あなたとの関係。
*鷹村さんの女性関係の話なので嫌な方は注意です!!!*
「はぁ〜あ・・・・」
カンカンカン・・・と、少ししょぼくれて階段を上がりながら、
鷹村はため息を吐いた。
新しく好きになった女には拒まれて投げられる。
前からの彼女には怒鳴られ泣かれ、もう十日以上、ジム以外ではあっていない。
ジムで会っても話すのは用件のみで避けられている。
「なんでこのオレ様が!!!」
と、憤慨しながらアパートの自室前まで来ると、
トントントン、と、キッチンの明かりがつき、料理の音が聞こえた。
一瞬、姉かと思ったが、鷹村は期待を込めて、ドアノブを回した。
「あ、鷹村さんおかえりなさい。お久しぶりです。」
そこにいたのはだった。
鷹村は、いつも見ていた、自分の部屋の台所とという光景に、
思わず涙がにじんできた。
が、涙を見せるわけにもいかず、頭をふると、
「なんだなんだ〜!結局、オレ様が恋しくなって戻ってきたか〜!」
と、余計なことを発しながら上機嫌に部屋へと入る。
「・・・・まぁ・・・恋しいは恋しいですけどね・・・いなくてもいいですよ。」
「あ?」
すると、背を向けたまま、意味深な言葉を発する。
「『一緒にいると楽しいけど、いなくても別にいい。』鷹村さんは私の中でそんな存在になりました。」
くるっと振り向き、笑顔で包丁を持ってはほほえんだ。
鷹村はごくり、とつばを飲む。
「今までは『鷹村さん、大好き!』って、恋してたんでしょうね・・・。
でもね、雑誌のあるコラムを見たんです。そこに、自立した恋愛っていうのを見て、
ああ・・・これだな。って思ったんです。」
はそっと包丁を置く。
「鷹村さんと一緒にいると楽しくて嬉しいけど、
でも、いなくても私は別に平気。生きていける。
これからはそんな自立した恋愛をしようと思います。」
は再度ほほえんだ。
それは、清々しくすっきりとしたほほえみだった。
「・・・あにいってんだ?」
鷹村には理解出来なかった。
「あ、でもしばらくセックスはしません。ていうか触らないでください。
なんか気持ち悪いんで。」
ごめんなさい。とは申し訳無さそうに謝る。
「なにいってっかぜんぜん意味わかんねぇーんだよ!」
鷹村は怒鳴る。
「・・・怒鳴らないでくださいよー。なんかあれですよ、付き合う少し前に戻るみたいなもんですよ。」
「ちげーだろ!」
「んー・・・じゃあ、セックスレスになった熟年夫婦?」
「・・・・・」
鷹村は少し納得しかけた。
だが、『いなくても別にいい』という言葉がひっかかっていた。
「!」
鷹村はを抱きしめた。
強く、強く。
「あー・・・離してください。」
はげんなりした声でいう。
「オレ様が嫌いか」
「嫌いじゃありません」
「いなくても別にいいのか」
「はい」
「じゃあ、嫌いじゃねぇか」
「でも、一緒にいられるならいたいです。いたら楽しいです」
「いみわかんねぇ・・・」
鷹村はの首筋に顔を埋めた。
正直、今のは気持ち悪いという感覚しか感じない。
でも、気持ち的には、この人は相変わらずだなぁ・・・と、
仕方ないなぁ・・・という気持ちはある。
「できるだけ、一緒にいましょうね。」
そういうとは鷹村の頭をぽんぽん。と、なでた。
古びた蛍光灯がジジジと音を立てていた。
終。
2022.04.18...