プールへ行こう!!02













「はぁ・・・。」


は今、新しく出来た屋外プールの入口の前にいた。
手には水気があっても大丈夫な、されど可愛い鞄を持ち・・・。

その中にはもちろん水着が入っている。


昨日の夜は大変だった・・・。

帰ってからすぐ、水着を奥底から引きずり出し、
それを見て、ああ・・・なんかこんな水着であの人達の前に出なくてはならないのか・・・。
と滅入り、新しいの買っておけば良かったな・・・とか。
そもそも何であたしも行かなきゃいけないのよ・・。とか。
暗い気分で準備をしていたのだった・・・。




そんなこんなで翌日。



「はぁ〜・・・。」


何度も重いため息をつきながらは入口で待っていた。

夏休み。ということもあり、もう続々と人は入っていた。
たちの待ち合わせ時間は開園の一時間後。
お昼少し前だ。
今は五分前・・・律儀なは五分前に来ていた。

そしてその間もうだうだと、まだ滅入りながら考える・・・。

今、このプールでこんなに滅入っているのはくらいだろう・・・。
皆楽しそうだ・・・・・。


しかし!!!

には策があった!!!

昨日の夜、ただ滅入っていただけではない!!!
なんとか・・・なんとか・・・出来るかもしれない・・・!と、淡い希望をは抱いていた。


そんなことを考えていると・・・。



「おーす!待ったかー!」


と、浮き輪を担いだ鷹村に、イルカを持った木村、そしてカバン一つの一歩がやってきた。


「あれ、皆さんお揃いで。」

「そこで偶然あってな。」

と、鷹村は言う。

「・・・・・・。」

そしてには疑問が・・・。


「青木さんは?」


そう、青木がいないのだ。


「ああ・・・あいつなら昨日の熱帯夜の暑さに冷たいもんガブ飲みして今は家のトイレにこもりっきり・・・・。」


はっ。と木村が笑う。


「そ、そうですか・・・。」


一人減って嬉しいような、青木さんが大変そうで素直に喜べないような・・・。とは空笑いをした。



「さーて、じゃあ入るか。」


という鷹村の声と共に、プールの時間はやってきた。


(さぁ・・・ここからが勝負だ・・・。)



と、は一人心の中でつぶやいていたのだった・・・。




入場料を払い、じゃあ。と、更衣室の前で別れたと男達。


男達は更衣室で着替えながら下世話な話をしていた・・・。


ちゃんどんな水着っすかねー。」

木村は服を脱ぎながら隣の鷹村に問う。

「ビキニかハイレグだったら、あいつでもまぁまぁ合格点だな。」

なぜか上から目線の鷹村。

「や、やめましょうよ、そんな話・・・。」

と、一歩はタオルを腰に巻き、水着を履こうとしながら言う・・・。


「・・・・・・・。」

そんな一歩の姿を鷹村と木村は見る。

ちなみに二人はタオルは巻いていない。

そんなことをしていると、どうなるか前にも経験したのに・・・。

と、木村がため息をついた時だった・・・。


「てめぇのブツがでかいのは、わかってんだよ!!!タオルなんて巻いてんな!!!」


大きな声で叫びながら、鷹村が一歩のタオルをひっぺがした。


「鷹村さん!!!大声で言わないで下さいよ!!!タオル返してくださいーーー!!!」



(まぁた、始まったよ・・・。)


そしてそんな事をしている二人を尻目に、木村は黙々と着替えるのだった・・。




「あーあ、あんたらのせいで遅くなっちゃったじゃないでうすか。ちゃん待ちくたびれてるぜ・・・。」

「こいつがいけねぇんだよ、こいつが。」

「鷹村さんでしょ!」

と、三人は更衣室から外に出ながら話す。

一歩と鷹村のせいでかなり着替えに時間がかかってしまった男連中。
まぁ、女の着替え時間には丁度良いか・・・。と、思って外へ出ると・・・。





燦燦とそそぐ太陽、そしてまだ新しく綺麗なプール。

プールの中にはウォータースラーイダーやロング滑り台など、
アトラクションも豊富にあり、流れるプールや、子供用プールなど、
かなり大きなプールだった。




「おー!すっげーなー!」

「こりゃおもしろそうだ。」

「ですね!」

と、三人は感心していた。
しかし、はっと気づき肝心のを探す。


「あれ、ちゃんいませんよ?」

木村は少し心配しながら言う。

男性用更衣室の出入口で。

と、約束したのだが・・・・・。

と、三人がきょろきょろしながら探していると・・・。




「あー!三人ともやっと来たー!」



と、近くを流れる、流れるプールの方から聞きなれた声がした。


「「「・・・・・・・。」」」


三人が流れるプールを見ると・・・。。


がプールの縁につかまって、手を振っていた。



そう、もう水の中に入っていたのである。



ということは?




出るまで水着姿は見られない。



ということである。







(やった!作戦通り!!!)


