コロン。
カチカチカチ・・・・。
静かな部屋に懸命にガラケーのボタンを押す音が聞こえる・・・。
そしてしばらく静寂な時間が過ぎ・・・。
ピロリーン♪
と言う音が鳴り・・・。
「やったぁ!!!!!」
と、携帯の画面を見て叫んだの声が部屋中に響いた。
「やったやった!宮田くんの子供時代の写真が見れる〜!」
とは携帯を持ち、ベッドにバフン!と横になった。
携帯の画面には・・・。
『・・・分かったよ・・・じゃあ今度うちに来い。』
という文章が書かれていた・・・・。
そう・・・このメールの送信者は宮田である。
「ピンポーン。」
数日後は訪れるのは二、三回目の宮田家のチャイムを鳴らしていた。
は木村の家で、宮田の子供時代の存在を知ってから、
(そうだよな・・・誰にでも子供時代はあるよな・・・
小さい頃の宮田くん・・・可愛いだろうな〜!!)
と、思い、ずっと宮田に交渉していたのである・・・。
子供時代の写真見せて!
と。
だが、当然のように断られた。
まぁ、それは一般的には当たり前だろう・・・。
誰だって子供時代の写真は・・・・何故か見られたくないものである。
だが、何回も交渉し今日やっとここまでこぎつけたのである!!!
そして、チャイムを鳴らし待っているとガチャと扉が開き、
「よお・・・。」
と、宮田が出てきた。
「あ、宮田君〜!今日はありがとうございます!」
は満面の笑顔である。
よほど宮田の子供時代の写真が見れるのが嬉しいのであろう・・・。
「・・・・上がれよ。」
そんなの笑顔に、はぁ・・・とため息をついて、
心中複雑な宮田はとりあえず
玄関を大きく開けて、中へと促した。
「お邪魔します〜!」
と、何時もよりテンション高くは宮田家の中へと入る。
そして家の中を進み、
自分の部屋へ行こうとする宮田の後に続きながらは話しかける。
「今日はお父さんは?」
「いない・・・留守だ。」
「留守か・・・お菓子持ってきたんだけどな・・・。」
「あとで渡しとく・・・。」
そんな会話をしながら階段を上り、
二人は宮田の部屋につき、ドアを開いた。
「入れよ・・・。」
「お邪魔しますー。」
は宮田の部屋へと入る。
そして何気なく宮田の部屋を見渡した。
「・・・・・・・・。」
宮田の部屋はいつ来ても綺麗に片付いていて・・・。
物は少なく、学校の物とボクシングの物だけだった・・・。
そしてその物達はきちんと綺麗に並べられ・・・
何だか生活感のない部屋だった。
・・・どこか物悲しい部屋だった。
「座ってろ・・・今探すから・・・。」
と、宮田はをガラステーブルの前の
フローリングの床へと促す。
「はい〜。」
言われたとおりには座る。
そして昔のアルバムを探す宮田を見る。
忙しくて探す時間がなかったのだろうか・・・。
それともちゃんとある場所が
大体分かっていたから
当日でも大丈夫だと踏んでいたのか・・・。
そんなことを思いながらは宮田を見つめていた・・・。
(探す姿もかっこいいわ・・・目の保養。)
そしてにこにこしながらはそんなことを思う。
ふふふ・・・と、宮田の背後で
は気持ちの悪い笑みをするのだった。
「お、あった。」
そんな変な笑いをしていると、
宮田がアルバムを発見し、こっちへ向き直った。
慌てて顔を真顔に戻し、宮田と話す。
「あったのー?」
「ああ。」
宮田ものいるテーブルの、
の隣の面に座りアルバムを広げた。
「子供の頃つっても、あんまり写真無かったような気がするけどな・・・。」
と、宮田はアルバムをめくる。
「あった・・・。」
そして宮田はアルバムを見ながらぽつりと言った。
「え!?本当!!」
その言葉に、弾むようには宮田へと近づき、顔を寄せた。
「・・・・・・・・・・。」
宮田は近づいてきたに、さっと上半身を上げ、少し困惑する・・・。
と宮田の位置は肩がぶつかるかぶつからない・・・
いや、肩がぶつかっていた。
宮田が顔を下げればお互いの顔の距離は五センチだ。
「・・・・・・。」
宮田はそんな至近距離に少し顔を赤らめて、
照れ隠しのようにむすっとしていたが
アルバムに顔を持っていっているは
そんなことには気づかない。
そして写真を見ようとした・・・だが。
その時、ふわっ・・・と爽やかな、良い香りがした・・・。
「・・・・・・・。」
その香りはまぎれもなく、宮田からのもので・・・。
その香りは・・・・・
とてもたまらないものだった。
「っ!!!」
は目を見開きながら、宮田から体を離す。
(何!何!!何!?宮田君すっごいいい匂いするんですけど!!
