行事は学生生活の花。04
そんなこんなで係りは楽々と決まったのは良いのだが・・・・・。
「さん、これよろしくな。」
「あ、はい!」
一番楽なパンフ制作も・・・結構きついものだった・・・・。
(あ〜・・・後、校長の言葉貰って〜、各クラスの出し物の表切り貼りして〜・・・。)
とはお昼の時間、この後の昼休みにやることを考えていた。
パンフ制作も二人でやればそうでもないのだが・・・・・。
は全てを一人でやっていた。
生徒会室での係り決め後、パンフの用件は当然全てに伝えられ、
も最初はそれを楽々一人でこなしていて・・
千堂があれっきり実行委員のことは何も聞いてこないので、まぁ、ちょうど良いか。
と思いやっていたのだが・・・・・・・・。
だんだん終盤にもなるときつくなってきて・・・。
今や朝、早めに学校へ来て、昼休みも使い、放課後も少し残り。
家で出来ることは家でやり・・・・・・・。
と、切羽詰られていた。
でも、こなせないわけじゃない。
だからは頑張っていた。
「えーっと・・・これはクラス順ね・・・。」
は少し、意識を飛ばしながら紙と向き合っていた。
「・・・・ちょお委員長・・・と千堂に実行委員て酷かったんちゃう?」
「あー・・・そやのぉ〜・・・まぁ・・・大丈夫やろ。」
だからはそんな自分を見ながらの友達と委員長が
そんな会話をしているとは知るはずも無かった・・。
そして委員長は相変わらず。
そして月日は過ぎ・・・文化祭三日前・・・。
「出来たっ!!」
は人気の少ない教室でそう叫んだ。
ようやく、何度も直しをくらったパンフレットの完璧と思われる
見本誌が出来たのである!!!!
これでオッケイが出れば後は刷って製本!!!!
とは喜びながらそれを持ち、生徒会室へと向かう。
そして出た結果は・・・。
「うん、これで大丈夫やね。」
だった。
「はい!有難う御座います!!」
はうきうきしながら見本誌を手元に戻す。
「あ、それでコピーは1000部で各クラス80部製本してもらうから、
コピーはコピー室の使って80部づつに分けといてや。」
「・・・・・・・・・は・・い。」
しかし、その言葉でどん底に突き落とされた・・・。
(一人でコピーするの?1部20ページちょいが
1000部・・・・・しかも製本も80部・・・。)
は生徒会室の扉を閉めてから呆然とした・・・・・。
しかし!時間は待ってくれない!
(だ、大丈夫!!コピーすると枚数表示されるから
八十枚ごとに取ってどんどん並べておけば!
後は80部の製本だけど・・・・・だ、大丈夫大丈夫!
勝手に折ってくれる製本機械とか学校にあるし!!)
とは、後、三日だ!三日で終わる!!と自分に言い聞かせるのだった。
そして翌日のは・・・・。
朝、コピー室。
昼休み、コピー室。
放課後、コピー室。
と、時間のある限りコピー室という
コピー機が二台ある狭い部屋にこもり、コピーしまくっていた。
もう時間がないのだ。
文化祭は明後日に迫っていた。
今はもう放課後、明日までに各クラス製本・・・折って、ホチキス止めしなければならない。
でも、コピー室に分けて置いておけば明日各クラスの実行委員が
取りに来て製本してくれると言うことなので、
はとりあえずコピーだけして後は自分のクラスの
80部を持って教室に戻り、製本すれば全てが終わる。
(終わる・・終わる・・終わる・・・。)
はひたすら終わることだけを考えてコピー機に向かっていた。
コピーしてる間は何もすることが無いので、コピー機を見つめ
どこかイってる眼をしたは、時折、入ってくる先生方を少し驚かせた。
そんなこんなで時は進み・・・・・。
「終わった!!!」
なんとかコピーは終わった。
「終わった〜!後は80部製本すればオッケイー!」
はコピー室で思わず声に出して喜んだ。
さぁ、後は製本。
とは明日にすれば良い物を、明日、皆に手伝ってもらえば良い物を、
もう無我夢中になっていて、文化祭の用意で下校時間が大幅に遅くなっていることもあり、
は遅くなってでも今日中に終わらせる気でいた。
「よいっしょ・・・・っと。」
そしては80部分の紙を持ち、教室へやってきた。
