きっかけ。













いつも通り・・・明日もが来ると思っていた・・・・。




「じゃあ、皆さん、今度は明後日ですね。さようなら〜。」

「おう、またなー。」

さん、さよならー。」



ジムでの練習を終え、いつの間にか、途中まで皆で一緒に帰っていた鴨川ジムのいつものメンバー。
がいつもの別れ道で元気にさよならを言い、曲がり角を進む。



「あーちゃんが次来るの明後日か〜。」

木村はぼやくように言う。

「何だよ、随分残念そうだな〜。」

と、鷹村は、にーと意地悪そうに笑う。


「そ、それは鷹村さんも同じでしょう。」

「やっぱジムにも花がないとやる気しねぇよなぁ〜。」


青木が後頭部で手を組む。


「そうですね。」

「そうだな〜。」


皆も同意する。





が鴨川ジムに入ってから月日は流れ・・・。


今やはジムにとってかけがえのない存在になっていた。


だから明後日を楽しみにする・・・。


明後日にがいつも通り来ると思って・・・・・。








「こんにちはー。」


そして明後日、一歩はジムにやってきた。


そしていそいそと練習の準備を始めた。
そして練習を始めようとする。
が、あることに気がついた。



さんがいないや・・・・・。)



と。
しかし、深くは考えなかった。


(会長のおつかいかな?)


と、思い・・・・。





「ちわー。」

「ちわっす。」


そして青木と木村もやってきた。


「あれー、一歩ちゃんいねぇの?」


と、来た早々、木村は一歩に聞く。

「はい、ボクも見かけてないんですけど・・・会長のおつかいでどこか行ってるんじゃないですか?」

一歩は迂闊にそんなことを言う。





「ういっす。」


そして鷹村がやってきた。


「あれ?いねぇじゃねぇか。」


鷹村は開口一番にそう言った。


「あ、鷹村さーん。ちゃんなら会長のおつかいらしいですよ。」


そして木村は鷹村にそう告げる。



「そうか・・・。」



鷹村は少し、なんでーと思いながらトレーニングを始めた。







「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」


「シッ!シッ!」


そして各々はトレーニングに励む。



「ふぅ・・・・。」


(・・・・ん?まだ帰ってきてねぇのか・・・。)




「はぁ・・・・。」

(・・・・あれさんまだいないや、奥にいるのかな・・・?)



そしてトレーニング中には流石にのことは考えないが、合間合間の休憩にふとの姿を探す皆。

しかし、姿は見えない。


されど丁度いないのか・・・と思い、皆は特に何も言わず黙っていた・・・。




そしてその日の練習は終わり・・・・。






「おう、今日の姿見たやついるか?」



と、鷹村がシャワー上がりに皆に聞いた。


「いいえ・・・。」


「見てないっすよ。」


「そういえば・・・いないと思ってたけど・・・。」


「何だぁ?やっぱり来てなかったのか?」


と、鷹村は少し大きな声で、不機嫌そうに言う。


「今日休んだんじゃないんですか?」


と、一歩が言った。


「そうみたいっすね・・・。」


木村もそう言う。


「何でぇ・・・。」


そして鷹村は少し残念そうにそうつぶやいた。



「んじゃ帰るか。」








はアルバイトである。

にも何か事情がある時は休むことがある。


今日は休んだのか・・・。



と、皆は単にそう思い、その日は帰路についた。




しかし・・・・・。





翌日。


「ういっす〜・・・・・・。」


鷹村がジムに来るとの姿は今日もなかった。
まぁ、来るのは一日置きのようなもんだし今日は休みなのだろう・・・。
そう思ってあえて口には出さなかった。

それは皆も同じ・・。



そしてその日もジムは終わる。




そしてその翌日。
がこなくなってから三日目・・・。






「こんにちは〜・・・・。」


(あれ・・・今日もいないのか・・・。)




