蕾。













「フー・・・。」



上南バスケ部1年、澤村正博は、授業をサボリ、
眉間に皺を寄せながら屋上で煙草をふかしていた。



最近、この少年。
澤村には悩みがある。
それは・・。


「あー!澤村君!!」


この少女。
上南バスケ部マネージャーのことである。









「・・なんだ?お前もサボリか・・?」
澤村はやってきたに、ごろんと寝っころがりながら言う。
「まぁね♪ちょっとめんどくさくって。」
はえへっと笑う。
「って・・あー!!煙草吸ってるし!!やめなさいっていってるでしょうー!!」
は澤村の隣に座り、ばっとタバコを奪い取る。
「うっせぇな・・・。」
澤村はぼそっとつぶやく。
「・・・あのねぇ。煙草吸うと今でも少ない持久力がもっとなくなっちゃうのよ?
チームのためにやめなさい!」
「・・・俺のためじゃねぇのかよ・・。」
やめろといっているのは、澤村の健康の事を心配してかと思いきや、
チームのためにと言っている。
澤村はそんなの言葉に少しがっかりする。
なぜなら澤村はに惚れていたから・・。


自分でも最近やっと気付いたこの気持ち。
もちろんに「お前に惚れた。」などとは言っていない。
澤村の片思いだ。
そしてに惚れると同時に出来た悩みがある・・それは。




「あー!ねー聞いて!桑田さんかっこいいのーー!!」



これである。

「・・・・・。」

澤村の顔がかすかにひきつる。
は無類の男好きであった。
かっこいい人には目がなく、
バスケ部マネージャーになったのも、かっこいい人が見れるから。
っというものすごく不純な動機でなったのだ。
そしてマネージャーになった結果。
他校のバスケ部員や、上南のバスケ部員を見て
かっこいい。かっこいい。と、
会うと必ずと言っていいほど言って来る。
澤村の気も知らずに・・。

好きな女が、自分じゃないほかの男のことをかっこいいと
言っているのを聞いて、不快じゃない男はいないだろう。
そして、澤村もその例外ではない。
しかも、かっこいと言っている相手は特定じゃない。
不特定多数だ。
一体誰が本命なんだ・・。
澤村の悩みはこれだった。

に好きな男はいるのだろうか・・。
まぁ、いたとしても奪う自信はあったが。
でも、敵が誰かは知っていたほうがいいだろう。
澤村は少し悩んだ後、言った。



「お前誰が好きなんだ・・?」



「え!?」
澤村のいきなりな質問にはびっくりする。
「・・・カサハリがかっこいいだの鵜の原のやつがかっこいいだのいってるけどよ・・。」
澤村はを見つめる。
「好き・・って・・・。」
は顔を赤くする。

「あのね・・あたし思うんだけど、小林さんや桑田さんは好きだけど、
そういう好きじゃないと思うのよね〜・・。」
「あ?」
澤村は聞き返す。
「なんていうか・・かっこいい人は好きだけど、LIKEの好きであって、
LOVEじゃないと思うのよ。」
は一人納得する。
「そう・・か・・。」
澤村はほっと安堵した。
今のところ本命はいないらしい。


「ま、小林さんも桑田さんもかっこいいから好きだけどね〜。」


と思ったらこれである。
「・・・・・。」
澤村の顔がひきつる。
と、そこであることを思いついた。
澤村はにやっと笑う。


「・・・・じゃあ俺は?」


「え?」
は澤村を見る。
澤村は真面目な顔をしていた。


「俺もかっこいいぜ・・俺は好きじゃねぇのかよ・・。」


「え・・・。」
の顔が赤くなる。
まぁ、本人に自分は好きか?っと聞かれたら誰でも赤くなるだろう。
しかも言われている相手はあの澤村だ、
しかも真剣さを帯おびてますますかっこよくなっている顔で。




「さ・・わむら君は・・顔はいいけど中身がねぇ〜。」



は悩みながらあはは。っと笑い飛ばす。


「・・・・・あっそ・・性悪で悪かったな!」
「わっ!」

澤村はの頭をぐしゃぐしゃっとかきまわすと、
たち上がり出口へと向かって行った。


(チッ・・好きじゃねぇ・・か・・。)


澤村は少し落胆しながら出口の戸を開けた。









(びっくりしたぁ〜、いきなり澤村君があんなこというんだもん・・・。
・・・ってなんでこんなにドキドキしてるんだろう・・・・あたし・・。)



後ろでの心に、小さな変化が起こっている事も知らずに・・。







終。