「あ。」
そしてはまたか・・・・・。と苦笑した。
「スカー・・・・。」
達の出し物は教室の外なので、皆は外で準備していて、
誰もいない教室にはまた、千堂が一人寝ていたのである。
(起こさなきゃ・・・。)
また『柳岡はん』て人に怒られちゃうだろうからね。
とは思いながら大量の紙を机の上に置き、千堂の方へ近寄った。
「千堂さーん、千堂さん。もう放課後ですよー。」
の言葉に・・・。
「ん・・・・ん〜。」
と、千堂が寝ぼけ眼でを見た。
相変わらず寝起きのお顔が可愛いことだ・・・。
とが思っていると。
「おう・・・・・何や〜?」
と、まだ寝ぼけて眼をこすっている千堂が言った。
「千堂さん。もう五時過ぎてますよ。『柳岡はん』に怒られちゃうんじゃないんですか?」
は言う。
「・・・・おわ!そうか、もう放課後か。ほな帰らんと・・・・・・。」
と、千堂は言うが・・・・。
疲れきったの顔と、紙やなんかでぼろぼろの手と、
その背後にある大量の紙を見ていぶかしげに言った・・・。
「お前はこんな時間まで何しとったんや?」
とは聞かれたことに素直に答えた。
「あ、実行委員の仕事でパンフレット作りですよ。
やっと見本誌出したらオッケイが出て、今コピーしてきてこれから製本すれば終わりなんです。」
と、終わりが見えてきてうきうきと。
だから予想もしなかった・・・この後の千堂の反応を・・・・。
「実行委員て・・・わい何にもせんかったで?」
「あ、はい。私一人でやりましたから。」
「一人て・・・・・」
すると千堂の顔が途端に険しくなった。
「何でわいに手伝わせんかったんや!!!」
そして、千堂のドスの聞いた声が静かな教室中に響き渡った・・・。
その迫力は並のもんではなく・・・。
「・・・・・・・・・・。」
はビクッ!と瞬間的に体を動かしたあと・・・ただ呆然と立ち尽くしていた。
「せやからここんところずっと何かしてたんか!?
そんな疲れきった顔しおって!何でわいに言いへんのや!!!
わいの仕事でもあるんやろ!?」
「・・・・・・・・・・。」
千堂の怒声は音量はそのままで続いた。
そしてはただ・・・・呆然としていた・・・・。
「わいはなぁ!そう言うことが大嫌いなんや!!
ちゃんと自分に当てられたもんはきっちるやる!
それを一人で背負い込んでそんな疲れた顔しおって!
手ぼろぼろにしおって!!なんやねん!!!」
千堂はいつの間にか立ち上がりに叫んでいた。
そしては理解する・・・。
ああ・・・千堂さんは・・・こういう人なんだ・・・・。
と。
千堂武士という人を・・・・。
そう理解したら・・・・・・思考回路が働いてきたら・・。
「・・・・・・・・。」
の頬に涙がつたった。
「・・・ご・・ごめん・・なさい・・・。」
はぼろぼろ涙をこぼしながら言う。
「ごめんっ・・なさい・・・ごめんなさい・・・・。」
と、しゃくりあげながら言った。
何故、涙が出たのか・・・・。
それは初めて千堂から怒られて怖かったせいだろうか・・・・・。
声量とドスのきいた声に驚いたからだろうか・・・・・。
疲れていたからだろうか・・・・。
涙がぼろぼろとあふれてきて・・・とまらなくて・・・・。
「っ・・・くっ・・ひっく・・・・。」
は手を眼にあてて泣きじゃくった。
「・・・・・・・・・・。」
千堂はそんなを見つめていた・・・・。
が泣き。
千堂は見つめ・・・。
そんな時間が・・・・しばらく続いた・・・・・。
「・・・・・・はぁ・・・。」
そしてしばらく経ちの涙がおさまった頃、
はそう一息つき・・・・恐る恐る千堂を見た・・・。
「・・・・・・・・・。」
千堂はまだむすっとしていた。
しかし・・・先ほどのような殺気は感じられなかった。
「・・・・後の作業は何が残ってんねん。」
と、千堂は言う。
「あ・・・製本・・・だけです。」
とも答えた。
「製本わいがやるからお前は帰っとき。」
千堂はそう言うとの背後にある紙を折る機械で折られた、
後は並べて閉じるだけのパンフの紙へと向かった。
「え・・・・いや、あたしも・・・。」
とは言うが・・。
「・・・・・・・・。」
