風物詩。













「あー・・・あちぃ・・・。」


「鷹村さん・・・。」


「あ〜?」


「別に良いっちゃ良いんですけどね・・パンツ一丁は止めましょうよ・・・。」




ここは鷹村の部屋。
昼ご飯を食べ終え、食器を洗い終わったは、
窓際でパンツ一枚にうちわをバタバタ扇いでいる鷹村に、
そう言った・・・・。


「んだよ、別に良いだろ。俺様の肉体美が見れて良いじゃねぇか。」


鷹村はそう言う。


「いやー・・あたしは良いんですが、その格好で窓際に居ると
通りすがりの人とか・・・ある意味露出狂で警察来ますよ・・。」


はは、とは空笑いした。


「しょうがねぇだろ、暑くてたまんねぇんだから!じゃあお前がこの暑さなんとかしろ!」


「暑さなんとかしろったって・・。」


は手をタオルで拭きながら畳の部屋に戻ってきた。

「じゃあエアコンでも買ったらどうです?
この間のファイトマネー出たんじゃないんですか?」

さりげなく鷹村に麦茶を渡しながらは言う。


「あー・・・・あれつかっちまった。」


そんなさりげなく優しいに鷹村は言う。


「ブッ!・・・・もうですか!?」


は口に含んだ麦茶を噴出しそうになるのをやっと抑える。


「あ〜〜〜・・・くそ・・あちぃなぁ・・・・・・・・。」


鷹村は外を見ながら言う・・・段々苛ついてきたようだ・・。
眉間にしわが寄っている・・・。




「・・・・・・・・。」




そんな鷹村を見てはふぅ・・とため息をついた。





「あ!」


そしてある事を思いついた。


「あ?んだよ。」


突然叫んだに鷹村は聞き返す。


「いや、なんでも。ちょっと用事思い出したんで出かけてきますね。
後でもっかいきますから!」


はそう言うと、バタバタと鷹村の部屋を出て行った・・・。


「・・・んだあいつ・・。」



鷹村はそうつぶやきながら畳の上にごろんと横になった・・・。











「ん・・・・。」


ふと鷹村は眼を開ける。
どうやら眠っていたらしい。

ふぁ〜とあくびをして起き上がり、部屋を見渡す。

「・・・・・・・・。」

そこには居なかった。


(まだ帰ってきてねぇのか・・・。)


鷹村はそんな事を考えながらがしがしと頭をかく。
トレードマークのリーゼントが崩れ、髪が下りる。


日は西に傾きかけ、部屋を綺麗なオレンジの色が包んでいた。


すると・・。


ガチャ。と、ドアの開く音がする。




「あ、戻りました!鷹村さん!」



部屋に入ってきたのはだった。



「おう・・・・て、お前何買って来たんだよ・・・。」



鷹村は部屋に入ってきたを見て、怪訝そうにそう言った。

は両手に3つ位紙袋やビニール袋をぶら下げて帰ってきたのだ。
そして暑そうに、額に汗をかいている。

「ふふ。良い物ですよ。」

語尾にハートマークが付きそうな感じには微笑みながら言う。
そして、袋の中身を開き始めた。




「えーっと、これが金魚鉢で、下に敷く赤玉。で、これがエアープランツ。
あと、蚊取り豚に・・・これが風鈴!そしてこれが・・・・・。」




がガサガサと取り出した最後の物は・・・。




「じゃーーん!浴衣です!」




が取り出したのは、男物の濃い藍色のシンプルな浴衣だった・・・。


「・・・・・あ?」


鷹村は意味が分からないという風に疑問符をつけた言葉で返した。



「あ?じゃなくて、買ってきたんですよ。鷹村さんに!」



は嬉しそうな顔で微笑む。


「鷹村さん暑い暑いって言うから浴衣と、夏の涼しげな物を。はい、これ着てください。」


はそう言うと鷹村に浴衣を渡した。


「・・・・・・・・・。」


鷹村は暑いからいい。と、思ったが、こんだけの物を、
この暑い中駆けずり回って買ってきた、しかも結構金がかかっただろう思われ、
何より嬉しそうなを見ると・・・・・・・流石の鷹村も拒否は出来なかった。


