永遠はないと思いながらも。













「あー・・・今日は休みだーーーしあわせーーー。」


ジムが休みの日、事務員として働いているも休みなので、
一週間ぶりの休みをごろごろとしながら満喫していると、

「わっ!」

携帯が鳴った。
リラックスしていたので、驚きつつ、誰かと見ると、

そこには

『鷹村さん』

の登録名。


「え?何?今日、会う約束してないけど・・・・。」


そう思いながらが通話のボタンを押して、携帯を耳に当てると、


「・・・今すぐオレ様の家にこい・・・」


「え?」


低い、小さくつぶやくような声が聞こえたかと思うと、
ブツッと通話は切れた。


「え?何?どうしたの?」


は呆然としながらも、急いで鷹村のアパートへと向かった。







急いで支度をして、家を出て、走って鷹村のアパートに向かったので、
階段を上りながらはゼーハーと荒い呼吸を繰り返していた。


そして、鷹村のアパートに着くと、トントンと、扉を叩く。

「うわっ!」

ガチャッと、扉が開いた瞬間に、
抱え込まれ、アパートの中へと引きずり込まれた。

「え!たか、鷹村さん!?」

バタン!と、扉が閉められる。
どういう状況かとは戸惑っていたが、

抱きしめられているのは、
香りと、感覚と、一瞬見えたうつむいた鷹村の姿から、
鷹村だとわかっていたので、驚きつつも、ほっとしていた。


「うわあっ!」


すると、肩に担がれて、部屋の中へと鷹村はどんどん入っていく。

鷹村の様子がいつもと違うようだった。

「あの・・・・」

肩に担がれるという鷹村にしかされないような
貴重な経験をしていると、

そのまま、鷹村は布団に直行し、うまくを抱えながら、
布団にダイブして、掛け布団をバサッと二人の上にかけた。

そして、鷹村は暗闇の中に両手両足を巻き付け、
の首筋に顔をうずめて・・・黙り込む。


「・・・・・・・・。」


これは一体・・・・と、硬直しながらが戸惑っていると、




「・・・お前は・・・いなくなるなよ・・・・。」




という、小さな声が聞こえた。

は少し目を見開く。


「・・・・・・・。」


鷹村の今の心情はわからない・・・。

あの鷹村が、何か不安になったのか・・・
おそらく、甘えて・・・すがっているようで・・・。

こんなことは初めてだったのでは戸惑った。


「・・・・・・。」


はしばし考える。


鷹村は家庭環境や両親に恵まれていない・・・。

いや、恵まれていたのかもしれないけれど、彼の性格と合わなかった。

高校生からアパート暮らし・・・。

人間関係はおそらく、ジム関係者だけだろう・・・・。

あ、お姉さんたまに来てくれてるんだっけ。とは思考をめぐらす。


不安になっても、孤独を感じても、甘えられる人はいなかった・・・。

いたとしても、鷹村のプライドが許さなくて、甘えることはなかっただろう。

そんな彼が、おそらく今、何かネガティブな感情に襲われ、

自分に甘えて・・・すがっている・・・。


そして言われた、



『・・・お前は・・・いなくなるなよ・・・・。』



の一言・・・・。


「・・・・・・。」


は何だか嬉しくもあり、切なくもなった。

そして、今は恋人同士の二人だが、
この関係がこのまま続く保証はない。

永遠に変わらないものなどないとは思っているからだ。

だから、


「できるかぎり・・・そばにいますね・・・・・。」


と、小さく答えた。

すると、鷹村は更に手足にぎゅっと力を込めを抱きしめた。


苦しい苦しい・・・。と、思いながらも、

はひそかに苦くほほえみ、鷹村のサラサラの髪に手を置いた。



(鷹村さんが・・・いなくならないでくださいね・・・・。)



と、思いながら・・・・。







終。

2023/10/10...