千堂に睨まれた。
でも・・・・何故かまだ千堂と一緒にいたかったのである。
「じゃ、じゃあ80部あるんで、私30部製本するんで、
千堂さん50部製本してください!それなら良いですか?」
とは言う。
「・・・・・・・・20部や。」
千堂はに背を向け、紙を並べながらしばらく黙り込み・・・そう言った。
「・・・・はい!」
そしては嬉しそうに笑顔でそう言った。
そして二人の製本作業は始まった。
机に10枚少しの紙を順番に並べてぐるぐる回りながら一部づつ集めていく。
そしてそれを一つの机に縦横縦横と重ねて置いていき、
それをホチキスで留める。
夕日がもう沈みオレンジ色が薄くなり、暗くなっていく教室の中で、
と千堂は二人、机の周りをぐるぐる回っていた・・・。
「・・・千堂さん・・・柳岡さんに怒られるんじゃないんですか・・・?」
は回りながら千堂に言う。
「あー・・・まぁ、試合もちこうないし平気やろ・・多分。」
と、千堂は言う。
「柳岡さん・・・・って・・・ボクシングジムの人ですか?」
は聞く。
「そや。わいのトレーナーや。」
千堂は答える。
「千堂さん試合とかするんですか?」
「当たり前や、プロボクサーやで。」
「え!プロ!?」
「なんや・・・。」
「い、いいえ・・・どおりで強いですよね・・・。」
「・・・わいのパンチくろうたら皆のびてしまうわ。」
「・・・・・そんなに強いんですか・・・・。」
と千堂はそんな会話をしながらぐるぐると回った。
「あ、20部終わった。」
そして量の少ないはそう言い。
「部屋暗くなりましたね。電気つけて私、ホチキス留めしますね。」
ちゃんと千堂の20部の言いつけを守り、そう言って電気をつけた。
そして、縦横に重ねてあるパンフの山から20部を持ち、
椅子に座り、ホチキス留めを始めた。
パチン
パチン
と、今度はホチキスの音だけが響いた。
「・・・・・・・・・。」
がちらっとまだ机の周りを回っている千堂を見ると・・・。
「・・・・・・・・・・・・。」
何だか凄いスピードで回っていた。
おまけに全然息が乱れてない。
これもボクシングのおかげなのか?
とが思っていると・・・・。
「よっしゃ!終わったで!!!」
と、千堂が叫んだ。
どうやらもう終わったらしい・・・。
「千堂さん・・・早すぎです・・・。」
はホチキスの手を止めてぽかーんと見ていた。
「そか?」
と、千堂は残りの60部を持っての向かい合わせになってる机の椅子に座った。
そして二人は向かい合ってホチキス留めをしようとする・・・・が。
「ああ!何やこれ!ずれてんやんか!」
千堂が叫んだ。
「へ!?」
は焦る。
「見ぃや、お前ずれとんでー。」
と、千堂はのホチキス留めしたパンフレットを見せて、ここ、ここ。と指を差す。
の留めたパンフは・・本当に少しずれていた。
「・・・・い、良いんですよ!!少し位ずれてたって!!」
とは言いながらまたホチキス留めを再開する。
「あ!またずれとる!」
するとまたもや千堂が言った。
「・・・・・・・・・。」
その言葉にはむっとし、じゃあ千堂さんはどうなんだ!
と、千堂のホチキス留めを見る。
千堂のホチキス留めは・・・。
トントン。
と縦を揃え。
トントン。
と横を揃え。
パチンパチン。
とホチキスで留めた。
それはそれはズレの無い、綺麗なパンフレットの出来上がりだった。
同じ作業をしているのに・・・
(負けた・・・・。)
とは机につっぷす。
「ん?何や、どした?」
千堂は何も気づかず、そう言う。
「・・・・細かい作業って・・意外と男の人の方が得意だったりするんですよね・・・。」
はうなだれながらそう言う。
「はは、お前不器用やもんなぁ〜。」
千堂は、そう言って笑った。
「・・・・・・はは。」
その千堂の笑顔に・・もつられて笑った。
二人でやる製本作業は・・・とてもとても楽しかった・・・。
早く終われと考えていたのに・・・・このまま終わらなくてもいいかも・・と思った。
そして千堂さんは良い人だった・・・・・・。
文化祭のおかげで得たものは。
とてもたくさんの良い事だった。
終。
2003/08/09....