あたいのロッキー。













それは学校が終り、帰る頃を見計らってのいつもの光景である。









「ローーーーーッキーーー!!あーそーぼー!!!」










そう、千堂商店にいつものあの赤い鼻をした少年や、赤いスカートをはいた女の子や
その他諸々のいつもの子供達が千堂商店にやってきたのである。


そしてそう叫ぶと・・・。






ガラッとしばらくすると店と家の境界線の
引き戸が開いた。






「なんやまた来たんかい、クソガキども。」






そこに現れたのは上半身を斜めにして顔だけ出した
ロッキーこと千堂武士。

千堂はうざったそうな顔をしてそう言った。




「なー!ロッキー!遊ぼうや!!」

「遊ぼう遊ぼう!!」



子供達は千堂のキツい言葉はいつもの事で気にせず、
千堂が現れるとわらわらと千堂の元へ寄って来た。




「いやや、めんどい。」



と、千堂は返し、




「なぁー、遊ぼうやー・・・。」




と、赤鼻の少年が引き戸に手をついた時だった。





「・・・・・・・・・・・・。」




何気なく部屋の中を見た少年は・・・・・・。










「・・・・・・あ・・こんにちは・・・。」









部屋の中でジュースを飲んでいたと眼があった。

その瞬間。








「ロッキーが女連れこんどるぞーーーーー!!!」








大絶叫した。





「は!?おいちょお、待ち!!」



と、千堂は焦る。
しかし少年は・・・。




「女やーー!!!若い女がおるでーー!!!」



と、友達たちに叫ぶ。




「えー!ほんまか!?」

「わいにもみせぇ!!」

「なんやなんや!!!」




と、少年達はどわぁっと引き戸に押し寄せた。



「な!お前ら上がってくんなや!!!!」



千堂は子供達に押し倒されながら叫んだ。







「ほんまや!女がおる!!!」


「なんやロッキーやっと彼女出来たんかい!」


「んー・・べっぴんさんやのうけど、まぁまぁてとこかの。」







「っ・・・だーーーーー!!!だからちゃうて!!!」






今度は千堂が叫んだ。





「何隠しとんねんロッキー。彼女が出来たなら言えばいいやんか。」


「みずくさいでー、わいらとロッキーの仲やのに。」





「お前らとわいの仲って何や。」



千堂は突っ込む。

そこへ・・・・





「あはは・・・あのね、私と千堂さんはただの友達だよ。」




は苦笑しながらつぶやいた。




『・・・・・・・・・・。』




沈黙する子供達。





「なんや違うのかロッキー?」



赤っ鼻の少年が聞いた。




「ああ、ちゃうちゃう。わいらは友達や。だからはよわいの上からどき。」



と、千堂は言う。


そう、千堂の上に子供達はのっていた。








「なんやー、女やないんかー、つまらんのぅ・・。」




「つまらんてなんや。」



「なんやなんやー。」と、千堂の上からどいて、
いつの間にか部屋に上がってきている子供達を追い返そうとはせず、千堂は言った。




「あはは。あたしを彼女と勘違いされちゃロッキーがかわいそうだよ。」




は上がってきた子供達に笑顔で言う。


「・・・・・・・・・・・・・。」


すると赤いスカートをはいた少女がいつの間にか
の横に、ドン。と座っていた。




「・・・・・・・・・・。」




その子はじっとを見つめる。



「な、何?」


は焦りながら笑顔で返した。
すると・・・。





「あんたロッキーの事好きなん?」





ブハッ!!!






場が落ちついて麦茶を飲んでいた千堂は麦茶を見事に吹き出した。



「な!何言うねん!お前!!!」



と、千堂は口元の麦茶を拭いながら叫んだ。






「ロッキーは黙っといて。これは女同士の話や。」





と・・・その少女は言った・・・・。




「で、好きなん?嫌いなん?」




その少女はに迫る。






「え・・・・・・・・・・。」





は言葉に詰まった・・・。






な、何このいきなりな質問は・・。
しかもなんでその二択なの?
まぁ、二択しかないけどさ・・・。

千堂さんは友達だから嫌い・・じゃないよ?
でも・・本人目の前に「好きだよ。」

なんて言えるわけないじゃない!




と、頭の中で考えていると視線を感じてふと顔を上げた。





「「「「・・・・・・・・・。」」」」





部屋が静まり返り、皆が自分の返事を待っている・・・。



「・・・・・・・・。」



千堂も麦茶を拭いていたタオルを口元で止め、
じっとこっちを見ていた・・。







い、いえん!!!絶対好きだなんていえん!!!!!!







は汗だらだらになってきた。



何か良い逃げ道は無いか・・・逃げ道・・逃げ道・・逃げ道・・・・・!






「あなたはロッキーの事好きなの?」






は質問を質問で返した。
ナイス!自分!とは自分で自分を褒めた。

すると・・・。




「あたいはロッキーが好きや!ロッキーのお嫁さんになるんやもん!!」




と、その少女は言った。





「だからロッキー取らんといてね!あたいのロッキーなんやから!!」





そしてそうつけ加えた・・・・。






「・・・・・・・・・・・・。」





その少女の幼いながらも真剣さには圧倒されていると・・・・。




「誰がお前のロッキーや!なんでわいの嫁がお前って決まっとんねん!決めるのはわいやつーの!」




と、いつの間にか立ち上がってその少女の後ろにいた千堂が、がぁ!とその少女を持ち上げた。



「きゃはは!やめてやロッキー!!」



その少女は笑いながら嬉しそうに微笑んだ・・・。



「あー!ずるいでお前だけロッキーに遊んでもろて!わいもわいも!!!」


「あー!俺もや!」


「ずるいずるい〜〜!!!」



と、子供達は立ち上がった千堂の周りにわらわらと集まる。






「おら!次は誰や!」





そんな子供達と、結局は遊んでいて楽しそうにしている千堂を見て、
はお膳に肘をつき微笑んだ。



「・・・・・・ふふ・・。」


















そしてその十年後・・・・・その少女を泣かす事になったのは・・・・言うまでもない・・・・。















終。


2004/06/28....