょ!離して下さい!!」
とは隙を突いてばっと鷹村の腕の中から逃げた。
そして髪を整える・・・。
「もー、頭ぐしゃぐしゃになっちゃったじゃないですかー。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
しかし、頭を触られて、少しふわっとした髪を
少し悲しげな顔をしながら直しているの姿に
さっきの鷹村に対する同様、皆心を奪われていた・・・。
恐るべし無造作ヘアー・・・・。
「お持ち帰りだ。」
と、その光景を皆、同様見ていた鷹村は突然そう言うとを小脇に抱えた。
「へあぁ!?何!?何ですか!?」
ワケが分からず焦る。
「誰か鷹村さんを止めろ!!!」
「本気だ!!!」
「会長!会長ー!!」
そしてあわてふためく木村達がいた・・・。
終。
2003/06/10....