と、は内心大喜びで、満面の笑みで、ここですー!と、手を振った。


「やられた・・・っすね。」


ポツリとつぶやいた木村。

「はは。」

と笑う一歩。

そして鷹村は・・・・・・。



「うおりゃあああ!!!!」


の近くまで走って行き。




バッ!




ドッボーン!!!!




と、プールに飛び込んだのであった。


「・・・・・・。」


は唖然として鷹村が飛び込んだ水しぶきを浴びて立っていると。



『そこー!飛び込まないで下さいー!』


と監視員のおじさんにメガホンで叫ばれた。



「ぶはっ!」


しかし、当の本人は聞いていなく、ザバッと水の中から出てきた。

鷹村は何かに怒っており、殺気を辺りにまき散らしながらその大きな身体で、のそりと立っていた。


「っ・・・。」


思わずは後退りする。

そして逃げた。



「このやろ!待ちやがれ!!!」


「きゃー!何ですか鷹村さん!!何怒ってるんですかー!?」


は抵抗のある水の中を必死でざばざばと逃げる。
唯一の救いは流れるプールの流れる方向に逃げていたということだろう。

そして鷹村はその後を追いかける。




「何がだぁ〜!?何、先に水ん中入ってんだぁ!」


「良いじゃないですか別に!」


「それじゃあ水着姿見れないだろ!!」


「な!見なくて良いですよ!!あたしのなんか!!てかそんな事大声で言わないで下さい!!!」




と、ぎゃあぎゃあ叫びながら周りの迷惑も顧みず追いかけっこしている二人・・・。


「・・・・・・・・・。」


密かにさっき叫んだ監視員のおじさんは青筋を立てていた・・・・。

そんな二人を見ながら残りの二人は・・・。


「おー、目立ってる目立ってる。近くに行くのしばらくやめとこうな。」

「・・・鷹村さんただでさえ目立つ人ですからね・・・大きいし・・・何か色々と・・・。」







そんなこんなで二人の追いかけっこはしばらく続くが・・・。

現役のプロボクサーの筋肉にかなうはずがなく。



「おらぁ!」


鷹村はに近づくと、の腹に手をかけ、自分の方へひき寄せた。

「きゃあ!」

そしては捕まる。



「は、離してください〜〜!!」


はお腹に回された腕を押し離そうとするがかなうはずもなくじたばたともがく。


「よーし、ようやく捕まえた。」


と、は背後で鷹村が悪魔の微笑みをしているのを感じ取った。
そして振り返ると・・・

「・・・・・う。」

やはり悪魔の笑みをしていた。


「!」


しかし、はそこで気がついた。



(鷹村さんの髪が下りてる!!!)



そう!鷹村の髪が下りていたのだ!
それもそのはず!水の中に全身飛び込んだのだから・・・。

そして今の鷹村は、シャワー上がりよりも水の滴る良い男・・・だった。

しかも今、自分の背に当たっているのは鷹村の厚い胸板!!!



(ひぃぃいぃい!!!)



は真っ赤になって頭に血が上り、死にそうだった。



(やばいやばいやばい!!!この状況はやばい!!!)



は心の中で叫ぶ。


「・・・・・・・・。」


しかし鷹村の水の滴り具合はみたいので恐る恐る鷹村を見た。




「はぁ〜・・・・・ん?」



すると、鷹村はため息をついて、水が滴ってくる髪をかき上げていた。
そしてこちらを見る。




(やばいって!!!!!!!!)





と、は鼻を押さえた。
絶対、鼻血が出ると思ったからだ。


「おーし!上がるぞー!」

が、幸い鼻血は出ることはなく、はそのまま鷹村に腕で抱えられ、流れるプールから出られる階段のところまでやってきた。


「・・・鷹村さん・・・・・。」


は鷹村の名を呼び、呼びとめる。


「ああ?」


と、鷹村は振り向く。


「・・・出なきゃ駄目ですか・・・・・。」


は上目使いに眉をひそめて言う。


「・・・・・・・」


鷹村は水の滴るにグッと来ながらも・・・。



「出、ろ。」



にひと笑った。悪魔の笑みで・・・。


「・・・・・・・・・。」


髪が下りててもその顔はむかついた。



「あーわかりましたよ!出ますよ!!!」



と、とうとうはぶち切れ・・・。
鷹村より先に階段を上った。


ザバザバと水を蹴って上がり、鷹村の方に向き直った。



「・・・・・・・・。」



の水着は、キャミソールにショートパンツ、という感じの可愛い格好だった。
上のキャミソール部分の模様はレトロ系だ。下はデニムのショートパンツである。


「・・・・・・・。」


それを見て鷹村は・・・。



「あんだよ、別におかしくねぇじゃねぇか。まぁ、色気はねぇけど〜・・・ま、合格点だな。」



ふっと笑い、プールから上がると、の頭をぽんぽんと叩いた。







「・・・・・・・・。」






その行動には・・・・・赤面赤面真っ赤である。
男の人に・・・しかもあんな顔だけはかっこいい、あの人にあんなこと言われたらたまらない・・・。







来て良かったかも・・・・。






は今日初めてそう思った。





続。


2024/06/27...