「・・・しゃあねぇな・・。」


と、鷹村は言うと、パンツ一枚に浴衣を羽織った。

これどうすんだ?と、色々と話しながら鷹村は浴衣を着た。


「これで良いのか?」


鷹村の言葉に・・・・



「・・・・・・・っ・・・。」



は思いっきし、にやけていた。


(ヤバい!超似合う!超格好良い!!!)


は浴衣を着た、そして寝ていたので髪が降りてる鷹村を見て、
畳をバンバンと叩きたい位だった。


「っ・・・はい!おっけーです!」


は何とか顔を取り繕って言う。

「・・・これ、袖めくって良いか?」

鷹村は袖が邪魔くさいのか、袖を肩の上までめくった・・・。


「っ・・・・・・・・・。」


そんな鷹村を見ては顔を俯けた。


(ヤバいヤバいヤバいヤバい・・・めっちゃ格好良い・・・・。)


は鼻血が出るんじゃないかという位、
格好良い浴衣姿の鷹村を見て、にやけが止まらなかった。


「じゃ、じゃあ、あたし風鈴とか、他のものつけますね。」


はなんとか取り繕い、そう言って心を落ち着かせた。




その後は金魚鉢に赤玉を居れ、エアープランツを入れて、
邪魔にならないテレビの上に置き、日が暮れ始めているので、
蚊取りブタに蚊取り線香をつけ、最後に風鈴を窓辺に付けようと、
窓の方を向いた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・。」




しかし、そこで固まる。
何故なら・・・・・・・


窓際には夕方のオレンジ色の綺麗な光に照らされ、
窓を開け、窓枠に座り、片足を乗せて、
袖は肩までめくり、うちわをパタパタと扇ぎながら、
どこか遠くを見ている浴衣姿の鷹村が居たからだ・・・・。

肩足を乗せてるため、浴衣の裾からちらちらと、鷹村の逞しい足が見える・・・・。



「・・・・・・・・・・・・・・。」



は立ち尽くして眼が離せなかった。

『絵になる。』という言葉はまさにこの事を言うのだとは思った。
もはや格好良くて悶えるどころじゃない。
この光景を写真に収めて一日中見ていたい。部屋に飾って置きたい程だった。


「・・・あ?どした?」


しかし、鷹村がじっと見つめるに気付き、声をかける。

「あ・・いや・・最後に風鈴付けようと思って。」

あ、あはは。とは笑顔で誤魔化す。


「・・・・・・・。」


鷹村の横に立ち、平静を装い、風鈴をつける・・ちりんちりんと、
風鈴の音だけが部屋に響く・・・何だか一人ドキドキしている。
何だか顔まで赤くなってるんじゃないかと、心配になる。
そして案の定鷹村が・・・・

「・・・何か、お前顔赤くねぇか・・?」

と、聞いてくる。

「え、あ・・日焼けじゃないですか?」

ヤバッ!とは思いは鷹村を見て笑って誤魔化す。
暑い中外に行ったから熱中症じゃねぇか?水飲んだ方が良いぞ。
と、らしくもなくに優しい言葉をかける鷹村だが・・・。

「っ・・・・・・。」

は、立って風鈴を付けている為、座ってる鷹村を見ると、
滅多にない、鷹村を見下ろす構図になり、上目使いと、
胸元がチラチラと見える光景には遂にギブアップした・・・。





「もう勘弁して下さい・・・・・。」




はそうつぶやき、更に真っ赤になるのだった。


「ああ?」


そして訳の分からない鷹村の姿があるのだった。





そんな夏の夕暮れだった・・・・。














終。