と、一歩はジムに入り思った。
すると突然。


「ぐあぁ!」


首を腕に挟まれた。


「おい一歩!から何か聞いてねぇのか!!」


その腕の主は鷹村だった・・・・。


「な、何がですか!く、苦しいです!!!!」


一歩はギブギブ!と顔を真っ赤にする。



が今日もいねぇんだよ!!」


鷹村がいささかぶち切れ気味だ。


「そ、そんなの知らないですよ〜!学校卒業しちゃってもう前みたく会いませんもん!!!!」


そう、昔はがバイトを休む時は、学校にも来ないか、来ても一歩に一応ちゃんと理由を言ってきたため、皆、情報は得ていた。
しかし、今は全く情報が無く、ここ三日ジムに来ていない・・・・。


たかが三日だが・・・・・されど三日・・・。


そして、情報が無いというのは結構な不安を感じるもので・・・。



『また明後日に!』



と笑顔で言ったにもう三日も会っていない・・・・。




・・・何かあったんじゃ・・・・・。




と、鷹村を含む全員はそう思った。




ちゃん・・・どうしたんでしょうね・・・。」

「まさか・・・・。」


青木がぽつりとつぶやいた。


「・・・何だよ。」


鷹村が青木に言う。



「ジムのバイト辞めたんじゃ・・・。」



「な!何でやめんだよ!!!」

木村は青木の胸ぐらをつかんだ。


「そ、そんなの知らねぇよ!!!けどよ!何かあって・・・。」


「ていうか・・・何かあったことは間違いないですよね・・・・。」


一歩は冷静に難しい顔をして言う。



『・・・・・・・・・・・。』



その言葉に一同は静まり返る・・・。



「・・・・くそっ!何で、来ねぇんだよ!!!」




鷹村は叫んだ。
と。




「あれ?皆に言わなかったっけ?」




鷹村の背後で声がした。


その声の主は・・・・・・・。



「・・・・・・八木ちゃん?」


恐る恐る振り返った背後にいた八木に、鷹村は驚く。



「って、今なんて言いました?」


木村が八木の言葉を聞き漏らさず、そう問う。
そして・・・・。



「あー、皆に大したことないっていうから言わなかったんだっけ。さんねー、一昨日事故にあっちゃったんだよ。」




八木が衝撃発言をした。





「「「「事故!!!??」」」」





全員の声がはもる。



「うん、原付バイク運転してたら車とぶつかっちゃってね・・・。」


と、八木がそこまで言ったところで・・。




「病院どこだ!!!」

「病院どこですか!?無事なんですか!!??」

「うあー!ちゃん!!!」




全員が八木に詰め寄った・・・。



「あ、いや、それがね・・・救急車で運ばれたけど左足怪我しただけでその日に家に帰れて、流石にバイトは出来ないけど今は家で療養してるんだよ・・・。」


八木は皆に詰め寄られ、ははは・・・と焦りながら答える。




ん家行くぞ!!!!」


「「おう!!!」」

「はい!!!」




そして即座に皆はジムを出て行った・・・・・。



「え、トレーニングは・・・・・。」



そして八木がぽつん・・とその場に残されたのだった。






「はぁ・・はぁ・・はぁ・・。」

「ぜぇ・・はぁ・・ぜぇ・・・・。」



あっという間に皆はの家の前についた。
それはの家がジムに結構近いことと・・・。

皆がロードワークでも出さないようなスピードで駆けて来たからだ・・・。



ピンポーンピンポンピンポンピンポン!