凄い何かやばいんですけど!!!!!)
反対方向へと離れ、にやける顔を抑えつけ、
宮田を見つめながらは心の中で叫んだ。
(って、立場が普通逆だし!!!)
そして更に心の中で叫ぶ。
(あ〜・・・やばいやばいやばい・・・。)
が襲ってくるにやけを必死に抑えていると、
当然、宮田が声をかけてきた・・・。
「・・・おい・・・どうした?大丈夫か・・・。」
いきなり盛大に自分から離れたに
宮田が不思議な顔をする。
「あ、うん!大丈夫大丈夫!!」
手の平を向けては話した。
「・・・・宮田君・・・何かつけてる?」
と。
「あ?ああ・・・・香水・・・
軽くつけてるけど・・・きつかったか・・・・。」
宮田はそのせいでが逃げたと思い、
ほんの少し、わかる人にしかわからない
悲しそうな顔をした。
「あ!ううん!!全然!!!すっごく良い香り!!!!」
だから離れたんだよ!とは心の中で叫ぶ。
「・・・・そうか・・。」
宮田はまたもや何だか少し照れながら
むすっとし、そう言葉を返す。
「香水か〜、何か香水とかって
きついイメージしかないけど
宮田君のは凄くあってて良い香り〜。」
はきちんと座りなおしながら、更に宮田に微笑む。
すると・・・。
「・・・・・いるか?」
と、宮田は言った。
「へ?」
はほけっと返す。
「もう少なくなってきて・・・もうひとつ買ってあるから、やるよ。」
宮田は立ち上がり、棚へと向かう。
「え!良いよ良いよ!!そんな高そうな物!!!」
は焦る。
「別に高くないさ・・・ユニセックスだから
お前も使えると思う・・・ほら。」
そう言って、宮田はの方に戻り、渡す。
「・・・・あ、ありがとう・・・・。」
渡された香水は、
手のひらサイズの四角い小さなガラスの瓶で・・・・。
瓶の中には水色をした、
香り通り爽やかそうな液体が
瓶の三分の一、入っていた。
「あ、あ、でも・・・あたし香水とかって
一度もつけたことないから
つけかたわかんないんだよね・・・。」
が焦りながら宮田に言うと、
「・・・・貸してみろ。」
瓶を貸せと、宮田は手を差し出す。
「・・・・つけ方は・・・基本的に
手の付け根に少しつけて・・・
首とかにもつけるんだが、
それだとキツイから俺は腰につけてる・・・
けどまぁ、手の付け根で良いだろう・・・・。」
と宮田は瓶を受け取ると、
慣れた手つきでそう言いながら自分につけた。
(こ、腰ってあなた・・・。)
が宮田の発言にドギマギしていると、
「ほら、やってみろ・・・あ、あんまりつけすぎるなよ、
きつくなるから・・・軽く一押しで良いんだ。」
そう言って、宮田はに瓶を返す。
「はい・・・・。」
言われたとおり、少しびくびくとしながら、
シュッと軽く一押ししは手首につけた。
するとふわっと宮田と同じ匂いに包まれる・・・・。
「うわー!何か面白いー!」
爽やかな、宮田と同じ香りにはテンションが上がる。
「・・・・・良かったな。」
そしてそんなを見て、宮田は少し、優しく、微笑んだ。
「・・・・・・・・・・。」
「お、おい、どうした・・・?」
そしてその笑顔に、テーブルに突っ伏すの姿があった・・・。
そして二人は気づいていなかった・・・。
同じ香りの香水をつけるなど・・・
まるで恋人同士のやることだということに・・・。
そしてその香水は、
またもや鷹村を苛立たせる原因となるのであった・・・。
終。
2024/03/09...