やってきたあいつ。01













「転入生の澤村正博君だ。」

(かっこいい〜・・・。)

は、澤村正博という男に見とれていた。



と澤村の出会いはこのときだった・・・。



さわやかな風が吹き出した5月のある日。
澤村が桜井の陰謀で上南高校に転入しのクラスにやって来た。

は澤村の容姿に見とれていたが、何か引っかかるものを感じていた。
きっと本能的に感じ取っていたのだろう・・澤村の本性を・・・。


!見たあの転入生!!すっごいかっこいいじゃん!!」

休み時間、教室は澤村のことでもちきりだった。
そしての友人も同様だった。

「え?あーそうだねー・・・。」
はうーんとうなりながら答える。
「・・・何?あんた興味ないの?」
のいまいちパッとしない返事に、友人は首をかしげた。
「めっずらしい〜、いつも、かっこいい人見ると、あたしより騒ぐのに。」
「え?・・・まぁ、興味はあるけど・・・なんか・・ねぇ・・。」
は、澤村に何か引っかかるものを感じていたことを、なんとなく言わなかった。
「ふ〜ん・・・まぁいいわこれでライバルが一人減るってことだし・・。」
友人はにやりと笑う。
はまさか。と思いながら恐る恐る友人に聞く。
「・・あんたまさかあいつに・・・。」
「あんな男めったにいないわよ!アタックあるのみ〜!!」
「あっ!ちょっと!!」
が、引き止めるのも聞かず、友人はそう言うと、
すでに、何人かの女子がたかっている澤村のもとに、走っていった。


「澤村君。校内のことまだ知らないよね?あたしが、案内してあげるよ。」
の友人は何人かの女子を押し退けながら言う。

「・・・・・。」
すると澤村は、にっこりと、その友人に微笑みかけた。
「!?」
その笑顔の効果は絶大だった。

さっきまで、何を聞いても、机に肘をのせ、無表情だったため、笑顔の威力は倍増し、
たかっていた女子、偶然教室にいた女子、はたまた男子までもが顔を赤くした。
そして、何か引っかかっていたも、みんな同様、その笑顔には、顔を赤くしていた。
しかし、この笑顔が、女を騙すための、営業用スマイルだとは、誰も知るまい・・。

表面上は笑っている澤村だが、実は、さっきから、群がってくる女達を、
いいかげんうざく感じていたのだった。
そして、誰も、そんなことを考えてるとは、つゆ知らず、澤村の笑顔に見とれている。
しかし、数秒語、その笑顔から発せられた言葉を、誰が予想できただろう・・。
そして、クラス中を悩殺した笑顔が喋り出す。

「てめぇらみてぇな、ちゃらちゃらしたバカ女に案内されたって、嬉しくねぇんだよ。」

「・・・・・・。」
瞬間、教室中が静まり返った。

「・・・・・。」
そして、皆が固まっている最中、澤村は席を立ち、教室を出て行こうとした。
「・・・ちょ・・ちょっと待ちなさいよ!」
その時、誰かが、澤村を呼びとめた。

それはだった。

は、みんな同様、澤村の言葉に呆然としていたが、
澤村に、何か引っかかっていたせいか、すぐに我に帰り、自分の友人をけなされたことと
この男の態度に腹を立て、澤村の前に立ちふさがったのである。

は約20cm上の男を、睨みつける。

「ああ?」
澤村が、不機嫌そうに、振り返る。

そんな澤村の態度に怯まずは言った。
「あんたねぇ、その言い方はないんじゃないの!?
そりゃ確かに、周りにたかってきてうざかったかもしれないけど、
もう少し言い方ってもんがあるじゃない!」
澤村は自分に食って掛かって来るを、少し、珍しいものを見るような目で見た後、言い出した。
「・・・フン・・・じゃぁ何か?俺が、あんな顔だけで寄ってくる、
なんの役にも立たないやつにまで愛想よくしろつーのか?」
澤村が髪を書き上げながら、バカにしたように言う。
普段だったら相手にしないのだが、さっきからのイライラが手伝い、
自分に文句を行って来る女は、はじめてだったので、言い返した。

「役に立つとかそう言う問題じゃないじゃない!」
「フン・・・あいにくと、俺は、そんないいやつじゃないんでね。」
まだ、行って来るに、嫌気がさした澤村は、手をひらひらと振りながらに背を向けた。

「ちょ・・まだ話が終わってない!!」

の足が、飛んだ。

「!!」

足は見事、澤村の背中にクリーンヒット。
は、澤村の背中を蹴っ飛ばしたのだった。

澤村は背中を蹴られ、廊下に崩れる。

は日頃、蹴りあいの兄弟喧嘩をよくしてるせいか、手、いや足が早い。
まだ、話しが終わっていないのに、出ていこうとした、澤村の態度が、
日頃喧嘩している弟の態度と同じだったため、ついいつもの調子で、蹴っ飛ばしてしまったのである。

「・・てっっめぇ・・・・。」
澤村は、ゆっくりと立ちあがりながら呟く。
(しまった!いつもの調子でやっちゃった・・・。)
ははっとし、青くなったが、時すでに遅し。

「いい度胸してんじゃねぇか・・・・俺に蹴りを食らわしたんだ、それなりの覚悟はできてるんだろうな・・。」
澤村は、額に青筋を立て、こっちを睨みつけていた。
「あ、あははは・・・・。」
が、笑いながら後退りする。
いくら、日頃兄弟喧嘩をしているでも、自分より20cm高い男を、相手にできるわけがない。
「ご、ごめんなさ――――い!!」
(逃げるが勝ち!)
はそう言うと、全速力で逃げだした。
「あっ!てめぇ!逃げんじゃね・・ぇ・・・・・。」
澤村は叫んだがの姿は、もう見えなくなっていた。

「・・・・・・・・成瀬・・・。」
澤村はしばらく黙り、何か考えた後、成瀬に話しかけた。
そう彼も実はおなじクラスだったのだ。

「・・えっ・・あ、な、なに澤村。」
クラスの人同様、澤村の言葉との思いがけない行動で、
さらに固まっていた成瀬は、澤村に呼ばれ元に戻った。

「・・あいつ・・あの女なんていう名前だ・・・。」
「え?・・ああさんの事?さんだけど・・・。」
・・ねぇ・・・。」
澤村は、にやっと、何かを企んでいるような笑顔で笑った。

成瀬はそのとき、澤村が何かたくらんでいることに、気付いたが、
きっと本人には言えないだろう・・・・。

(ごめんよさん。)

成瀬は心の中で謝った。







続。