おててつないで。
「ジュース買って来ますけど誰か他に欲しい人いますかー!」
はジムの入口で叫んだ。
只今、はジムでバイト中。
そして他の練習生やプロ達はトレーニング中。
そんな中、はたまにやる飲み物の買出しに行こうとしていた。
そして他の人にも聞いたのだが・・・・。
「あ!俺もー。」
「あ!俺も俺も!」
「俺も〜。」
「じゃあ俺も!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
と、わんさか希望者が出てきた・・・・。
総勢10数名・・・・。
「俺、コーラね。」
「俺、ファンタ。」
と、次々とお金を渡してくる。
「あ!駄目ですよ!全員スポーツ飲料ですよ!」
はお金を渡してくる練習生やプロ達にそう言い返す。
中には減量中の人も居るのだ。
何だよ〜。と言いながらもそれで良いよ。と妥協するジムの人達。
「・・・・・・・・・・。」
そしてジャラジャラとの手にたくさんある小銭・・・・。
それを見ては・・・・。
(・・・・こんだけのジュース一人で持てないよ・・・・。)
と、思った。
いくらコンビニで買って袋に入れて貰うからと言って
この額の飲料の入ったビニール袋は手に食い込んで痛い・・・。
(誰か一緒に行ってもらおうかな・・・・。)
と、は思った。
するとガラッとの立っていたジムの入口が開いた。
「はぁ〜・・・帰ったぞー・・・。」
そこにはロードワークから帰ってきた鷹村が。
「あ!鷹村さん!ちょうど良い所に!」
は喜ぶ。
「あ?」
「何で俺様がそんなパシリなんかしなくちゃいけねぇんだよ!」
事情を話すと、鷹村が怒鳴った。
「えー、良いじゃないですかー。」
「やだね。」
鷹村はケッと言い放ち去って行こうとする。
「んー・・・・・。」
がどうしようかと唸っていると・・・。
「あ、ちゃん、俺、行こうか?」
二人が話すのを見ていた木村が立候補した。
「え、本当ですか!」
は嬉しそうに返事をする。
「ああ、いいぜ。丁度、休憩しようと思ってた所だから。」
木村は言う。
まぁ、そんなのは真っ赤な嘘なのだが・・・。
一緒に買出しに行く。ということはジムの中では不可能な『二人っきりの時間』という訳である。
密かにに思いを寄せていて、ジム以外で付き合いの無い木村にとっては願ってもないチャンスだった。
「じゃあ行きましょうか。」
「ああ。」
そして入口を出ようとした瞬間。
「ぐえ!!!」
「!?」
鷹村が木村の襟を引っ張った。
「な、何してんですか鷹村さん!!!」
もがいている木村を、あわわと助けようとする。
すると鷹村がパッと木村の襟を離した。
「やっぱり俺様が行く。」
そしてそう言った。
「は?」
には何が何だかさっぱり分からなかった・・・。
「何すんですか鷹村さん!!!」
そして襟を放されてゲホゲホしていた木村が鷹村に文句を言う。
「うるせぇな!俺様が行くんだよ!・・・・・このむっつりめ・・・。」
そして小声で木村だけに聞こえるように最後につぶやいた。
「な!?」
なんでそこでむっつりになるんだよ!!!と、思いつつも
二人きりを狙っていた木村は言い返すことは出来ない・・・・。
「さぁ、行くぞ、〜。」
そして鷹村は口笛を吹きながら歩き出した。
「え!?あ・・・は、はい!」
「・・・・ったく・・・何だよあの人・・・ただヤキモチやいてるだけじゃねぇか・・・。」
そして出ていく二人を見て、木村は溜息を吐きながらつぶやくのだった。
「ありがとうございました〜。」
「う・・・重い・・・。」
「そうか〜?」
そしてコンビニで大量のスポーツ飲料を買い込んだ二人。
ビニール袋は二つで、両方同じ重さ位だ。
なので鷹村は片手で肩に担いで。
「・・・・・・・・・・。」
は両手で持ってよろよろしていた。
「おら、しっかり歩けよ!」
鷹村はのお尻を叩いた。
「わ!!・・・鷹村さん!こんな時までセクハラしないで下さいよ!!!」
は叫ぶが。
「セクハラじゃねぇよ、喝入れてやっただけだろ〜。」
鷹村は口笛を吹きながら先を歩く。
