一年に一度。
その日は、よく考えれば最初からおかしかった。
「今日は鷹村さんの誕生日ー。プレゼント持ったし、さて、行くか。」
は独り言をつぶやきながらジムへ行く準備をしていた。
「おはようございますー。」
はガラっとジムのドアを開け、挨拶をした。
「おーちゃん。」
「ちぃーす。」
「おはよー。」
中には既に一歩や木村、青木などがいて、それぞれトレーニングに励んでいた。
「・・・・・・・・。」
しかし肝心の人の姿はない。
「一歩君、鷹村さんは?」
は一歩に聞いた。
「え?鷹村さんならロードワークに行ったよ。」
「・・・・・・・そっか・・。」
はプレゼントの入った箱を気にしながら
まぁ、後でいつでも渡せるか。と、思い、仕事の支度をした。
しかし、それが甘かった。
「、ちと使いに出てきてくれぬか。」
「あ、はい。わかりました。」
バイトが始まってすぐは会長にこの書類を
直接、電車で数駅のジムへ届けるように言われた。
そしては言いつけを守り、
電車に揺られながら書類を渡しに行った。
「すみませんー、鴨川ジムの者ですが・・。」
「あ、はいーどうも。」
は書類を渡すと、早々にそのジムを立ち去った。
そして日も暮れ、辺りが暗闇に包まれながら
帰りの電車を待ちながらふと思った
あれ?今日あたし鷹村さんに会ってないじゃん・・・・。
と。
そういえばジムに来た時もいなかったし
さっきジム出るときもいなかったし
もうこんな時間になっちゃったし・・・・・。
やば、今日会えないんじゃない?
はふとそう思う。
しかし、まあ・・・帰ればいるか。
ちょうどシャワーから上がって帰る所だろ。
とは電車に乗り込み、揺られながら鴨川ジムへと戻った。
「ただいま戻りましたー。」
そしてジムに戻り会長に報告して、
がさて、鷹村さんは・・・・。
と、鷹村の姿を見つけようとした時だった。
「鷹村さんまだ外走ってんのか?」
「はい、減量中ですからね、何か落ちないらしくて・・・・。」
という木村と一歩の言葉が聞こえた。
「鷹村さんまだ帰ってきてないの?」
は二人に話しかける。
「ああちゃんお帰り。そうなんだよー、
鷹村さん今日誕生日だってのに走りっぱなしでよぉ。」
「これじゃあお祝いも出来ませんね。」
一歩と木村は顔を合わせる。
はそうなんだ・・・・。
と、思いながらもう帰る時間だが、
鞄に入れた鷹村へのプレゼントを鞄の上からそっと握り締めた。
明日でも・・・良いかな・・。
とは思った。
けれど・・・・・・やはり今日でなくては駄目だ。と、思う。
「じゃあ皆さんお疲れ様でした。私は仕事残ってますんでまだいますねー。」
は鷹村を待つことにした。
実際、お使いに出てたので掃除もしてないし、
は気長に待つことにした。
しかし。
チッ・・チッ・・チッ・・。
時計の針の音がジムに響く。
掃除をしたり雑務をしたりしたが鷹村は一向に帰ってこなかった。
もう少し待とう・・・。
はもうすることもないのでベンチに座りながらぼーっと鷹村を待った。
「・・・・・・・・・。」
しかし、鷹村は一向に戻っては来なかった。
もう、ジムも閉める時間だ。
は何かあったのでは?
と、少し不安に襲われた。
そしてその不安は徐々に大きくなり・・・・・・・。
ガラッ!
は居ても立ってもいられずジムを飛び出した。
そして走った。
いつものロードワークのコースを歩いたり休んだりしながら走り、
は息を荒げながら川を渡る橋へと差し掛かった。
すると・・・・。
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・。」
は、あ。という顔をする。
「鷹村さん!」
は叫んだ。
が走ってきた反対の方向から鷹村が走ってきたのだ。
「・・・・あ?」
鷹村はいきなり名前を呼ばれ顔を上げる。
「・・・・・。」
そしていきなり目の前に現れたに少しきょとんとした。
「もー!どこ行ってたんですかー!」
は、ぜぇはぁと息をしながら鷹村に行った。
「何ってロードワーク・・・。」
「はい!」
鷹村の言いかけた言葉を遮って鷹村にずいっと何かを差し出した。
「あ?」
鷹村は何だぁ?という顔をする。
「今日、七夕ですよ!鷹村さんの誕生日じゃないですか!」
は叫んだ。
「プレゼント用意したのに会えなくてすれ違ってばっかでもう、汗だらだらですよ。」
は汗を拭いながら文句を言う。
「・・・・・・・・・。」
鷹村はきょとんとしていた。
「・・・・・・ほれ。」
そして鷹村は自分の持っていたタオルをの顔に投げた。
「わっぷ!」
はいきなり顔をタオルで覆われ驚く。
「ちょっと鷹む・・・。」
らさん。とは文句を言おうとしたのだが・・・。
「あんがとな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
ふいに向けられた鷹村の笑顔には少し赤くなった顔をタオルで隠し呟くのだった。
「・・・お誕生日おめでとう御座います・・・・・・。」
終。
2005/07/07....