と、鷹村は玄関のチャイムを連打する。

「た、鷹村・・・さ・・・ん!!」

それは流石に迷惑じゃ・・・。と、一歩は言おうとするが、鷹村の猛ダッシュについてきたため、息が切れて上手く話せない。

すると・・・・・。



「はーい。」


と言う声が聞こえ・・・。





ガチャ。





とドアが開いた。



そこには・・・・・。



「あれ、皆さん。」



首に鞭打ち用のコルセットをつけ、1、5倍に腫れて、包帯ぐるぐる巻きの左足をしたがいた。


さん!」

ちゃん!!!!」

「大丈夫か!!!!!」


一歩、木村、青木の三人はその姿を見て叫ぶ。


「・・・・一応大丈夫そうみたいだな・・・。」


しかし鷹村は、一人少しほっとしていた。
これくらいの怪我なら・・・と思っていたのだ。


「どうしたんですかー?突然。」


は驚いた表情で言う。



「どうしたじゃねぇよ!!!」


と、吠える鷹村。


「ジムにずっと来ないからどうしたのかって!」

と、一歩。

「思ってたら八木ちゃんから事故のことやっと聞いてよぉ!」

と、木村。

「すっ飛んできたぜ!!!」

と、青木が言った。


「あ・・・はは。何かご心配かけたようで・・・・。」


皆の叫びようには焦る。


「でも、大丈夫ですよ。救急車の中でメール打ってるくらいでしたから。」


あははは。とは笑う。




『・・・・・・・はぁ。』




その言葉で皆はようやくほっとした。


良かった良かった・・・。


と、思ったところで・・・。



「今も親いないんで、暇だから一緒にビデオ見ていたところですし。」



は言った。




『誰と?』




皆の心に疑問が浮かぶ。


親がいないんで・・・親じゃない。


親がいてはまずい人・・・・?


女友達か・・・?


いや・・・・・・。



と、考えていると



「あ、何か皆さんも息切らしてるみたいだから、お水でも飲んでいきますか?よかったら上がって下さい。」



がそう提案してきた。


「・・・おーう、上がろう上がろう。上がらせてもらおう。」


鷹村は、にーと笑いながらずかずかと進む。



『男がいたらただじゃすまねぇな・・・そいつ・・・。』



と、一歩達三人は冷や汗をたらしながら思っていたのだった。












「お邪魔しますー。」

「お邪魔します。」


と、皆はごく普通のの家へと順々に上がって行く。
そしてに促され、リビングへと入ろうとしていた。


「あ、何か皆さん心配してくれて来てくれたから上がってもらったよー。」


先に居間に入ったは、リビングにいる人物に話しかける。


そして鷹村は『さーて、どうしてやろうかな・・・。』と言う悪魔の笑みをしてリビングへと入った。



「ああ!?」



が、リビングに入った途端、鷹村は立ち止まり叫んだ。


「ブッ!・・・鷹村さん急に立ち止まらないで下さい!」


鷹村の後から入ってきた一歩が鷹村の背中に顔を当て、鼻をさすりながら言う。

そして鷹村の脇から・・・。


「何だ?」

「どした?」


と、皆が居間を覗くと・・・・・。






「「「「宮田!!!!」」」」

「宮田くん!!!!」






そう、そこにはテーブルに肘をつき、こちらを見ている宮田がいたのだった・・・・。


「一緒にビデオ見てた人って・・・宮田君だったんだ。」


と、一歩は言う。
しかしそんなことよりも・・。



「何で、てめーがここにいるんだよ!!!」



鷹村がそう叫んだ。


「同じジムのうちらがやっと駆けつけたのに・・・なんでお前が・・・・。」


と、木村も気に食わなそうに、少し不思議そうに聞く。
すると宮田は携帯をチャっと、取り出した。
全員が『ああ?』と思っていると・・・。


「あ、あたしが事故して退屈だーて、メールしたら遊びに来てくれて。」


はリビングの入口に立っている鷹村達に笑顔で言う。


そしてその背後では・・・・。



フッ・・・と、勝ち誇った笑みをしている宮田がいた・・・・。



(こっの・・・・・。)

(野郎・・・・・。)


一歩を覗く全員が額に青筋を浮かべる。



「じゃあ、皆でビデオ見ましょうか〜。」



「あ、ああ・・・・・。」


そして一歩を除く、三人は引きつった顔で心に誓った・・・・・。





携帯を持とう。





と。










一歩の時代はガラケーとVHSビデオの時代ですw



2024/01/15...