出会えた奇跡。













『〜♪』



ある夏の夜。
は今日も鷹村の部屋でだらだらとテレビを見ていた。

鷹村は布団に寝そべり雑誌を読んでいる。

付き合って数年。
お互いにこの状態が当たり前になっていた。

そんな時にテレビから流れたありきたりなラブソング。
それは、



『この地球上で、何億人もいる中で、出会えた奇跡。』



という内容だった。

ベタなありきたりな内容。


しかし、何故だか今のの心に引っかかった。


(そうだよなぁ・・・確かにたまたまバイトした先で出会わなければ、
こうして一緒にいることはなかったんだよなぁ・・・。)


は鷹村の背中を見つめた。





たまたまバイト先で出会った。


この地域に住んでなければ出会わなかった人・・・。


日本に生まれたから出会えた・・・。


日本に生まれてなかったら、多分、存在も知らなかっただろう。


日本に生まれてたら、ニュースで見て存在は知っていたかもしれない。


でも、こんな関係になることはなかっただろう。


海外に住んでたら、元々ボクシングに興味がなかったから、
多分、存在も知らずに死んでいた。




(確かに奇跡かも・・・・。)




ベタなラブソングの歌詞がじんわり心に沁みた。


そしては思った、



日本に生まれてよかった!

この地域に住んでてよかった!

あの時、バイトすることになってよかった!!

こうして鷹村さんと一緒にいれてよかった!!!


と。


そう思ったら、マンネリ化して最近、湧きあがらなかった
鷹村への想いが、ぶわっと身体に湧きあがった。



「鷹村さん!!!奇跡に感謝ですね!!!!」


「うぉ!!あんだよ!!?」



感極まったが寝ている鷹村にダイブして抱きつくと、
鷹村は驚いて振り向いた後、頭に疑問符を浮かべていた。



「へへへ〜。」



嬉しそうに逞しい鷹村の背中に抱き着いたを、
鷹村は訝し気に見て、


「あ?もうヤりてぇのか?」


いつも通りの言葉を真顔で発したのだった。





終。

2025/07/13...