やってきたあいつ。07
「、この資料を奥田さんに届けてくれないか?」
全ては・・・この一言から始まった。
「あ、はい。奥田さんですね。」
ここは上南高校体育館。
バスケ部マネージャーは今日もマネージャー業に勤しんでいた。
「悪いな。」
そんな中、バスケ部3年桜井修二はにこやかにそう言いながら資料を渡した。
「いいえ。じゃあ行ってきます!」
は元気よく体育館を出ていった。
「え、いない?」
編集部へ行く前に電話をしておこう。と、
職員室から電話をしたは電話口でつい大声を出してしまった。
はっと辺りを見まわす。
予想通り何人かの先生が睨んでいる。
あはは。とは笑い誤魔化してまた受話器へと注意を戻した。
【うーん、そうなんだよ。ごめんねー。なんか取材行くって言って出かけちゃったんだよ。
あ、なんなら取材の場所に行って見れば?場所教えるよ?】
奥田の代わりに出た奥田の部下らしき人は、そうに言ってきた。
「あ、はい。じゃあ教えてください。」
「四谷鵜の原商業高校って・・・ここか。」
は奥田がいると言われた場所。
四ツ谷鵜の原商業高校へと来ていた。
奥田はこの高校のバスケ部に取材をしているらしい。
「って・・・・・・・もしかして男子校?」
は小声でボソッとつぶやく。
なぜそう思ったかというと、
出て来る出て来る人は皆、男・男・男。
それに加え皆、じーっとのことを見ている。
まぁ、他校の制服だからということもあるが、
が男子校には珍しい女だから・・・。
ということで注目されている可能性の方がどうやら高そうだ。
(うう・・・。)
は注目されていることに赤面する。
人に見られるのは苦手だった。
(ど、どうしよう・・・中に入ろうか・・・・。)
は校門の前で立ち往生しながら悩む。
奥田さんはこの中にいる、ならばはいらなくては・・・。
しかし、男子校の中に入るのはかなり抵抗がある・・・。
校門前でもこんなに注目されているのに中に入ったら・・・。
でも資料届けなくてはいけないし・・・。
悩む。
しかしその時あることがの頭にひらめいた。
(男子校って・・・かっこいい人いるかな・・・・。)
こんなときでもいい男のことを考える・・・・。
しかしにとってはものすごく重大なことだったらしい。
(中に入ろう!)
はそれだけの事で羞恥心や何やらを捨て中へ入ろうと決心したのだった。
おそるべし・・・。
(・・・・やっぱり入らなきゃよかったかな・・・。)
は少し後悔していた。
校門から入ってしばらく歩いていたが、かーなーりー注目を浴びている。
通りすぎる人は振り返り、
部活中の生徒もあれ?とを見ている。
(でも!かっこいい人いるかもしれないし!!!)
はそうよ!っと辺りをキョロキョロと見渡す。
「・・・・・・・・・・・。」
しかし・・・いるのは普通の男達ばかりだった。
飛び出てかっこいい男。
のタイプの男はいなかった。
「はぁ〜・・・。」
はため息をつく。
せっかくがんばって入ったのに・・・・。
とがっくりと肩を落とす。
さっさと奥田さんに資料渡して帰ろう・・・。
は奥田のいる体育館へと行こうと顔を上げた。
「って・・・体育館ってどこ?」
「はぁーはぁーはぁー・・・やっと・・ついた。」
体育館入り口。
はそこに汗をびっしょりかき、扉にぐたーっとよりかかりながら立っていた。
なぜなら体育館へ行こうと思ったがどこか分からない。
誰かに聞くにも行かず、自力でつこうと歩き回り、歩く度に注目を浴び。
注目を浴びるのが苦手なはだらだらと冷汗をかきながらやっとこさっとこ体育館へとついたのだった。
(さて・・・入るか・・・・。)
は体育館の思い鉄の扉を開けた。
「うわっ・・・。」
そこには
体育館が全面バスケットコート。
ゴールの数は数えきれないくらいの設備が整っている。
そしてそこで練習している
大勢のバスケット部員の姿・・・。
は圧倒されその場に立ち尽くしていた。
「ん?おおちゃん!こんなところで何してるんだ?」
すると、体育館の隅で取材をしていた奥田さんがに気付き声をかけてきた。
「あ・・・奥田さーん!」
はやっと奥田とあえた事と、知り合いにあえてほっとして、
奥田のほうへと駆け寄った。