「ったくもう・・・・・。」
は顔を少し赤くしながら鷹村の後を歩き出した。
「オレ〜のパンチはダイナマ〜イト♪」
「・・・・・鷹村さん・・・その歌やめて下さい・・・。」
大声で歌いながら歩く鷹村の側で恥ずかしさに小さくなりながらはつぶやいた。
「ああ?良い歌じゃねぇか。」
鷹村は言う。
そういう問題じゃなくて・・・。
と、は思う。
「ていうか寒い〜〜〜!」
話を変えようとはそう叫んだ。
季節は冬。
しかも一番寒い時期だったりする。
「手寒くありません?鷹村さん。」
は鷹村に聞くが・・・。
「別に。」
という素っ気ない返事が来た。
「・・・・・・・・。」
鷹村さんに聞いたあたしが馬鹿だった・・・。
と、は少しイラつきながら思うが、
手は冷たく、その冷たい手にビニール袋が食い込み痛かった。
寒いせいで余計痛いのかな・・・と思い、
重いがなんとかビニール袋を片手で持つと、
もう片方の手を口元に寄せ、はぁ・・・と息を吐いて手を温めた。
そして今度は反対側を・・・・・。
「・・・・・おら、貸せよ。」
「え?うわ!」
そんなの行動を見ていた鷹村は、からビニール袋を奪った。
「あ、ありがとうございます・・・・。」
そんな鷹村の親切行動にが驚きながらお礼を言うと・・・。
「おら・・・・。」
と、鷹村はから奪ったビニール袋を元から持っていたビニール袋とまとめて持つと、
空いた片方の手をに差し伸べた。
「え?」
が何?と思っていると。
「手だよ手!寒ぃんだろ!?」
鷹村はの手をがしっと握った。
「え・・・・・。」
そんな鷹村の行動にの顔は徐々に赤くなっていく・・・。
「・・・い、いや、いいですよ!鷹村さん!」
は手を放してもらおうと手を引っ張るが、
「うるせぇ!黙って握られてろ!」
と、鷹村に一喝された。
「・・・・・。」
握られた手に自然と意識を向けてしまうが、はそのまま歩いた。
「・・・・・・・。」
しかし、ふと鷹村の手がとても温かい事に気付いた。
自分の手も温かくなって行く。
「・・・鷹村さんの手温かいですねぇ・・・。」
「あ?」
「あたしの手こんなに冷たいのに・・何でだろう・・・。」
はそんな疑問を口に出す。
「お前、血のめぐりが悪いんじゃねぇのか?」
すると鷹村からそんな答えが返ってきた。
「あ、そっかぁ。鷹村さんスポーツマンですもんね。しかも今走ってきたばっかりだし・・・・。」
と、は納得した。
「・・・・・・・。」
そして温かい繋がれた二つの手をは見る。
「・・・・・・・。」
ある事には驚いて、少し目を見開いた。
「・・・・鷹村さん手、大きすぎじゃありません?」
「ああ?」
「あたしの手すっぽり包まれちゃってるんですけど・・・。」
は繋がれた手を前に持ってきて見ながら言った。
鷹村の手に包まれたの手は手の先位しか殆ど見えない。
「・・・お前手小せぇなぁ・・・。」
今度は鷹村が言う。
「あたしは標準ですよ!!女の手なんてこれ位ですよ!鷹村さんが大きいんです!」
「・・・・まぁなぁ・・・オレ様は手もでかけりゃあそこも・・・・。」
「鷹村さん!!!!!」
鷹村がまた卑猥なことを言おうとしたのをは叫んで止めた。
(全くこの人は・・・。)
は少しため息を吐いた。
「あ、ジムに着きましたね。鷹村さん、もう手、放してくれていいですよ。ありがとございました。」
ほかほかに温まった手のお礼を言い、話してもらおうとするが・・・。
「このまま奴らに見せつけてやろうぜ。」
鷹村は、にぃ。と笑いそんなことを言った。
「は!?」
は焦る。
「何言ってんですか!嫌ですよ!!それに見せびらかすとか意味わかりません!!」
手を放そうとは抵抗するが、しかしがっちりと鷹村の力で握られた手はそう簡単にほどける物ではない。
「良いじゃねぇか!女っ気のない奴らに見せつけてやろうぜ!!!」
と、鷹村は楽しそうにズカズカとジムへと進む。
「ぎゃーー!嫌だってばーーー!!!!!」
の叫び声は虚しく響き、結局手を繋がれたままジムへと入ったとか・・・・・。
終。
2025/04/01...