初めての会話。
「あああ・・・・。」
某大阪の高校の廊下をとぼとぼと歩く少女が一人・・・。
「遅くなっちゃったなぁ〜。」
彼女の名は。この高校の生徒である。
現在時刻は夕方五時過ぎ。
もう、他の生徒はほぼ下校し、廊下もシンと静まり返っている。
そんな中をは一人とぼとぼと自分の教室へ向かい歩いていた。
何故歩いていたかというと、担任に呼び出され
別にお説教ではないのだが色々と話をしていたのだった。
そして教室の前につくと、ガラっとドアを開けた。
「・・・・・・・・。」
そしてじっと何かを見つめた・・・。
「スー・・・・・・。」
静かな薄暗い教室の中にただ一人、生徒が机に突っ伏し寝ていた。
「・・・・・・・・。」
はその生徒をよーく見る・・・。
(ひぃ!)
そしておののいた。
(あの・・あの何時も後ろから見ていてふわふわだろうな〜
触りたいな〜と思っている髪は・・・・・。)
の予感は的中した。
そう、教室で一人寝ていたのはの前の席の千堂武士だった。
たかがクラスメイトに何を驚く?とお思いの方もいらっしゃるだろうが
千堂武士は只者ではない・・・・。
ここら一帯の不良に一目置かれる腕っ節の強い不良少年だ・・・。
よほど強いらしく廊下を歩くと人は避け、
不良っぽい人たちは並んでお辞儀をするくらいだ。
そして当然、風貌も怖い・・・。
特にギラギラと睨み付ける鋭い眼が誰からも恐れられていた。
(髪の毛は可愛い触りたくなるような感じしてるんだけどな・・。)
そしてもあまり・・良く知らないのでそんなに恐れてはいないが
風貌が怖くて結構避けていた・・。
たとえ席が後ろでも、話したことなど一度もなく、
皆同様自分も恐れている千堂があそこで寝ている・・・。
もし、起こしたらどうなるか・・・。
は考えて少し青ざめた。
「うるさいわぼけぇ!!」
「人が気持ちよーねとんのに・・」
というあのドスの聞いた声で叫ばれてその後・・・。
(考えるのをやめよう。ようは起こさなきゃいいんだ。)
は出てくる冷や汗を抑えながらそう言い聞かせる。
されどの鞄は千堂の後ろの席に・・。
この日ほどこの席を恨んだことはなかった。
(前から行くか?後ろから回っていったほうが良いか・・・。)
は考える。
(よし、後ろから。)
そしてはそう思うと教室の窓際の隅の席にある自分の鞄を取りに向かった。
そーっとそーっと音をたてないように・・。
はそろそろと歩く・・・。
教室には千堂の寝息だけが響く・・・。
そしては見事鞄を取り、そのまま180度回転して戻ろうとした時。
ガコン!
「うわあっ!!!」
ガッターーン!
やってしまった・・やってしまった最悪の事態・・・。
は戻ろうとして進んだ時に横にある机に足を引っ掛け横転した。
そして机も倒れ大きな音が鳴り響いた。
ということはもちろん・・・・・。
「ん〜・・?」
関西弁の語尾のイントネーションの寝ぼけ声が静かな教室響いた。
(ひぃーー!)
は駆け出して逃げてしまおうか。
とも思ったが、じんじんする膝では急に走り出すことなど無理。
が硬直して床に這いつくばっていると・・・。
「んー・・ふぁ〜・・・・あ?・・・・何しとんのや。」
後ろから声をかけられた。
「・・・・・・・・。」
が振り向くとそこにはあの鋭い眼で自分を見つめている千堂がいた。
(ばっちり起きてる・・・・・。)
は青ざめるが・・・仕方ない。
別に殺されはしないし、謝ればわかってくれる・・。
は自分にそう言い聞かせ口を開いた。
「あ・・転んじゃって・・・ごめんなさい・・・。」
は引き攣った笑みを浮かべる。
「・・・・・なんであやまんのや・・。」
「いや・・起こしちゃったから・・。」
千堂の言葉に少し首を傾げながらは言った。
「・・別にそんくらいで怒りゃせんわ・・・
おーおー派手に転びよったな〜・・ほら、立ちぃや。」
千堂はそう言うとに近づき手を差し出した。
(え・・・。)
は唖然とする。
あの千堂武士が転んだ私に手を差し伸べてきた・・・。
(何?この紳士っぷり。多分、他の普通の男子だったら手差し出すなんてしないわよ・・・?)
がぼーっとしてると。
「ほれ!はよ立ちぃや!」
いつまでもなんの反応もないに、じれったくなった千堂は吠える。
「ああ!はい!」
がそう言うのと同時に千堂はの二の腕を掴み
無理やり立ち上がらせた。
「はぁ〜・・あ・・てか、何で誰もおらへんのや?」
そして千堂はつぶやいた。
「は?いや・・もう下校したと思うんですが・・。」
「下校?・・・・。」
千堂は外を見る。
沈みかけた夕日が綺麗に輝いていた。
「のわぁ!!今何時や!?」
「・・・五時半です。」
「柳岡はんにしばかれる!!いかな!!!」
千堂はそう言うと中身が入ってなさそうな鞄を持ち、
バタバタと教室のドアへと向かった。
「ほなな!!」
そして嵐のように去っていった・・・。
「・・・・・・・・・・・。」
は薄暗い教室に一人ぽかん・・と立ちすくんでいた。
「・・・・・・ん?」
そしてはあることに気づく。
(あたしの名前・・・・。)
関わりなど全く無い自分の名前など知ってるはずがない・・。と
思っていたのだが・・・・。
(・・・・千堂・・さんって・・・実は結構怖くないのかも・・・?)
は千堂の紳士っぷりや意外なことを知り一人薄暗い教室でそう思うのだった。
(てか、柳岡はんって誰・・・?)
そして首を傾げた。
終。
2003/04/03....