やってきたあいつ。04
『ドクン、ドクン』
の心臓は早鐘のように鳴っていた。
ここは体育館。
は澤村にはめられ『お試し期間』と証して1週間マネージャーをすることになってしまった。
そしては今、今川に紹介されるため部員達の前に立っていた。
人前に出る事が苦手なことと、部員たちがどんな人達かの不安ではかなり緊張していた。
おまけに澤村のせいでがマネージャーをやる事を知っている部員達が
みんなの事を見ている。
(いや〜緊張する〜〜〜!!)
逃げ出せるものなら逃げ出したい。こころの中でそう思った。
「えっと、今日からマネージャーをやってくれるさんです。」
そうこうしているうちに、今川が紹介し出す。
「・・・です。よろしくお願いします。」
は自分で自分の顔が赤くなるのがわかった。
あいさつしおわり、部員達の方を見ると反応が何もない。
(・・何?あたしなんか変なこといった!?)
が不安に思っていると。
「・・よっしゃーー!!とうとううちの部にも女子マネがきたぞ〜〜!!」
「!?」
突然ごつい男が叫び出した。
が呆然としているとその男をきにみんなが騒ぎ出す。
「俺、高倉巌!よろしくな!!」
「え!あ、は、はい。」
「俺、斎藤・・・。」
次々とに話しかけてくる。
どうやらこの部には、いままで女子マネがいなかったらしい。その為こんなに騒いでいるのだった。
(こ、こんなに騒がなくても・・。)
「おいおいみんな。そんなに一辺に言うなよ!さん困ってるだろ、ちゃんとみんな紹介するから!」
今川がと部員達の間に入る。まるで、アイドルを守るガードマンのようだ。
その光景が可笑しくてついは笑ってしまった。
「・・コホン。では気を取りなおして紹介するね。」
今川がみんなを紹介しだす頃にはの緊張は自然とやわらいでいた。
まだ完全に緊張が解けたとは言えないが、これならなんとかやっていけそうだ。
は今川と部員達のやり取りを見ながらそう思った。
「まずFの高倉巌。」
「ガンちゃんって呼んでくれよな!」
「よろしくおねがいします。」
(おもしろい人だな・・。)
は紹介された部員に笑顔であいさつをする。
「で、その隣りが・・・。」
順々に紹介されていく。
(いない・・・。)
そんな部員達を尻目にはボソッと心の中で呟いた。
はさっきから今川から紹介をされる部員達の顔をチェックしていた。
そう。はかなりの美形好きである。
『バスケ部=美形』という先入観があるは、
実は昨日からカッコイイ人いるかなと少し期待していたのだった。
しかしなかなかかっこいい人はいない。
がやっぱり『バスケ部=美形』は違うのかとあきらめかけたときだった。
「・・の小林純直。」
「・・よろしく。」
(いたーーーーー!!)
は心の中で叫んだ。
(誰!?小林純直?顔結構カッコイイし、背はかなり高いよね。
口数少なそうだし大人っぽ〜い。いや〜、結構好みかも〜。)
彼は見事のツボにはまっていたのだった。
「よろしくおねがいします。」
(いや〜!口が緩む!!)
平静を装いながらもは心の中で踊っていた。
ついにやにやと笑ってしまう。
そのとき、澤村の目が光った。
がにやけたのはほんの一瞬だった。他の人ならまず気付かなかっただろう。
がしかし、澤村は見逃さなかった・・。
(・・やっぱりな。)
澤村がにやっと笑う。
そう。澤村の確信はこれだった。
数日前澤村は休み時間に得にやることもないのでいつものように席についていた。
すると今日もまた、実は席が近いとその友人との会話が聞こえてくる。
「あ!ねーこの人カッコ良くない?」
友人が雑誌を指差しながらに聞く。
「えー・・・そお?」
は興味がないのか素っ気無く答えた。
「・・・そうだよね・・って若いのに興味ないもんね・・・。」
友人が理解不能というような顔をしていった。
「・・何その顔・・。」
友人の馬鹿にしたような顔を見ては言った。
「別にあたしだって大人っぽい人ならいいんだよ?
おまけに、やさしくて、背が高くて、
口数が少ないそれでいてカッコイイ人だったらなおさらOK!」
澤村はここ数日毎日のように二人の会話を聞いていた。
しかも誰が格好いいのだの男の話ばかりだった。
そして今日もバカバカしいと流していたがのタイプを聞いて瞬時に脳裏にある人が浮んだ。
(・・カサハリじゃねぇか・・・。)
そう。の言ったタイプとはまさに小林だったのだ。
このとき澤村はをマネージャーにしようと企んだのである。
嫌でもはいってカサハリを見つければやめられなくなるだろう。
澤村はそう思った。
おまけに他の学校との試合もあるということを使えば、
他の学校にもカッコイイ人がいると勝手に思いこみ、やめられなくなる。
と、澤村は確信したのだった。
そしては澤村の策略に見事にはまってくれたのだった。
全ては澤村の思い通りだった。
「・・・・。」
澤村がにやっと笑う。
そうこうしてるうちに今川の紹介が澤村のところまで回ってきた。
「SGの澤村正博とFの成瀬徹。」
「よろしく!」
成瀬が笑顔で言う。
「よろしく。」
も笑顔で答える。
「よろしく。」
「よろ・・・・・・。」
その瞬間は固まった。
今までの流れで澤村の方を向くと澤村がにっこりと笑っていたのであった。
営業スマイルの上をゆくほほえみで・・・。
「確か澤村と成瀬と同じクラスだったよね?」
が言葉を無くしていると今川が声をかけた。
「・・え、あ!はい、同じクラスです・・・。」
(何・・さっきの笑顔・・・。)
は今川の声で我に帰ったあともう一回澤村を盗み見た。
しかし澤村は何もなかったようにいつものふてぶてしい態度で立っている。
あの笑顔は見間違えだったのか。はそう思ったが、
あの笑顔は絶対何かある・・・。そう思わずにはいられなかった。
続。