「どうした?こんなところで?」
「これ、桜井さんから頼まれて返そうと思ったんですけど、
編集部にいないって言われたので・・・それでここだって聞いたからここまで来たんです。」
はやっと生きた心地がした。っとため息をつきながらこれまでのいきさつを話した。
「おーそりゃ悪かったなぁ〜。すまんすまん。」
奥田さんは悪い。と頭をかく。
「いいえ・・・それよりも・・・この学校すごいですね〜・・・・。」
は辺りを見まわしながら奥田に言った。
「この設備かい?この学校は高校バスケの名門校だからな。
インターハイにも常連校なんだ。これくらいの設備があって当然だろう。」
「え!?インターハイ常連なんですか・・・?」
知らなかった・・・。とは焦る。
まぁ、マネージャーを始めてまだ一週間もない。
それに今までは高校バスケ界とは無縁だったのだから、
しょうがないといえばしょうがないだろう。
「ああ、それに上南高校のライバル校だ。
インターハイに行くにはかならずこの高校とあたるだろう。注意してみとけよ。」
「え・・・。」
(敵陣と知らずにのりこんでたなんて・・。)
は少しは高校バスケの勉強しよう。と心に決めたのだった。
「あ!おい!君!桑田君じゃないかい!?」
がそんなことを思っていると、奥田さんが大声で誰かを呼びとめた。
(桑田・・・?)
有名な人なのか・・・?
高校バスケは微塵も知らないは、はて?と首を傾げながら
奥田さんの向こうにいる人影をひょいっと見た。
「!!!」
その瞬間。
の体に稲妻が落ちた。
「はい、そうですけど?」
適度な長さに整ったさらりとした髪。
185はありそうな背。
適度にひきしまった体。
キランと光った歯。
整った顔。
まさにその青年は好青年という字を人間にしたような人だった。
(かっこいぃぃぃいぃぃいぃいいぃぃぃいぃ!!!!!)
桑田という青年はのハートに突き刺さった。
は心の中で絶叫していた。
(だ、誰!?誰誰???桑田!?桑田さん!!!??)
はあまりのかっこよさに顔を真っ赤にしながら、
心の中で自問自答する。
「あれ?君・・・。」
と、突然、桑田は奥田の後ろで一人硬直しているに声をかけた。
「は、はい!?」
の声が裏返る。
「君・・・どっかで見たことあるんだけど・・・・」
桑田はじーっとを見つめる・・・。
(ぎゃーーー!!そんなに見つめないでーー!!)
近寄りじっと見つめられては真っ赤になりながら更に硬直する。
「あ、はい!上南バスケ部のマネージャーです!!」
は真っ赤になりながら必死に桑田にそう返事をする。
「あー!そうかそうか。だからどっかで見たことがあったんだ。」
桑田はひとり納得している。
「上南さんもがんばれよ。」
桑田はにっこりとさわやかな笑顔をに送った。
「は、はい!」
(ぎゃーーーーーーーー!!!!)
は一人、心の中で絶叫していた。
ところ変わって、ここはただ今バスケ部練習真っ最中の上南高校体育館。
ドドドドドドドドドドドド
「ん?成瀬。なんか変な音しねぇか?」
練習していた澤村はバンバンとボールをドリブルしながら成瀬に聞いた。
「え?変なおと・・・。」
バッターーーーーン!!!
「澤村くーーーーん!!!!!」
『・・・・・・・・・・。』
体育館が沈黙に包まれる。
はいきおいよく、体育館のドアを開けると、
ダーッと澤村の方へと駆けてきた。
「澤村君!あたしマネージャーやるわ!!」
そしていきなり澤村の胸元を掴むかと思うと、
そのままガクガクと前後に振り出した。
「やる!やるわよ!!やるやる!!あはははは!!!!」
はあはははと笑いながら澤村を前後に揺らす。
「あ・・ああ、そりゃよかった・・・。」
が壊れている・・・。
とりあえずここは話しをあわせとこう。
澤村はそんなことを思い言った。
「やるー!!やるわ!上南バスケ部マネージャー!!!!」
小林、桑田。と、顔のいい好みの男子生徒を見つけたは、
澤村の思い通りになったとは知らず、ハイテンションのまま澤村のユニフォームを掴み、
ガックンガックンと揺らしながら、幸せそうにそう叫んでいた。
こうしては上南バスケ部マネージャーとなったのだった。
終。